第11話 八咫(やた)マン
(注:タイトル並びに固有名詞に勝手に促音・長音などを入れこまないように、まぎらわしくまた問題になりますので。)
回復して意識を取り戻した坂巻が戦場に復帰するのはまだまだ先になる。婚約者ともどもハネムーンという名のリハビリを受けているからだ。
もちろん、内容は地獄の猛特訓なわけだが・・新妻になる女性が新
よく、疲れ○○などと昭和オジサンのエロ話の口頭にのぼったりしたのだが、坂巻と
ベリーショートのライトブラウンの髪が活動的で良く似合う元気でボーイッシュな加奈は疲れ果ててささくれ立った
1ケ月後に
「加奈!重伍にぃと一緒になったわたしだけど、結婚して~!」
と叫んで大揉めにモメタ出来事は身近な者には笑えないわらいばなしとなった。
その
そして、坂巻 重伍の坂巻家は
それがようやく収まるか・・と思えたのが先のN-SAT隊への辞令
でDQNの件で解散・休止状態になるまでは、いいところだったのだが・・。
今、現在の世に天神よりの使者、
その中より選ばれた3人が
レッド・クロウ・・体(武)術を得意とする
ブラック・クロウ・・先代までは呪術を得意とした
ホワイト・クロウ・・学術(科学)を得意とする
それぞれ得意な分野以外出来ないかと言えばそんな事はない。
今までに体を、技を鍛え上げている。
並みの兵士以上には充分に戦う事が出来る。
が、永劫のうちに神通力は弱まってしまった。
その分を科学・技術力で補った。
それが、現在の神の使い
当然、時の政府は遊びやDQNに対抗するためだけにこの部隊を組織した訳ではない。
DQNの快人やHE-MANの出現により、肉体改造兵団による戦場の制圧が単なる夢では無くなったのを間近に見せられたからだ。
そのしんがりを走る政府が遅れ馳せながら、慌てて取組んだ重大な起死回生のプロジェクトなのだった。
まずは3人で実験的に実戦配備と共に試験を進めるつもりなのだ。
その為に可能性と消耗品としての価値のバランスが注目の的になった結果の人選であった。
HE-MANまでは無理でもDQN程度の平均的強化が技術確立出来れば一応の成功という形までは持って行ける。
それは今現在の状況をこそ災い転じて福となすを地でいく軍事力上での大きなアドバンテージとなりうるからだ。
今はまだ混乱に乗じて日本を襲う外敵勢力は無いが、いつ国連決議を踏み躙り襲って来るやもしれないのだ。
だからこその
もし、人体強化技術が手に入ればそれは日ノ本の国を救う事になるやもしれぬ。
もちろん、タイミングによってはそれが最終戦争への道標となる可能性もゼロではない。
しかし、発達や進化は止められるものではないのだ。
軍備しかり、医学とてしかり・・。
生物は立ち止まれば、やがて滅ぶしかないのだから。
観光地として、商店街の名残としても年末から正月に人出でにぎわう伏見稲荷大社付近の大通り、本間通ぞいの人影の中。
「ムハハハッワシはダンベル使い【赤シングレット】!」
まるで、レスリングでもするような恰好の筋肉パンパンの中年。ランニングシャツとパンツが一体化したような姿のシングレットだけを着込んで、肉体の凹凸をすべて明らかにしたも同然のなりでダンベルをむやみに振り回す色黒肌、無精ヒゲのブ男が無差別に襲って来るのだ。
久しぶりに近来まれに見る見事なヘンタイだった。
『うふふふっボクは相棒のバーベル使いの【黒シングレット】』
以下同文。ただし、違いはあった。それが着ているシングレットの色と持っている武器(得物)の違い見た目の年齢程度ではあったとしても・・。
「『ふたりで、地獄のマッスル・トレーナー!』」
汗くさいヌルテカ光るふたりは手当たり次第に付近の人々を確保
し始めた。
その方法は簡単、武器であたまを殴るのだ。
「だぶる!だんべる!よ-よー!」
ぎゅるるるるーーん! ぶわーーーん!
どっ! がっ! ごっ! げっ!
通りすがりの仲の良さそうだった、行楽中の四人家族が一瞬で
血まみれの瀕死の状態にされた。
あまりに突然な出来事に「だんべる・よ-よー」を食らった家族の誰もひと声も発することが出来なかった。
次は黒衣の・・赤のよりは見た目、若く思えるのは・・青年?
