第4話 超人 対 DQN快人 対 警察官
「おいっ!ちょっとぐらい出来るからって・・。DQN帝国の『強神経・超快楽・進化学』の粋、
DQNが気持ち良さげに盛大に吹いてる最中、周囲の景色が止り始めて急に、高速思考のスイッチが入ったのが分かる!
(汗の匂い!眼球の動き!筋肉の緊張!精神を集中しだしてる。何か仕掛けてくる気だっ!一連の流れから男がバットをこちらに振り上げようとしているのは読めた。)
HE-MANとなった《俺》=(満)は自分の細胞を活性化する。
「【
その後すぐにヘルメットの内側に警告音とメッセージが響く、
「ポン!肉体復元率68%到達・・精神復元率83%、細胞賦活促進を確認【ライン1】突破。 Hi-Effect-MAN のランクを解放。」
――――――――殺りあえるとでも?思ったかよおぉーーっ!」ぶごおうーーーっ!
さっき警察の特殊部隊員を襲った時とはパワー・スピード・タイミングすべてが段違いだった。
とても間に合わない・・。
眼前に迫る銀閃!―――――――・・
と【ライン1】を突破できず Hi-Effect-MAN の【能力】の解放前だったなら即、死にかかわる脅威だっただろうが・・。
それが叶った今では・・。
「ぬるい~遅くて、蠅が止まりそうだ~っ!」
地獄耳
「・・!?」
ギシッ ギリギリギリ!
「ぐっぐうううううっ!ばっ・・馬鹿なっ!俺様のこの生まれ変わったちからでも、止められちまう・・があぁっ!・・押しきれねぇ~っ!」
いつもの自信にあふれた【金ジャラ】の言葉とは思えないセリフに合わせて、さっきの太った少年の独白を聞き取っていた【ミミィ】は
「あ、あんたぁっやっぱ、やばいよっ!手下どもに任せてここはふけちまおうょっ!このデブ並みじゃないよっ!」
新たな声の主の方を見て、その地味さに隠された下卑た刺激に満ちた恐ろしいほどの色気にHE-MANの目が奪われてしまう。
【能力】の目測推定ではあるが、88 D カップの
そして HE-MANも男なので、ついつい【ミミィ】の肌の白さに、ゆれ具合に目が取られて行ってしまう。
そのスキを突かれ【金ジャラ】に離れるよう間合を取られてしまうHE-MAN!
「ようし、よくやったぜ!【ミミィ】」
「うふっ♡」
【金ジャラ】に庇われつつもからかう様にHE-MAN にウィンクを投げかける【ミミィ】。
「チッ、失敗したな。バットの扱いづらい肉弾接近戦闘に持ち込めばひとりは倒せたハズなのに・・。」
吐き捨てるようなHE-MANのつぶやき。
肉体の基礎能力ではこちらが上でも、戦う事に場馴れしているのはやはりあちらに分があるか・・それとあの銀色の重い金属製バットを出現させている能力?どうやっているのか?他にストックはどれほど有るのか?
それに【ライン1】突破したばかりの肉体の Hi-Effect-MAN の【能力】解放で【金ジャラ】の全力の攻撃を受けきることが出来るのか?
「何者かは知らんが男はやっぱ!男かよ、おかげで間合いが取れて助かったぜ・・それにしても・・チィッ!人のおんなをジロジロ見やがってようっ!次は今日の分も合わせて金取るぜっ!」
【金ジャラ】が【ミミィ】を後ろ手にかばいつつまださがる。
「ガキのくせしやがってっ!色気出すのはまだまだ10年は早エーッてのっ!」
【金ジャラ】は自分の手持ちの武器を軽く「く」の字に曲げる、
「銀バット・撲殺ブーメラン!」
と90度はズレたあらぬ方向へと投てきした。
その軌道を見切って余裕を持っていたハズのHE-MANだったが、長楕円の角を曲がり彼に向かってきた所で銀閃が3つに分かれ迫って来る。
「さすがにただの腕力バカでも無かったか・・。」
とつぶやいた後に、声をあげる。
「誤解がある様だが・・おれの大切な人に先に手を出したのは、貴様らが先だからなっ!」
「!?」
「へっ!
【金ジャラ】の悪態の間に迫りくる銀閃にとっさに足の踏み位置を変えようとしたとたん、
ボコボコボコボココッ!
「!?」
ガシッガシッガッ!!
「くっ!なに・・。」
突然、地中より血の気の無い白い手首がいくつも突き出てきてHE-MANの足をつかみ幾重にも固定する。
空飛ぶ『銀閃』殺人バットの風切音がせまる!
