第8話 灰皿?対 カラス忍!

 「貴様らが HE-MANとかいう、ふざけた野郎どもか?」

もう秋の声も聞こえるかという強くは無い日差しと寒風にさらされる毎日に、どう見ても場違いな恰好の60代前後だろうかとも見える疲れた男が彼らの前に現れた。


意外に筋肉質な身体の上下を白のグ〇ゼのクレープ 紳士 半袖シャツと5分丈ステテコにウールのラクダ腹巻で隠す、そんなコーディネートだから足元ははだしに雪駄だ。もちろんすね毛も黒々として脱毛する気なんか、これっぽっちもまったく・・ない!

その昔『昭和』に生息していたオヤジ族には、すね毛は青年への成長を・・髭は老成した成人を・・胸毛は逞しい男を示すマーカーだったからだ。

だが意外にも頭上の帽子とつば上にかけているサングラスの趣味は良かった。

帽子はSTETSON-MANISH PANAMA-SE583(ナチュラル)とグラスはRayBan(レイバン)ROUNDMETAL-RB3447 919671 50-26(グレー 諧調 )で丸い愛嬌のある印象のグラスとあわせて天然色のうえ肌に似た色のパナマ帽に対するこだわりでなんとかオシャレな者の範疇には踏みとどまろうとしてはいたのだろうが、それ以外が現在では人前に出るには問題な肌着・下着に分類されるシャツとステテコだ。 


さらにかてて加えてもっとも残念なことに人相が良くない。


面、エラとも幅広く色は浅黒く獅子鼻で口大きく体格も横幅広く背は175㎝ほど・・・つまりぶっちゃけて言うと昭和の昔には普通によく知られた体型・生態?なので、現在の感覚では「カッコイイ」だの、「おしゃれ」等とはまったく縁のない生き物にみられるのだった。


その極々一部分の数少ない『漢』にしか理解されない心の中のしぶい銀光だの矜持だのというものは、それは親しい家族等にも決して分かってはもらえずに世間からは見たまんまのただの「オッサン」にしか思ってはもらえないのだった(泣)。


 だが、そんな見た目のオヤジの発した意外に強い問いかけに反して、その前に相対する三ッの影は当然 HE-MAN・・ではなかったのだが名前に敏感に反応した。


「「「!・・・」」」

【ステテコ親父】の言葉に動揺したか?無言で立ちふさがりそれぞれに身構える、その3人の姿は・・まさに鳥人忍者。

「どうやら、知っておるな?」

その鳥人たちに向かって、問いただす【ステテコ親父】。

「HE-MANとやらのこと・・知っている限りってもらおうか?」


「「「!?」」」

【ステテコ親父】の隠語の使い方が警-弁方面の者の言葉使いに思えて政府管掌下にある部隊が出自の3人の鳥人忍者たちは行動にためらいを見せた。


「こいつは元、察官さつかんか?(同僚かも?)」

との意識が働いたのだ。


「「!?」」

3鳥人たちの姿は特殊部隊の装備というよりは仮装?、つまりコスプレイヤーに近かったのだが・・。


「どうした?3人そろってビビリかよっ!」


オヤジの向かった先の先頭は赤い姿が・・。


その先の装束は・・黒と白の単一の基本色で全身を統一して染め、包んだもので3人それぞれの未来風軽装忍者っぽい外見?に鳥の意匠が迷彩と混ざった・・遠慮なくズバッと言わせてもらえば、リメイク版リアル&ハード・ガッ〇ャマンの迷彩仕様とでもいえばイメージとして想像しやすいか?


その迷彩鳥人忍者3人をひとりでさばく【ステテコ親父】。

すかされ、避けられ弾かれてもオヤジの移動と共に一斉にアクションを始めた鳥人忍者たち3人組。


素手では勝負がつかないと見たのか?

まず、筋肉隆々・偉丈夫の赤が同じ色の六尺棒をいつの間にか取り出し、常人に無い速さで【ステテコ親父】の頭上に振り下ろす。

同時に黒・白の鳥人忍者がそれぞれいつの間にか取り出した刀を抜き、一見して普通人のオッサンに左右から切りかかった。


「ハァッ!」ゴウッ!

棍の風切り音がただならない速さを示している。

「「シッ!」」

シャッ! スラッ!

黒・白の鳥人忍者が左右から振るう刀も銀の残光を残しつつ舞う。


本当に普通の人間なら3方からのこの攻撃を避けられはしない。

しかし、この【ステテコ親父】はやはり只者では無かった。


一見して気の抜けそうなステテコ姿のオッサンは予備動作も何も無しに、軽く数mを飛び退ると片膝をついて地面にしゃがみ込んだ、・・と。


ザ、ザシュッ!

