第7話 後の波紋・・
「由々しき事よな、あのような存在を・・、見過ごしていたか将軍?ドクトル?お主はこれをどう思うか?シャゲラー卿。」
周囲のまったく見えない暗黒の中で、その舞台だけが浮かび上がる、光の舞台とも言える白く染まった玉座の中央。
ただ一人立ち上がっている者だけが、暗黒のローブを中世の隠者のように、先の光の玉座の中央で抗うように自分の存在もすべても・・何もかもをも隠すようにわざと暗黒を着込んだ長身の男。
フードを深く被り、顔の輪郭すら見えない。腕・足とて黒く長い布?に見える物でミイラ男のごとく覆われていた。
そして、只々異様な眼光のみがその存在を強く主張していた。
その暗黒の隠者の足元、すぐ前にかしずく3人の更なる異様な・・とも言える者たち。
まずひとりめは一見して女神のごとき輝く半裸身を扇情的に、局部的な銀と黒の棘や角のような鎧で覆い飾った、戦慄の美姫・黒白の姫将軍カーミャ・・。
次なるふたりめは禿頭の白衣姿のちいさな老人にサイズを間違えた銀色の双眼鏡やヘッドホン、なにかの供給パイプのような銀色のホースにLEDの明滅が絶えないメカ部品を全身のあちこちに埋め込んだロボット・サイボーグのような白銀の小男。このおとここそ組織の頭脳ドクトル
そしてさいごは口を閉じていれば人気アイドルで通る美男子然とした大総統と同じ黒衣だが、隠者とは程遠い軍服礼装はおのれをいかに強く美麗に見せるかを考えたシャゲラーだった。
「はっ我が君、恐れ多くも具申致しますれば御二方の慢心かと、拙考いたしますれば・・。」とふたりに振り返り悪意のこもった
笑顔を返す・・ニヤリ と。
それを見て気色ばむふたり。
「な、貴様!」
「むぅ!」
ふたりとも状況が許せば飛びかからんばかりだった.
「やめよ!」
それを暗黒の男がローブの片手で制すると手振りだけでシャゲラーに先を続けさせる。
その様子を心底より悔しそうに睨むふたり。
「はっ!事前に脅威になりそうな組織・人物を抹消する手間まで掛けたにも関わらず、あのようなS級と思われる脅威を察知できずに放置しました。そのうえ作戦発動後に逆襲されるという最悪の悪手を導き味方に多大な損害を与え計画に大きな遅延を・・」
味方の失態をここぞとばかりにあげつらうシャゲラーだが・・。
「もう良い。」謎の全身黒づくめの暗黒の男?大総統が彼の発言を止めた。
「はっしかし、まだ続きが・・。」だが、シャゲラーは止まれなかった。
「我がもう良いと言ったのだぞ・・。」暗黒の男、大総統は不快そうに一括する。
さすがの傲慢なシャゲラーも二度目はさすがに引いた。
「ははっ!」
引き下がり、頭を大人しく下げて見せる。
「さて、そう言われて次の手は何とするカミィよ。」暗黒の男の話し方は少しも親しみを込めたようには聞こえない。
しかし将軍は愛称で呼ばれた事で大首領に最高の笑顔を向けて答える。
「はいっ!大首領様。スパイを放ち本人から周囲の者、背後組織等をくまなく探らせております。」
「うむ。」 満足げに頷く大首領は次にドクトルを見やる。
「ボス!すでに敵戦力推定値の120%以上の能力値で48時間以内に作戦行動できる
「うむ、見事やって見せよ。」
将軍とドクトルふたりして頭を下げた。
「「ははっ!」」
その3人の様子を冷ややかに横からシャゲラーが見つめていたが主や仲間に対する視線とは到底思えなかった。
男担任の丸山先生の授業中に通知音が鳴った。
ポロン!