だからなのかシングレットをパツパツに張り膨らませて、また
食い込ませて凹凸をより明確にして変態度を上げていた。
『バーベル!フルスイング!なのさぁ』 ぶうん ぶん ぶうん
こちらはちからまかせだった。バーベルが周囲をひとなぎするごとに犠牲者が数名倒れ伏してゆく。
がっ! ぐしゃ! べきっ! どどっ!
仲の良さそうなカップルも年の割に素敵なファッションの老婦人と偶然、隣りを歩いていた巨漢の白人男性さえもほぼ1撃!
ただの無差別傷害事件だ、これは目に余る光景だろう。
だがしかし、余りの事に自分の目を信じられないのかTV・映画の撮影か?とでも思えるのか周囲の者は家族や知人が直接被害を負わない限りは騒ぎ立てたりしないようだ。
そのせいで異様な光景が観光地に展開されていた。
と、その時だった。
歳の瀬近い人混みの大通りでまさかの惨劇の続く中、ざわめきを鎮めるように良く通る声が響いた。
「待てーい!そこゆく変態どもめっ!」
大通りの商店街2階建て店舗の「ちりめん山椒」屋の屋根から、レッド・クロウが声をあげたのだ。
「人知れずぅ御世のぉ安寧を~守っちゃいます!」
道の反対側、商店にまぎれたお地蔵さんの小さな御社の影中より己が身を色っぽくくねらせて登場する、ホワイト・クロウ。
最後は可愛くウインクだ。(い、いや一般人は誰も黒いバイザー越しに中なんて見えんから。)
その下、マンホール蓋を押し上げて漆黒の細マッチョが・・その
コスプレ忍者ヒーローのような異様な姿の成人男性の恰好を見て周囲の者がみな「すわっ新たなヘンタイ出現か?」と身構える中で腰のポーチより「サインローダー」というスマホ大の
その「サインローダー」表面には「Y」の文字を3本のカラスの足に見立ててバックにうっすら羽が放射状に並んだような、また
十五弁の菊花紋にも見えるような【公然と知られた秘密の家紋】
を表して関係者・周囲の者に示しているのであった。
「(本物だよ・・しっ・・)古よりの神の御使い三戦士!」
「「「それが~我ら、
「「おおぉ~!」」パチパチパチ!「いやぁ~いいもん見た。」
「さがってっ!テープ内に入らないように!」パチパチパチ
「やれー!やっちまえーっ!」ぴーぴー「ねーちゃん脱げー!」
(むぅ~やりにくい。)
(ホントにこんな奴ら命をかけてまで守る意味あんのか?)
(あんの~酔っぱらいーコロス!)
雑多な声援を受けながらも三人の心中はそれぞれに複雑だった。
そんな登場名乗りにも気にすることなく、自称、『地獄のマッスル・トレーナー!』達は当たるを幸い?狩りの獲物を増やしていた。
がっ ごっ どふっ! べっ ばっ どっ!ふたりとも絶好調だった。
今度はバスの団体客なのか一網打尽のごとく倒している。
『兄貴~いい猟場だな~入れ食いだよ~!』 ガツ ビシ!
「そうだな、この調子だとXmasにはゆっくり休めるぞ、ぞんびノルマもクリアでボーナス出るかもな!」 ベキ ドス!
『ならボク、ハイパー・ステーションⅢ欲しいな~。』 ゲシ!
爽やかな会話の中で繰り広げられる暴虐にレッド・クロウの棍が
唸りをあげて制止しようと襲いかかる。
「待て待て待てェ~!」【赤シング】を得物から与しやすしと見たか、大上段より加速をつけ振り下ろす。
常人なら到底受けることなど出来ないタイミングでの面打ちが決まる!