その音がもう近い!
不利な体勢で脚に絡む白い手首や腕を掴んで土中から引きずり出し音にかざすように人肉の盾にする。
「うおおおおぉぉーーーっ!」
渾身の力を振り絞り思わず声が出た。
ガッゴッドッ!
「がはっ!」
そこへすごい衝撃と共に青白い肉体のゾンビどもを裂いて銀バットの先が飛び出して来てHE-MANに襲い掛かる・・が、対刃・耐圧・耐衝撃の防護装備を備えたスーツは《俺》=(満)の肉体をなんとか守り切ったが、損傷した部分もあった。
ヘルメットだ・・。
メットはスーツのように圧縮エアーの耐圧・耐衝撃構造にはなってはいなかった為に。メットの左こめかみ下を割られ、幅1センチもの裂け目が出来ている。
このままでは危険だ、正体もバレる可能性もある。
DQNのヤツらの持つ特殊能力も
「超・聴力」
「艶・催眠」
「自在バット」
の他にもどんなとんでも無いちからがあるかも知れない・・。
「!?ッ」
ふと気がつくと【金ジャラ】と【ミミィ】のふたりの姿はすでに無かった。逃げられてしまったが、なかば
「ホッ」と一息つく。
引き分けどころかメットをやられて軽傷だが頭に手キズも負っている身だ。
正直、「面倒だから、今回は逃がして(今は逃げて)やろう感がスゴイな・・。」
奴も言ってたから次にはちゃんと(美月たちを)守んねぇと・・。あの時は怖い思いをさせてしまったし・・。
徐々に迫る周囲の3つの影はDQNゾンビかグールの残りなんだろう。
「「「・・・・。」」」
「宣伝効果より、実務を取ったのか・・。」
2ケ月前の日本を襲ったプロトタイプDQNゾンビは会話は出来なかったが、発声機能はまだ残されていたが・・、今回の実戦配備分では発声する必要性が無いと判断されたようだ。
命令受領確認などに困らないのだろうか?
「ザリッ・・ブッ・前方、標的3体ヨリ電波ノ送受信ヲカク・・ン。」
メットのシステムがまだ生きていた様だ。
なるほど・・、ゾンビ、グールクラスは無線操縦になったのか。
「待てよ・・。ならこちらで電波ジャックして3体を活動停止にすることは可能か?」
「ブッ・・5分標的の相手をして・・イタ・ケレバ。」
「ヘルメットの損傷で機能に影響は無いのか?」
「主な損傷部位ハ発音機能ダケ・・ス。」
メットの助言A I との作戦タイム中も待っててくれはしねぇか?
3体のうち先頭の1体目のDQNが迫る。
皆、どこにでもいるような普通のサラリーマンのような男の顔をしていた。
ただし、恐ろしく無表情で3人?とも襲い掛かって来ていたが・・。
「ん?何か忘れてんな・・。あ、俺が助けたサツ官のおっさん
は・・どこいった。それと、前のDQNゾンビプロトタイプは首にDQNダニがいて寄生されていたはずなんだが・・。警察の電撃警棒で対策されたんでシステムを変更したのか、2か月もの空白もダテじゃ無かったんだな。」
まあ、考え事しながらもゾンビごときに正面から捕まるはずもない。
だってヤツらの上位存在の
「ブッ・・捕獲準備デキマ・タ。」
「よし、やれ。」
「ハ・・イ。」
「ジーーーッ! ギィーーーーーーン!」
そのセミの鳴き声の様な音がメットの内外に響いたとたんに、
まるで卒倒でもしたかのように直立不動で倒れ伏す3体。
「ドッドドッドサッ!」
「やれやれだぜ・・やっと帰れる。」
と俺が言ったあとで、後ろの物影から小銃を構えた特殊部隊の生き残りが出てきた。
「助けてもらったのに悪いが、おとなしく手を挙げてくれないかな・・?」
表情はちっとも悪く思ってそうには見えない。むしろ、仲間の仇のひとりとでも考えてそうだ。
「今の・・ゾンビ共への対処方法を我々警察に教えてくれ。そのためにおとなしく私と一緒に本部まで来て欲しい。」
という割には小銃の狙いは俺の胸から腹のあたりを外さない。
意外にいやらしい野郎だ。
「もし、出来ないって言ったらどうするんだ。」
チャッ!