こんな事もあるかと音はなるべく小さくしてあったが聞きとがめられたようだ。
「だれだーっ!神聖な現国の授業で妨害を行う不届き者はー!」
(神聖ってなんだよローマ帝国かっ・・不届き者?江戸かっ!お前は本当に現国の教師か?ホントは歴史の教師じゃねーのかよっ?)クラスの生徒たちがおのおの心中で一斉に突っ込んだ。
キンコーン リンゴーン キンコーン 「「いえーーい!」」
ガタガタ「終わったー!」ガラガラ「飯!飯!」「学食行く?」時限終わりの鐘の音に生徒たちが昼食に向けて一斉に動き出した。
ガタガタ「こらー下手人を・・」「授業終わり、先生ー邪魔!」
「き、貴様らよーく覚えておくがいいっ!正義の前にーーッ」
「はいはい」「正義、正義!」
出席簿・教師用パッドを小脇に抱えた丸山先生が半泣きで走り去って行く。
「悪は滅ぶのだーーっ!」
「ギャハハッ」「センセー泣いてんのーっ?」
「「「はあ~っ」」」
クラスの3馬鹿トリオで有名である小堺君・関根・紅一点の萩が担任教師を追い出した後で集まって会話しているようだ。
「真面目が取り柄の
(実際は新山先生の傷は HE-MANが未熟だった為なのだが。)
「あの、中2病教師がひとりで担任だってよー!うぜーっ!」
クラスのヤンキーで髪色が金髪と言うより黄色い女子の萩さんが担任の先生を一刀両断にした。
「おれら、丸山に悪の組織に就職斡旋されて売り飛ばされんじゃね!」とクラス一番のアホの名をいただくリーゼント関根のアホ予想。
「「んなアホなっ!」」思わずつっ込む小堺君と萩さん異色ペアがノリノリで手を取り合ってボケに突っ込むポーズはまるで社交ダンス。
分厚いビン底メガネに今はすたれた7:3分けの小堺君はホントに賢いのか?良くはクラスメイトも知らないが、ガラの悪い女子のヤンキー萩さんとは妙に息が合うようだ。
一方では謎の情報源、谷口がリーゼント関根に忠告してくれる。
「もうそろそろやめとかないと別なフラグ立って本当に田村と大西さんみたいになるで~。」「なんで?」と関根。谷口はここぞとばかりに得意顔で教室の皆を手招きして集め、声をひそめた。
「俺知ってんだ、田村と大西がああなる前に・・変なもの見たってふたりである人を追ってたんだぜ。俺もまだ消えたくないからこれ以上は・・って事で。」
「「「なーーんだよーーっ!」」」クラス一同の大合唱!
「言わへんのかーーいっ!」これはリーゼント関根だ。
そこに、お手洗いから教室の方へ戻ったバインバイン(どこが?)のヒロイン美月が ふっ と違和感を覚えた。
「あれっ!?あの後ろ姿・・誰だっけ、見覚えが・・。」
昼休憩なのに白衣の後ろ姿が慌てて満の教室の前扉あたりから走り去ってゆくのがチラッとだけ見えた。
その時、横から不意に強く押された美月。
どんっ
「きゃっ!」「いやっ・・!」
「!?」(えっ!?)
まじめ委員長の田中
「大丈夫ですか・・三条さん。ごめんなさい。うっかりしてて・・。」
「ううん、いーよ!でもいつもしっかり者の委員長が、珍しい
ね。」
「・・・。」
美月が返すと
「わ、わたしにも・・気になる人や悩みのひとつぐらい・・。」
と言ったのだが声が小さくて美月には聞き取れなかった。
そして「ん、もうっ!」と苛立ちと共に去って行った。
「何だったんだろう、委員長?(それに今さっきの誰だったっけ・・?ま・いいか。)満ーっ!お昼一緒に・・あれっ?みんな満、知らない。」
「「知らな―い!」」
「「今までそこに居たよねェ?」」
しかし、当然そこには満の姿は無かった。
「浮気だよ、浮気!美月ちゃんのムチムチバディに飽きてェ、今頃は中等部の後輩のツルペタんとこに通ってるらしいぜ。」
リーゼント関根よほんとバカだよなお前。
「んな訳あるか、美月っちは小デブと超ラブラブ中なんだよっ!小デブが美月を裏切るなんてわけぜってーあるハズねーし。」 ヤンキー萩さんも幻想入ってるようだ・・。男ってなぁ仕方ねぇ生き物なんだよ、みんな気をつけよーね!
