「お前達、ヴェデリンのステータスは絶対に秘密だ。

　ステータスを強化する方法は、まずは私が試してみる。

　万が一副作用があればとても危険なことになるから、時間をかけて調べる」

　祖父が家族全員の前で当主として断言された。

　これでもう誰も反論できないし、する気もないようだ。

　祖父はドニエック公爵家中興の名君と言われている人で、曾祖父が没落寸前まで追い込んだ公爵家を立て直したと聞いている。

　その再建を実際に見聞きしている父が祖父に逆らうわけがない。

「分かりました父上、ではヴェデリンの分家の準備はどうしましょう。

　予定通り王立学園に入学させて統治や開拓の勉強をさせますか。

　それとも領内に止めて情報の漏洩を防ぎますか」

　祖父は一瞬迷っていたようだが、直ぐに祖父らしい返事をした。

「今回の件は即断即決できるような容易いモノではない。

　もしヴェデリンの秘術になんの副作用もないのなら、その無限の魔力を使って広大な未開地を全て開拓できるだろう。

　開拓地を限って、その魔力を成長促進に使えば、同じ農地で一年に何度も収穫する事も可能になるのだ。

　秘匿する事も大切だが、同時に多くの信頼できる臣下も必要になってくる。

　何歳で王立学園に入学させるか、ギリギリまで思案しなければならん」

　慎重な祖父ならそう言うだろうと思っていた。

　そして自分の身体で俺の秘術を試したが、最初は上手くいかなかった。

　日本でアニメや特殊撮影映像を見慣れていた俺と祖父では、想像力に大きな違いがあり、口だけで説明するには限界があった。

　それに、前世の記憶があるなんて口にしたら、最悪処分されてしまうかもしれないので、独学で試行錯誤したことにしたから、五行思想や経絡経穴を教える訳にもいかなかったのだ。

「おお、やったぞ、ついに魔力の流れを感じることができたぞ！」

　ほぼ一年かけて、ようやく祖父に経絡経穴の流れつながりを理解させることができたが、それは俺が祖父の魔力を外部から無理矢理動かしたからだ。

　全く無知な状態から、自分の中にある魔力を意思の力で自由自在に流すというのは、とても難しい事なのだ。

　だから祖父に魔術を発動してもらって、その時に祖父の体内にある魔力がどう動くのかをまず俺が見極め、それを俺が無理矢理動かして見せて感じてもらったのだ。

「私もいい勉強になりました。

　私が自分の身体で感じていた魔力の流れとは違う、全く考えもしていなかった魔力の流れを知ることができました。

　ありがとうございます、御爺様」

　俺は祖父が火魔術を発動する時に魔力が動く流れを知る事で、どのように魔力を流せば火魔術が発動できるのかを理解することができた。

　火魔術だけでなく、祖父の知る全ての魔術を発動するための魔力の流れを知ることができたのだ。

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