俺がそう言ったとたんに心臓にピタッと銃の狙いをつけたままで、訳知り顔ではなっから疑ってかかってきてやがるな・・。
「やっぱ、バケモン同士で助け合うのか?出来レースなのか?」
俺は手を『ホールドアップ』に挙げながら、
「ヒドイ言われようだな。こっちからすると、あんたがDQN達の内通者じゃないって証拠を上げて欲しいぐらいなんだがねぇ。秘密を渡したとたんに『ありがとう、ごくろうさま!』って言われて胸に風穴を開けられてさ、あんたがその秘密を手土産にDQN達に取り入るような事は考えたくないのさ・・。」
警察の特殊部隊員は浅黒い顔を軽くしかめた。
「少年・・なんだろう?まだ。・・だったら悪ぶるなっ!おれの事をあんたって呼ぶのも止めてくれ。・・・坂巻だ、N-SAT隊第2班 リーダーの坂巻巡査長だ、京都府警の警察官だよ。さっきも目の前で仲間が大勢やられたばかりだよ。」
「なら、俺もさ京都府警本部、本部長付き広域刑事部第1班班長の三条
「なにっ!」
「気が早いなっ!落ち着けよっ!三条氏本人だっ・・。とは俺は一言もいってはいない、三条警部補とは古い知り合いだって事だ・・、でさぁ・・中央に近いのはどっちだい?俺の話を素直に聞いて直ぐに役立ててくれる方に話したくなるのが人情だよな。わかるだろぅ。」
俺は見えないのを承知でわざと悪役っぽく笑って見せてやった。どうやら、ヘルメットの割れた裂け目の部分、たったそれだけのスキマ部分の動きからも表情が分かってしまうようだ。
「ウソつくの・・下手だな君。」
坂巻と名乗った精悍な印象の男は慌てて付けくわえた。
「あ、それと・・助けてくれてありがとう。・・・こういうの忘れちゃイカンよな想定外でいっぱいいっぱいでもな。」
素直に礼をされた事で、ふと・・日常と最近の異常な事件との乖離で少し精神が疲れていたのかも知れない。
数か月前までのなにげない姉弟ふたりの生活が思い出されて、夕食時の姉さんの屈託のない笑顔に、ふとした仕草に恥ずかしがる表情に涙がこぼれそうになった・・!?
『姉さん』だと!俺が表に出ている時は無条件に『姉貴』と考えるはずだ。
(満)より強いハズの俺が・・。壊れて来ているのか?
くそっ!
強化されようが、知識を詰め込まれようが・・しょせんは俺は(満)の影でしかないって事だ。
戦闘時に(満)が気後れしたり、ためらって致命的なミスを犯さないようにという久美姉ちゃんとDr.Qの文字通りの親心ってわけだ。
大事な大事な最初の成功例で自分たちの身内だものな・・。
そして、俺が(満)を守り抜いて傷を背負う役なのだ。
だから、俺は(満)に余計に辛く当たってやるのだ。
分かっているさ、俺こそがまがい物のニセ者、本物の大切なお宝は(満)の方。
だから宝(満)が傷つかないように造られたかりそめの人格、それが俺という存在のいる意味なんだ。
身を守るための盾や武器と同じだ。
必要なら修理もするがいらなくなれば捨てられるゴミのような存在が俺という人格なのだ・・。
考え込み、少し黙り込んだ俺を変に思い気をまわしたのか坂巻が
突っ込んで来る。
「そんなにへそ曲げんなよ、いい男だってのは行動で分かるから。君の事についてひとつだけ聞いていいか?」
俺は顔と首のわずかな動きだけで『なんだ?』と身振りを返す。
「・・君のそのちからはどうやって得た物なんだ?奴らに改造でもされたのか?それとも・・まさか他の天体から流れて・・。」
俺はあまりにもアホらしい内容にナーバスな感情を維持できなくなった。
「来ちゃった訳じゃねーよ!似てっけどよ!」
「フッ!クッククククッ・・・あんた、坂巻っつったか?・・あんた、ホントにバカだろう。女に良く『信じらんないっ!』ていわれてフられないか?」
「!?な、なぜ知ってるッ!スパイかっそれとも覗き野郎か!」
「ぶん殴るぞっ!この野郎。」
「あぁ!天下の公僕お巡りさんに対して、天下の公道で暴行予告とは大したガキだなっ!一度ダムダム弾でハチの巣になってみるか?」
「・・おんなの事を言われただけで逆上すんな、大人げねぇなぁ坂巻ぃ。」
俺は撃たれないようにさりげなく銃口の射線を指先で心臓から外しているように見せてバレルをそっと曲げた。
気がついてねーな。すまぬ、許せ坂巻。
「どーてーが呼び捨てすんなッ!」
「お、おま・・お・俺だって、おんなぐらいいるし。」
しばらく前のハード路線が台無しだった。その時、外が騒がしくなる。警察関係車両が団体で御到着だ。いや、先頭車両は自衛隊
の先導か・・。1/2tトラック(コガタ)を先頭に73式装甲車・
11/2t救急車に混じって、ブルーに白色警察カラーの小型警備車両が何台かで総勢10台ほどのまあまあな規模のキャラバンになっていた。
フィーーン! ビィーーン!