「昭和の【ステテコ親父】が秘めたるち・か・ら!得と見よ!」

と叫び土の大地に岩のような両手を突き入れると、

「だぶーる!アシュトレー(W灰皿)!!ショウセイ(焼成)!」

と唱えると土中の両腕より閃光が発して烏忍者の目を塞ぐ、その後まだ脈動するように光る大きな塊を引きずり出すようにただの土から輝きの元を生成する。


ズッズウッズズズゥッ   ボゴゴオッ!


親父のゴツイこぶしよりも2まわり程は巨大な透明なナックルとも見まがうブリリアントカットのダイヤのように手技を施された『昭和』には会社や個人宅の応接間などにどこにでも見られた見事な大きさのガラスの灰皿が両手に収まっていた。


「グハハハハハハッ!見たかッ!こわっぱ共が!娘と、涙が、わしを呼ぶ!昭和のオヤジが独善戦士!仕置きの為に今、見参!悪しき体制の犬どもよ!・・んんっと、鳥か・・まぁよいわ。くそっ滅っしてくれよう!【ステテコ親父】アシュトレー!」


両手を振り足場を固めながらも踊る様な独特のポーズ?体術?で先の3人を追う【ステテコ親父】。


その一動作ごとにさながらガン=カタのように超強化ガラス製の四角錐の礫弾ひょうだんを両手の灰皿より指弾のように打ち出し、だだひとりで3人もの謎の敵たる鳥人忍者たち?を確実に追い込み追い詰めてゆく。


追い込まれ続けてついにシビレを切らしたのか赤い装束の鳥人忍者が鍛えた筋肉を生かして得物の棍の一種、六尺棒で打ち落とそうと前に進み出た。


「たかが、ガラス玉だ!」


正眼に六尺棒で打った瞬間! パッ!礫弾ひょうだんは光の玉となり砕け散り消えた・・ように見えた。


「ぬおっ!」


ただひとり突然の輝きに用心して顔を腕でかばいながら、とびさがる赤い色の鳥人忍者以外は・・。


「クハハハハッ!さすがに見切るか、小僧。」

それと礫弾ひょうだんを撃った本人昭和の【ステテコ親父】意外には。


とまた両手の灰皿を銃のように構えたアシュトレー、ただしどこから見ても純日本人顔の中年【ステテコ親父】腹巻姿の名前がアシュトレー?だとは違和感が半端なく3人とも納得いかなかったのではあったが・・。


「レッド!」

「大丈夫ですかッ?」

黒白のふたりがひとっ跳びでレッドに駆け寄る。


赤をレッドと呼んだからには、残りのふたりはブラック、ホワイトのコードネームなのだろう。


「むうっ見よ。」

と大男のレッドがヘルメットのバイザーと肘までをガードした軽金属製の手甲をふたりに見せる。

そこには微細な榴弾片とでも言えそうな、棒で打ち割られた礫弾ひょうだんの超強化ガラス製破片ツブがビッシリと刺さっていた。


「うっこれは・・。」

体格は細いが背丈のあるブラック、これもどうやら細マッチョ男

のようだ。

「生身で受ければ・・」ブラックは言葉を止めて息をのむ。


「下手をすればズタズタよ、おれでも片目に腕一本持っていかれる所だった。あのような馬鹿げた【ステテコ親父】姿ながら決して侮れん奴。」


これは、リーダー格なのか先鋒を仕掛けたレッドの重みのある発言だ。


そのレッドを心配そうに見つめる残ったひとり。


「他のキズや痛み・薬物等の影響は・・?」


ホワイトの話し方は硬いがレッドの破片を受けた腕の扱いに思いやりがあるうえ、一見引き締まった筋肉質の肢体も全体的に丸みや曲線のあるボディラインとあわせて見るとどうやら女性の様だった。


レッドは筋肉ムキムキの体格からすると2m近い大男だがテレでもあるのかホワイトのレッドに対して情がある事が明白な手付きから無理やり己の腕を引きはがして残すと、


「よい、大事無い。」


と心配そうな彼女に存外そっけない物言いをした。


「どうだね、にせヒーロー3人衆・・まだ向かって来るか?」


と中年の【ステテコ親父】腹巻姿のアシュトレーが余裕を持つ様に攻撃もせず三人の前でわざとらしく舞踊のようだった体術の型を解いて見せた。


「「「くっ・・」」」


常人以上の能力を誇る3人組でも、アシュトレーとの実力差は分かるのだろう。

メットのバイザーの影に隠されたレッド・ブラック、ホワイトたちの表情も悔しさに歪んでいるようだ。


「むうっ今は仕方あるまい。」


「了解!」


「はい。」

ホワイトは言いながらポーチより閃光手弾を取り出してアシュトレーの足元に投げる。


ピカカカッ! ドムンッ!