「関根、発言の信ぴょう性は?」やはり小堺君は賢いようだ。
「いや、後輩の中坊たちが似た体型の玉っころを柔道場あたりで近頃、何人か見たらしいんだ。」
「「「へえ~っ」」」
スマホを調べる満、さっきのメール音の分だ。
「DQN予報よりー⑤ 怖いよ~!HEROの正体を探りにDQNが人やドローンやアプリなどのスパイを送りつけてくるよ~。」
「ついに、本腰を入れて探りに来たな。どう処理するか?」
ポロン!
また、これも新情報だっ!
「DQN予報よりー⑥ メカ・ドローン・アプリ関連はメット棒を
HEROが持っていれば A I 疑似知能が自動処理してくれるよっ影響範囲も中心が割り出せないようにできる。」
(なんで、裏 kumi さんはこんな事のニュース・ソースがあるんだ?なぜ、持ち主の僕や俺さえも知らない性能を謎の NewTuber が知っているんだ・・誰なんだ裏 kumi さんって・・。一度は会わないといけない。)
誰も来ない柔道場の更衣室のベンチで僕は奴と秘密の作戦会議と情報の共有をしていた最中だった。
「・・と言う事でしばらくは身辺にも注意しないと・・。」
(分かった。その件は三条にでもそれとなく言っておけ、なんとかしてくれるはずだ。それと、先の戦闘中の薬物の件だが・・。メットのA I 疑似知能となんとか解読しといた。結果的に言えばあれは・・ドーピングなんて生易しいもんじゃねぇ。
言わば、自殺か・自爆に等しい。効果は限定的だが短時間だけ3倍以上のちからを無理矢理に引き出す薬物だったよ満。)
「!?土台も無いのに、無理にそんな力を出したら後の体は?」
(良くて廃人、普通は死体だよ。何らかの形で強化された、ある意味で俺らの御同輩ってわけだからタイムリミットを越えた活動が何とかできたんだ。ただ、完全に薬を押さえ込む事に成功したんじゃ無い、超過時間もせいぜいが3分ももつとは思えねぇ。)
「そんな事を・・【金ジャラ】のあいつはジョージと彼女に呼ばれていたか・・。」
(当然、薬を打つ前から知ってたろうし、知らなくても自分に打った時点でイヤでも分かったろう「もう、自分が長くはねぇって。」ことはさ・・。)
「・・・・・。」
「ねぇ、あのふたりは元・・夫婦か恋人同士?だったかなぁ。」
(お前の良いとこでもあり、大きな弱点だな。優しすぎる・・今更考えても仕方ねぇ、ふたりはもう・・二度目の死を経験してるんだ・・今度こそ本当に死んじまった。)
「リハイドレイターでふたりの細胞を取り込んだせいか?変な夢を最近よく見るんだよ。」
(どんな夢だ?)
「自分が男だったり、女の子だったりするんだけどさ・・。」
(ああっ・・。)
「どっちとも雨の日に狭くて暗い汚い路地裏で決まって卑怯な暴漢達に取り囲まれてワナに嵌められて、その暴漢達にふたりは大勢で酷い事されるんだ。」と身震いを止める様に自分の二の腕を空いた手で抱きしめる満だった。
(ひでぇな、世の中ってやつは・・。)
「あ、あと最近知ってビックリした。僕の銀行口座に毎月30万の入金があるよ、火事の後から・・。振込先は『キュウ』とだけ・・。」
((ふん・・『キュウ』ね・・ワザとらしい奴め。) ああっそれと、俺もさっきの女で思い出したんだが、お前の姉貴の件だがな、手がかりのようにあちこちに最近頻繁に姿を出してはいるようだが。多分、目くらましのためのダミーだ。DQNに追っかけられてるしな、謎の NewTuber以外はほぼすべてニセ者の可能性が高い。もし、本人なら面と向かえば俺が判別できる。)
「じゃあ、裏 kumi さんが?」
(接触が出来て無いからまだ分からん。そもそも、会おうとしてはくれないのでなこちらからは連絡できん。用意周到に準備されたA I という可能性もある。引き続きメットの A I と調査は続けていく。)
「分かったよ。」
「(ふう~っ!)」
「満〜いる〜っ?あたしよっ美月!」
ガラガラガラッ
(厄介なのが来たぜ!)