空は空でうるさくて落ち着かない、最近選定された警察公式ドローンたちがあちこち飛び回って覗きまわっている。
少し待っていると・・。
「ポン・・ゾンビ・フリーザーをデータ・・プニダウン・ロ・・完了。」
「やっと終わったか、いつまで漫才やらされるのかと・・まぁホントは団体さん御到着前に逃げ出したかったんだけどなーっ」
「なにっ!今なんて言ったんだ?」
反射的なんだろうが銃口をイチイチコッチ向けんなってーの。
「イヤな、回りが五月蠅くなってきたんでそろそろ御いとまさせてもらおうかと思ってさ・・。」
俺は体の準備を整えてから、坂巻さんに向かってポーチのデータチップをゆっくりと投げたがカーボン複合材のメットのひさしに刺さっちまった。カッ!
「うおっ!」
「Hi-ps細胞・・転換、配列・・・カ・・ヨウ」
「じゃ!坂巻。またなッ!あっそうだその銃、壊れてんぞッ!」
「なにッいつの間にこんな・・あっ!待てッ!」
手を伸ばすが、届くわけがない。
着替えの時に使う【能力】高速移動レベル(弱)等問題にならないほどの瞬時の加速で警官たちの目からは消え失せたように見える。
【能力】超高速移動レベル(中)なのだから、当たり前か・・。
「忍法、朧隠れッてか・・。」
機械類のセンサーさえ用意してないと追従など出来はしない程だ。
体の代謝機能を上げて動かしたことでこめかみの傷も回復した。用意周到に追跡ドローン、市街カメラの写界や足跡に匂いなどの痕跡も消す。
おかげで余計に時間が掛かった。
万能のヒーローの俺からただの太っちょ満には戻ったが、今日の心は落ち着かない。
四つん這いで教室後ろ側の扉をそおっと音もなく開けると目の前には意外な暗い世界と・・どこかで見た覚えのある薄い水色と白のボーダーに黄色い可憐な3点花のワンポイントが・・。
(「こ、これはッ!」)
状況がぼんやりと分かりかけて、焦って立ち上がろうとした事で事態は最悪な方へと転がって行く。
ただし、これは人為的なとは言えるがあくまでも事故であった。彼女は逃げた?満を気遣い教師たちの印象に残りにくいようにしようとして・・、入室を手助けしようとした。
背の高いスタイルの良い彼女が扉前に立って教師に気づかせる訳にはいかないので当然しゃがむ。
そこに話題の男が登場、教師たち4人は前扉側で闘論を白熱させている。
当然、後ろ扉より隅の影に隠れ(きれてはいないのだが、)つつ教室に進入。
問題があったとすれば、彼女のおせっかいがほぼ役立ってなかったという事か・・。
そして、エンディング。
満は立ち上がろうとしてスカートの布地に阻まれ、美月はバランスを崩されそうになって満の頭を押さえた。
結果逃げ場を失った立ち上がるちからと前に進むちからが残った前方に・・。
結果・・クラスメイトたちの前でスカートの布地に隠されてはいたが満の顔面は美月の鼠径部に接触!!しつつ、満の勢いに押し倒される美月。
☆余りにも刺激的過ぎる情景の為、ふたりの未来ある若者を守る為にも以後は音・音声のみにて表現いたしますのであしからず。
「「あああ~っ!」」(倒れたままのふたりの叫び!)
「「「あああーーっ!」」」(周囲の)
「「「キャーーッ!」」」 (人々の)
(そして教室内の叫び!!)
ガラガラッ
「「「ああーーっ!」」」(教師陣の叫び!!)
「お前らーっこの大変な時になにをやっとるかー!!」(丸山)
「そーですよーーっ!」(高音の男性)
「ふしだらですよっ!」(・・・・・)
「~うらやましいっ!」
「「「「・・セ、センセイ・・。」」」」(その場の生徒一同)
次回予告
DQN帝国の快人たちに
HE-マンはどう立ち向かう?
そして姉の生死は・・。
影の助力は誰から?
Dr.Qとは?
第5話 対決!?銀バット快人【金ジャラ】・・前
レッツ!リハイドレイト!!
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