閃光のあと、煙幕も使用したのか?周囲は白煙に覆われた。


刹那!隙あり!!とでも見たか?

ブラックが兜割をねらい正眼下ろしに刀をふるう。


「りゃあーーっ!」


【ステテコ親父】アシュトレーはその動きを読んでいたのか?

「笑止!」


キッキィーーン!

左の灰皿でブラックは刀を止められ、寸刻もなく頭部に今まで感じた事も無い重い衝撃を受けてたった一撃で昏倒した。

ガッギャーーン! 

「ぐぶっ・・。」


「「ブラックーッ!」」


「見たか、これぞ!焦熱ヘッド・クラッシャーよ・・非力とは言え、多対一で人を襲う輩なんぞにわしを倒せるものかっ!」

敵の【ステテコ親父】の気迫にひるむ鳥人忍者。


「そうよ、どんな立派なお題目を立てようとも・・たったひとりを異端としていじめ・もてあそびあげくに居場所を無くす。そんな思いやりや情の無い者どもに思い知らせるために、無垢で哀れな娘のためにわしは蘇ったのだから。娘に人の心を取り戻してやるため人外のバケモノ・・超強快人ちょうきょうかいじん・【ステテコ親父】なんぞにみずからなったのだ、そして最愛の娘・・娘。誰だ!名を・・最愛の娘の名前を・・思い出せぬ~!」


昭和の【ステテコ親父】アシュトレーが己の復活の代償として無くした物の大きさにショックを受けているスキをついて昏倒したブラックを担ぎ上げたレッド、そして続くホワイトが一旦身を引く。


「!?クッ・・政府の手下め・・。ま、待てっ!」

心理的ショックと体力の限界も近く、ふらつく身体に鞭打っても鳥人忍者を追おうとしたが、3人共すでに気配はけっこうな距離に離れていたために果たせず、立ち止まってしまいとうとう膝をついてしまう。


どうやら政府の鳥人忍者をも超える能力は『人間』を強化した肉体であったとしても可能とするには応分の負担があるようだ。


そんな昭和の【ステテコ親父】アシュトレーのすぐ傍にいつの間にか12~3歳ほどの少女が凹凸の少ないなだらかなボディラインを銀色の全身タイツ姿で隠して?突然に姿を現した。


「ぱぱ、すぐマハトレー基地に帰りましょ。灰皿焼成してもう30分、すでに活動限界でつ。ぱぱにもちなにかあったらキニーがひとりきりであいつら3にんと戦うこちょになるの。」


ちいさい彼女は舌っ足らずもいいトコロだったがさらに言い回しの難易度が少し高かったせいか(初登場のせいか?)・・なん回か・・噛んだ。


昭和の【ステテコ親父】は少女を目を細めて見やり、鳥人忍者と争った時と違いこんなにも優しい笑顔が出来たのか?と思える程の笑いで迎え入れると、その大きな灰皿を持つ手がその半分ほどの少女キニーの小さい白い柔らかな手に止められて戦うためのだいじな得物をひとつ大地に落とした。


ザスッ


「ふうっまあ良いわ、奴らは本命・本物ではない様子。なあっ先ほどより樹上から見物していたボウズよ・・。お主こそが噂のHE-MANであろうが・・。」


銀色少女がキッとしたキツイ目を樹上に向けると果たして・・。


少女同様、銀色ボディに赤のラインの HE-MANが樹上よりジャンプして空中で1回転するとふたりの前に降り立った。


ザンッ 

「はじめまして、俺は人類の新しい礎となる者 ・・その名もHE-MANヒーマンという。巷では噂になっているとは光栄だな、世間を騒がすDQN帝国の快人ども。歯向かうならば必殺リハイドレイターの餌食だ。さあどうする?アシュトレー快人【ステテコ親父】と補助快人【キニー】ちゃん。」

と満がふたりの道行を阻んだ。






 次回予告

『DQN帝国』の新しい快人に

「HE−MAN」満はどう立ち向かう?

謎の3人組「鳥人忍者」は何なのか?

姉はどうしているのか?


第9話 DQNの父娘

レッツ!リハイドレイト!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る