第20話 ロコちゃんはおもらししたい(らしい)
摩周「――そこで、乗客が助けを求めた。そのときにとった船員の行動として正しいほうを、true or false で答えてくれ、わかったかい?」
ロコ「んっ……」
さっきから、ロコがあっ、だのんっ、だのと落ち着かない。なんだか太ももをきゅっと閉めてるみたいで、こっちまでつられてそうしてしまいそうだ。
うみ「ロコ、もしかしなくてもおしっこだろ」
ロコ「うん……ねぇうみちゃん」
うみ「なんだよ」
ロコ「我慢、できなくなったから、このまま帰ろうかなって……」
うみ「はぁっ?! いやいやいや、トイレ行けばいいだろ」
ロコ「そうなんだけど……んんっ……あのね……うみちゃん……」
うみ「ごくっ」
なんだかものすごいことを言い出しそうな雰囲気がしたので、思わず身構えた。
ロコ「わたし、ずっとしたかったことがあるの……」
そう言ってロコはあたしの腕を掴んで、職員室に早退届をいっしょに出すよう言った。
うみ「おい大丈夫か? やばいことするんじゃないだろうな?」
ロコ「大丈夫……だから……はやく、いこ……」
息が上がって倒れそうなロコを、あたしが少し支えてあげて、向かったところは――。
うみ「ここって……」
ロコ「そう、駅……」
もじっとしたところをすけべ野郎に見られた気もするが、そんなこと言ってる場合じゃない。
うみ「いまからでも遅くない。引き返そう」
ロコ「(ふるふるっ)」
うみ「どうしちまったんだよ、ロコ……」
奥できゅっと括約筋を閉めていそうなのが、つないでいる手越しに伝わってる気がした。
うみ「ほ、ほら、あたしもおしっこしたいからさ……」
ロコ「……」
返事をしない。そもそもこんな場所であけっぴろげにこんな単語を言っていいのかどうかって話もあるけど、そんなこと気にしてられない。
うみ「あ〜なんだ、あたしもいっしょに我慢しようか?」
ロコ「いいよ、そんな……うみちゃんまでひどいことになったら、わたしのせいになっちゃう……」
そう言って、小刻みに震えながら改札をゆっくり通っていく。
駅員さんが少し訝しげに見ているけど、気にしないようにする。
ロコ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……っ」
人の目線を感じる。勘違いだったらいいけど。
ロコ「はぁ、はぁ、はぁ……わたし、おしっこ我慢しすぎて、おかしくなっちゃう、かも……っ」
首を振る。徐々に腰が前に突き出されていくのがわかって、恥ずかしくなる。
これがほんとうのおしっこ我慢なんだって気づいたとき、おしっこの穴がひくひくっとうずく。
ロコ「やぁっ……」
わずかな湿り気を感じて、とっても恥ずかしくなった。
いまなら引き返せる――うみちゃんの言っていることは正しいけど、わたしはもう決めてしまっていた。
ロコ「電車の……なかで……っ、うみちゃんに、おしっこの穴をっ……んっ、さわってもらって、そのままじゃぁぁぁっておもらし、したい……」
言うと、少し笑顔が浮かんでくる。あぁ、これがわたしの望んだ理想のおもらしなのかも――。
うみ「正気かよ、お前……」
正直、こんなロコをいままで見たことがない。
自分で言ってることが呑み込めているのだろうか。あるいは狂っちまったのか――?!