と油断しかけた時、ダンベルが跳ね上がる様にレッドの棍を弾くと同速でナックルのようにレッドの顔に襲いかかる。
それを先読みしていたか、身を引き射線からはずすと弾かれた棍の勢いを利用して下より伸びた腕の肘関節を狙う。
がっ! 「むうぅん!」
しかし、打ったレッドの方にも腕に衝撃のダメージを受ける。
打たれた【赤シング】の無精髭顔がにやりとゆがむ、どうやら笑っているようだ。
「定番だが、言わせてもらってもいいかな?」
まだ初手だが、技をぶち込んだ相手に声を掛けられるとは思ってもいなかったレッドは一瞬 ギョッ とする。
「!?」
相手の表情を確認して納得した【赤シング】はここぞとばかりに
キメ顔で言ってのける。
「それこそ蚊が止ったほどにも、感じなかったぞ。わはははっ」
言ったとおり、後の動きにも支障はないようだ。
「(これだっ!この肉体を得られれば・・この秘密、ほしい!)」
間合いを取った時。
ガッシャーン! どっ! 「うあぁっ!」
ガシィ! びぃぃぃーっ! 「いやぁ~っ!」
「く、くそっ
『この可愛いお顔から壊しましょうか?それとも女を壊す方がお好みィ?』
後のブラック&ホワイト・クロウ組の方からもあまりよろしくない雰囲気の音や声が聞こえる。
見ずとも分かる、撤退する潮時か・・作戦開始よりまだ00:07:
たった10分も抑えられないのか?俺たちは・・これでは退治なぞ出来っこ無い。
しかも事前の調査資料によれば、地獄のマッスル・トレーナーなどとふたつ名をなのってはいるが、任務がぞんび素体の調達など
と下っ端仕事この上ない程度の準
そいつらにさえ足止めも出来ない自分達の実力。
レッドのこころを絶望がおおった。
ギリリィ 思わず噛み締めた奥歯が軋んで鳴る。
「ザッ・・Bより・・
〈注:ホミナhominin(類人種)大まかな意味でのヒト種の意味〉
「ジッ・
レッドは周囲を見回すが違いや、新たな敵影など分からない。
「ザリッ・
「ジッBより
レッドはある事を数点だけ確認するとDQNたちの集まるテントの方に歩いて行った。ベース命令を無視して・・。
ブラック&ホワイト・クロウ達の方はどうだったか?
最初にかかって行き、ブッ飛ばされていたブラックだったが、
さすがに同僚でもある新婚の妻がスーツを裂かれて肌もあらわに
身の危険が迫るのを見れば助けようと死に物狂いにもなる。
だが、歴然たる能力差を『想い』だけでは埋められはしない。
刀を抜いて切りかかるも、片手でバーベルを振り抜かれて、
刀身どころか利き腕の右うでまで折られた。
ギャイィン ゴキリ 「があぁっ!」
打ち倒されてあたまを踏まれ、メットにもヒビがはいり頭蓋骨も
いやな軋み音と激痛が走る。ギリギリギリ メシッメシメシ
『そーれっもうすこしだよっコイツの頭もペチャンコさっ!』
【黒シング】はさも楽しそうにホワイト・クロウの首筋を片手で
握り、ブラックの様子を見せながらあたまと右腕を踏みつける。
気絶したのかもうブラックは自分ではピクリとも動かない。
裂かれたスーツの胸元をかろうじて隠すもののホワイトは泣きながら振り回されているだけだ。ブラック・・いや坂巻の右腕はもうすでに踏みにじられてつぶされ、引きちぎられている。
あたまも・・ひときわ強く踏んだ時 ビキィッ と嫌な音が響き
赤い液体がメットの隙間から流れだした。
時間が止ったように思えた。
「重伍にぃ・・いやあぁーーーーーっ!」
どうやってかは分からないが、気がつけば夫のまだ暖かい体にしがみついていた。
「死んじゃいやっ」この言葉を何回つぶやいたろうか?
しがみついた重伍にぃの身体とあたしのこころもぬくもりを無くしていくように感じた。
ふたたび我に帰ったとき、あたしたちを現場へと運ぶ移動基地「きゃりべぇ」の休息ルーム内で加奈と抱き合って泣いていた。
重伍にぃの事は怖くて怖くて聞けなかった。
後回しにしても意味ないのに・・。
その夜、日本国初の自衛隊・警察合同、仮設ヒーロー
次回予告
政府特務部隊『
「HE−MAN」満はこれからどうする?
【ステテコ親父】と
レッド・クロウのそれぞれの
ふたりの裏切りが何をもたらす?
DQN達も忘れるな!
そして次は何?快人だー!
キリキリ胃痛 第12話 裏切りの双曲線
レッツ!リハイドレイト!!
って主役も出て無いよね・・。
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