第7話 初めての苦戦
ステータスについてだが、少し勘違いしていた部分があったようだ。
まず各数値についてだが、3ポイントずつ上がるという法則はなかった。一度のレベルアップでどれだけ数値が伸びるかがいまいち分からないが、どうしたら伸びるかは分かった。
攻撃力や防御力、素早さは上がったのに知力や抵抗力が上がっていない。つまり、ステータスは鍛えた所が上昇するという仕組みなのだろう。
いまだに知力や抵抗力がなんなのか分かっていないが、上昇していないのを鑑みると、ただ単純に頭の良さや免疫力云々という訳ではないのかなと思う。
ステータスについて考えていると、階段の終わりが見えてきた。第二階層に到着したようだ。
♢
ダンジョンで生活するようになってからおよそ一月ほどたった。
現在は第10階層。俺は今そのボス部屋の前にいる。
いろいろな魔物と出会ったが、基本的に人型が多かったので戦闘自体は変わり映えの無い淡々とした作業だった。
辛かったのは睡眠だ。流石に毎回毎回車がある場所まで戻るのは無理があったので、階層と階層を繋ぐ階段で寝ていた。当たり前だが寝心地は良くない。せめて枕が欲しい……頭が死ぬ。
他にも、衛生的に風呂やトイレも悩み所である。
ただ、おかげさまで現在のレベルは24、ステータスはこうなっている。
小鳥遊 無名 Lv24
HP 1080/1080
MP 66/66
攻撃力 98
防御力 90
知力 10
抵抗力 10
素早さ 95
運 32
【スキル】
剛 Lv6 縮地 Lv5 鑑定 Lv2
【称号】
なし
ステータスの伸び具合は相変わらずで、知力抵抗力は上がらずその他は順調に上がっている。
縮地スキルは15レベルになった時に獲得できた。下一桁が5の時にスキルが貰えるんだと思う。剛もレベル5の時に貰えたしな。
鑑定だけ成長が遅かったが、理由は分からない。成長しにくいスキルなのだろうか。
ステータスの確認を終え、剛を使用して中に入る。装備は5層で入手したオークソードと8層で入手したロックナイフ。どちらもボスを倒した時の報酬だ。
少し進むとボスの全貌が見えてくる。
大きさはおよそ3m、岩を纏った熊だった。鑑定をして詳細を確認する。
ロックベア Lv20
HP 2500/2500
MP 400/400
レベルが上がったことで情報量が増えた鑑定スキルは敵の名前とレベル、そしてHPとMPが表示されるようになった。
かなりステータスが高い。HPは俺のおよそ2倍あるし、魔物にしてはMPも多い。岩系の魔物には剣による攻撃も相性が悪いし、……これ、勝てるか?
先手は譲ろう、まずは様子見だ。
ロックベアはその大きく発達した両腕を使い、叩きつけや振り回しを繰り出してくる。
攻撃自体は避けられる。関節を狙っていきたいが、隙がなければカウンターを受けそうだ。試しにナイフを投擲してみたが、少し体を動かすだけで弾かれてしまった。
少々危険だが、やるしかない。
ロックベアの攻撃を避けつつ段々と距離を詰めていく。リーチの長い振り回し攻撃をギリギリで交わしつつ、ここぞというタイミングで剣で弾く。
お互いよろけた状態で、先に動き出した方はロックベア。にやりと嗤うロックベアだが、俺はあえて後から動き出す。
「グオオォォ!!!」
案の定、近い距離で叩きつけの攻撃をしてきた。俺はさ・ら・に・距離を詰める。ほぼ密着する形で近づいた俺に、ロックベアの叩きつけが襲う。
……今だっ!
「縮地」
急加速する俺の体はロックベアの股の隙間を通り過ぎてゆく――ロックナイフを残して。
振り下ろしは両手を組んだ状態での打撃技だ。俺に当てるために自分の腹のあたりに狙いをつけていたそれは、俺ではなく垂直に刺さるロックナイフに当たる。
たかがナイフの切り傷じゃ大した攻撃にはならないだろう。だが、確かにその刃は同じロックの名の付く硬度を発揮し、しっかりと刺っていた。
「ガアァ!」
全力で切腹したロックベアの腹部にはロックナイフが深々と突き刺さっていた。
その隙を俺は見逃さない。すぐさま方向転換しロックベアへと向き直り、その背後を取る。
狙うは首と顔の隙間、これで決める!
「Wooooo!!!」
突然の咆哮、俺の体が動かなくなる。これは……『スキル』か!
動き出したロックベアの攻撃をもろに食らう。
「かはっ!」
吹き飛ばされた俺の体は地面を跳ねながら壁にぶち当たった。
痛ぇ……ダンジョンに来てからまともなダメージを食らったのは初めてだ。
息を整え、ロックベアと対峙する。
それから2時間ほど、俺は戦い続けた。
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