ロコ「ね、電車のろ……っ? わたし、もう限界だから……」
うみ「……」
これに乗ってしまったら、終着駅は海の見えるところにまで行っちまう。高額なチケットも買っちまった。あんなところでおもらしなんてすれば、みんなに迷惑がかかる。そのことをロコはわかっているのか――。
ロコ「ねぇ、はやくぅ……」
うみ「わかった。でも、後悔するなよ?」
ロコ「う、うん……」
そうしてあたしたちは電車に乗った。あたしと同じ名前をした『せとうち』ってやつに。
ロコ「うみちゃん、ほら……」
うみ「……!」
ロコに導れるがままに押さえる。あったかい息遣いまで感じられる、なんともロコらしいそこにあたしは虜になっちまいそうそうだった。
ロコ「出るまでずっと、いやらしくさわっててほしいの……」
うみ「わかったよ……」
その『いやらしく』がよくわかんなかったけど、あたしなりに考えてロコの反応を窺いつつ触る。
ロコ「ひゃんっ……」
ぴくっと、ロコの何かが反応する。これってもしや……。
うみ「ロコ、お前……」
ロコ「なんだかねっ、はぁはぁ、わたしいつの間にか、我慢するの、だいすきになってて……っ」
ちょっと触るだけで、こちらが思う以上の動きをしてくれる。これはちょっと面白いな……。
うみ「もっと触っていいよな……?」
ロコ「もちろん、だよ……いっぱい触って……」
うみ「わかった」
ロコのその、締めつけている感じにあわせてゆっくりと、そしてねちっこくいじり続ける。
言ってなかったけど、ここは連結部。だから人が来ない限り見られない。
うみ「おっと、人が来るぞ。ロコ、無理かもしれないけど呼吸を整えてくれ」
ロコ「むりだよぉっ……はぁはぁはぁっ……」
余計に気分が高まってしまっているみたいで心配になる。心臓飛び出すんじゃないかってくらい。
うみ「よし、続きするか」
ロコ「ちょっと激しくしていいよ……?」
おねだりの目になってるロコにハマっちまったあたしは、もう止まらなかった。
うみ「出るよな、もうおもらししそうなんだよな?!」
ロコ「うんっ、でるっ、でちゃう、でちゃうよぉっ……はぁっ、はぁっ……あぁぁぁぁっ」
じょわぁっ……と、あたしの掌を十分濡らすくらいのそれが、ちょうどいい具合に溢れてくる。
うみ「よくやった、ロコ! よし、もうトイレ行こう、な?」
ロコ「いやっ……もうちょっとだけ、ここでおしっこさせて……」
名残惜しいのか、ロコがそんなことを言い出す。
うみ「そうか、ならここでしていけ」
ロコ「うん……ふやぁぁぁっ」
じょわっ、じょわ……どんどんあたしの手が、ロコの広がるおしっこで汚れていく。
そうは言うものの、そこまで汚いとは思ってなくて、なんなら未咲のそれくらいにいとおしい。
ロコ「未咲ちゃんみたいにいいにおいじゃないけど……うみちゃん、わたしのこと嫌いにならないでね……んんんっ」
そう言って、もうひとしぼり。幸せな時間はあっという間に過ぎ、あたしはロコのあそこを押さえながら、連結部付近のトイレに連れて行く。
ロコ「もうだめぇっ!!」
急に叫んで何かと思ったあたしはつい、ロコの押さえている部分にぐっと力を入れてしまった。
ロコ「あ……あぁ……うみ、ちゃん……」
それが引き金になっちまったのか、ロコはその場でおもらし。取り返しのつかない事態に。
客A「えっなに?」
客B「見てあの子、おもらししてる……」
ちょっとした騒ぎになっちまい、あたしは全力で謝る。
うみ「ごめんなさい! あたしが全部悪いんです!」
そう言って、ひとまずロコはトイレの中へ。
ロコ「ぐすん……」
あたしは備え付けのトイレットペーパーに手を伸ばし、床を拭く。
うみ「本当にごめんなさい! もう大丈夫ですので!」
そのことばで皆納得したのか、乗務員の手も借りずにひたすら掃除していた。
そして終着駅に着いたあたしたちは、幾許のむなしさを抱えつつ海を眺めた。
うみ「海、綺麗だな」
ロコ「うん、そうだね……」
気まずいカップルのようになっている。あたしたち、全然そんなつもりないのに。
うみ「まぁ、さっきあったことは水に流そうぜ」
ロコ「トイレだけに……?」
うみ「あー、うん……間違えたかな……」
ロコ「ううん、わたしはおもしろいかなって」
うみ「無理して肯定してくれなくても……あっ、さっきロコと一緒に我慢するって言った手前、あたしもやっぱしないとダメ……だよな?」
ロコ「いいって言ったのに……そんなに我慢したいの、うみちゃん……?」
うみ「ばっ……そんなわけねーよっ」
言いつつ、くしゃみをひとつ。そのとき思わずぶるっと震えちまった。
ロコ「ふふふっ、行きたそうだね」
うみ「はぁ……ロコには敵わないぜ……」
海の家あたりにあるトイレを借りた。さすがに漏らすわけにはいかねぇと考えたからだ。
それっきりいい雰囲気になることもなく、あたしたちはひとしきり見るのを楽しんでそのまま帰った。あぁ、写真のひとつくらい撮っとけばよかったかな……。
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