第13話
「「なんで俺らの方が悪いことになってんだ」」
放課後、陽斗と二人で校内の清掃活動。それが俺達に言い渡された処分の内容だった。
中学で陸上部で一応エースを張っていた俺とバスケの推薦でこの学校に入った陽斗。そして小学校の頃からのチームワークを活かして俺達は完璧に男子共を撒いて一限のチャイムの頃に帰ってきた。なのに何故だ。
「なんだよ『俺も彼女ができたことがないんだよ。よって美少女に囲まれるお前らが妬ましいから反省文プラス校内清掃だ!』って」
文句を言いながら陽斗がちりとりでゴミを集めてゴミ箱に捨てる。これで校内清掃は終わり、後は帰るだけ。
「似すぎて逆に笑えないわ、お前どっから声出してんだよ」
めちゃくちゃガタイがいいのに超がつくほど高い声の生徒指導の先生を思い出す。ごっつい男からあの声出たら流石に引く。想像しやすく言うならボディービルの世界チャンピオンがソプラノ歌手を兼業でやってるイメージだ。
まじか、じゃあやめよ、と陽斗が真面目な顔で言っていた。個人的には普段ヘラヘラしてる陽斗のこういう顔の方が面白い。
「てか掃除終わったし帰るか」
とりあえず早く帰って寝たい。箒って微妙な長さだから腰が痛くなるんだよな、わかってくれる人は多いはず。
「だな〜……まぁ俺はこれから部活もあるんだけどな?」
これからはきついわ〜、と陽斗が文句を言いながら鞄を担ぐ。
「それはしゃーないだろ、頑張れよ、部活」
俺も鞄を担いで、机の上で溶けている陽斗より先に教室を出た。
──────────
「あ、待ってたよー?」
「え、いやなんでいるの?」
俺が玄関へと降りていくと、そこにはブンブンこちらに手を振る小鳥遊さんが立っていた。
「なんでって、そりゃー一緒に帰ろうと思ってだけどー?」
き、距離が近い……。覗き込むように俺の顔を見る小鳥遊さんの顔との距離は、拳一個分も空いていない。
「一時間以上も……?」
「うん、そだねー。……あ、これお疲れ様ってことで」
スポーツドリンクを渡してくる小鳥遊さん。さらっと言ってるけど、一時間だよ?退屈だっただろうし、何より千代ケ崎さんや緋彩と一緒に帰らなくてよかったのか。
「緋彩は詩乃と帰るって言って残ろうとしたけど、機嫌悪めな葵衣に拘束されて帰ってー、聞くところによると緋彩と一緒に登校したらしいしー?じゃあ私もってことでー」
「小鳥遊さんってエスパー?」
何故こうも思考が読まれるのか。声に出してる訳ないしな……。ちゃんと反省は活かしてぶつぶつ言わないようにしたんだからな……!
「え?どゆことー?」
首を傾げる小鳥遊さん。いや、わかんないならいいんだけど、全然。分かられちゃうと俺なんも隠し事できなくなるし。
靴を履き替えて歩き出すと、ま、いっかー、と言って、小鳥遊さんが腕を組んできた。朝の感触とは違い、安心感のある小さめだった。
「むー?失礼なこと考えてないー?」
「いや全くこれっぽっちも」
嘘ですめっちゃ失礼なこと考えてました。でも小鳥遊さんの見た目ならなくても全然ありだと思う。理性も働きやすい職場に行けて大歓迎。朝みたいなブラックな場所で働かせるのは無謀が過ぎる。
「んじゃ、帰ろっかー。まず駅前のカフェに行こー、パフェ食べにー」
「え」
直で帰るもんだと思ってた……。しかも『まず』ってことは他にもある。これってもしかして放課後デー────。
「何勘違いしてるのか知らないけど、女子からの下校のお誘いはだいたい寄り道付きだよー?」
「あっはい」
初めて知りました勉強になります!これで勘違い対策がひとつ増えたと。放課後デートなんて言葉も出さなくてよかった。言ったら絶対笑われる。
勘違いして困るのは俺の方だ。腕に抱きついてくれるのは嬉しいけど嬉しくない。今度からは考えて行動しよ。
「しゅっぱーつー」
気の抜けた小鳥遊さんの声で、俺達は学校を出た。
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