第5話:農園の防塁

「創る事はできますが、目立ちませんか?」


 俺は目立ち過ぎるリスクを考えていた。

 もうすでに目立ち過ぎている自覚はあるが、それは開拓という脳筋の武闘派には眼を付けられない方法だ。

 だが頑強な城砦を一人で野戦築城できる能力となると、脳筋でも理解できる突出した能力になってしまう。

 正直それがとても怖いのだ。


「ふむ、確かにあまりに堅固で大掛かりなモノにするのは危険だな。

 ここにいる者達を無条件に信じる事もできないからな。

 うううむ、どうすべきか正直迷うな、奴隷を購入して秘密を誓約させるか」


 祖父が色々と方法を考えているが、絶対の策はないだろう。

 奴隷を大量購入して誓約をかけたとしても、奴隷を殺す心算で強力な自白魔術をかけたら、聞きだすことができるかも知れない。

 圧縮強化岩盤を使った強固な城壁を創り出す事もできるが、流石にそれをやるわけにはいかないから、土を強く突き固める版築くらいの城壁にすればいいのではなか。

 それよりも、もっと開拓地を広げるべきだと思う。


「今は開拓を優先して、濠や城壁は後回しにしませんか?」


 俺の提案を聞いて祖父は決断を先延ばしにした。

 元々祖父は慎重な性格で、ギリギリまで最高の方法を考え続ける性格だ。

 軍事面だけは即断即決した事もあるそうだが、内政に関しては慎重すぎるほど慎重で、一度決断して指示を出した事でも、考え直して命令を取り消したこともあると聞いているくらいだ。


「そうだな、防塁は何時でも創り出すことができる。

 まずはできるだけ広い耕作地を完成させる事だな」


 俺は祖父が考えるように仕向けると同時に、この世界の常識を確認した。

 わずか5歳の俺では、この世界の土魔術と木魔術の全てを知っているわけではない事に思い至ったのだ。

 先程は圧縮強化岩盤の存在を秘匿すべき秘術だと思ったが、もしかしたらこの世界で当たり前の魔術として使われているかもしれない。。

 この世界でどの程度の建築系魔術が広まっているのか、祖父に聞いてみた。


「ふむ、そうだったな、私もヴェデリンの能力の強大さに我を忘れていたようだ。

 この世界でどのような魔術が一般的なのかを教えないで、あれをやれこれをやれと言ってもできないな。

 この世界には岩を砕く土魔術もあれば、木を砕く木魔術もある。

 だからこそ根を気にせずに伐採しろと言ったのだが、それを知らないヴェデリンが根の処理を心配して提案したのは当然だったな。

 それと同じように、土や小石を固めてブロックにする土魔術もあれば、木の皮をむいて丸太にする木魔術もある。

 もっとも、乾燥させる木魔術はないから、先ほどヴェデリンが考え出した方法は材木業界には大発明だ」


 なるほど、ある程度の強固さを持つ石材、ブロックを創り出す土魔術は普及しているのか、だったら城壁を作ることも濠を作ることも問題ないな。

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