第2話  さよならセブン(後編)

「…あなたはもう、分かっているんでしょう?」


―彼の未来が、もう絶たれていることに。


 その微笑みは、冷たく、私を震えさせた。


 分かっている。

 彼のタイムリミットが、近いことは。


「まぁ、若干の救済措置がなされないこともないんですが、それも、そう長く続くものではありませんし」


 そう。

 彼はもう、続く未来がないのだった。


 突然の宣告、という訳ではなかったけれど。


 彼らとの出会いと、これまで築き上げてきた信頼は、いつかすべてが、終わりを迎えるということを。


「…卑怯よ」

 思わず、呟くと。

「卑怯?心外ですね。我々は、あなたのためを思って、十分な配慮をしたつもりですよ?」

 張り付いたその笑顔を、何度引きはがしてやろうかと思い、留まり、今に至る。


「随分と長い、猶予期間を与えたはずです。その間に、あなたは何の対策も講じなかった。現実から目を背けて、逃げ続けているだけだった…違いますか?」


 言い返せなかった。

 だって、彼の言うとおりだったから。


「結果、彼を追い詰めて残酷な決断を迫られるに至ったのは、あなたにも相応の責任があります。泣き言を言いたいのは、むしろ彼と私たちですよ?」


「……。」


「―さぁ、今日こそ、貴女の本意を、私たちに伝えてください」


 私には、初めから選択肢などなかったのだ。


「……今夜…あなた方に全てを、委ねます」


「ありがとうございます。それでは、手続きを始めさせていただきますね―」




―…さよなら、セブン。








 直ちに、彼の意識は、深い闇の彼方へと消えていった。




(ブラック・アウト)

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