「やっぱりいた〜っ!どおーしてわたしから逃げ隠れすんのよっ!それに・・道場にいたって事はやっぱり・・まだ合気道を続けてるんじゃ・・。」
すがるように僕の手を掴んで半ば泣きそうな表情でしゃがみ込み、上目使いに見上げる美月・・。自然に視線を下ろすとシャツ胸元のボタンを上から3ッも不自然に外した襟元からこぼれる様
に白く光る胸乳の丘が丸見えになった。下着の型も見えないっ!
こいつ!のーぶら?でここまで・・?
「!?み、美月っ!バ、バカ一体何やってんだよ、お前っ!」
「だって、満は最近あたし・・避けてる・・だから嫌いなら・・どうしようって。ここなら人影も無いからって・・思い切って・・って・・わたし。」
ふうっと不意に立ち上がり、身長差を利用して胸の熱い谷間に満の顔を挟み込む、本気の幼馴染がいた。
「どうして避けられてるのか、分からない・・けど、嫌だったらもう近くに寄らないようにする。だから危ない事だけはしないで。・・最近の様子・・おかしいから。」
もう濃紺の瞳に水滴がこぼれる程に湛えられている。これ以上は
もう見ていられない。
美月の雰囲気に呑まれてしまいそうになったが、踏みとどまって誤解を解こうと顔を上げた。
「美月、心配してくれるのはとても嬉しい。それと、誤解してるようだから・・言っておく・・初めて出会った時から今まで僕には美月しかいない、今はそれだけしか言えない・・ごめん。」
僕の思いもよらぬ突然のタイミングでの吐露。
おじさんとおばさんのふたりに挟まれ睨まれ命がけになりそうとも言えるだろう一世一代の告白は成功したのか?どうなのか・・僕にはわからない。
美月は長いまつげのブラウンの髪質に深い水面の様な濃紺のひとみを潤ませて、その美しい目からボロボロと涙を流しながら僕に背を向けて下着や服をつけ直してから、僕の頬に幼子の時のようにキスをして何も言わずに部屋から駆け出して行ったからだ。
だから、美月が僕を変わらずに好きで許してキスしてくれたのか?
それとも、もう諦めた最後のお別れのキスなのか判断する事さえできなかった。
(おい、満・・次の標的がいたぜ。)
「どこ!?」
(先日新山先生の知人がいた交番の隣の町内だ。藤林小学校てのがあるんだが、奴らそこに巣くってるようだ。ネットや警察無線などで総合的に調べあげたから、間違いない。ここも男と女の快人2体ペアだそうだ。得物はガラスらしい、詳細はまだ不明な点が多いがここなら危険度も許容範囲内だろう。)
「分かった・・行こう。」
「(【能力】超高速移動レベル(中)!)」
風景が筋となって流れて行く。
「(脱着!)チェンジ!HE-MAN!」ビシッ!
(・・・)
「お前も言えよ、チェンジ・・・打ち合わせで決めたろ!」
(・・・)
「頼むから何か言えーーっ!」
なれてない新ヒーローの前途は多難であった。
次回予告
DQN帝国の新快人とは?
どんな「ちから」を持つのか?
HE-MANはどう立ち向かう?
また2対1だ!
どうする!
HE-MAN けーさつ呼ぼうか?
第8話 灰皿?対 烏!
にレッツ!リハイドレイト!
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