第12話
「はよーっす」
「「「「……………………」」」」
え、誰も挨拶してくれないってマジ?女子は分かるよ?普段から関わりないし、久々に帰ってきた千代ケ崎さんのとこに集まってるしな?
でもお前らは違うよな、めっちゃ俺のことガン見してるしなんなら睨んでるまであるよな?
「……うたのん、ずっと扉の前に立たれると、邪魔」
「「「「うたのん」」」」
復唱すんなよ。男からそれ言われんのは気持ち悪すぎる。そんなに呼ばれたいなら俺を恨むより自分で話しかけに行ってくれ。
「……ねぇ」
「悪い、ちょっと男子が邪魔してきてな?」
嘘は言ってない。実際圧がすごくて入れないし、一歩踏み出したら死地だろこれ。
「……うたのん困ってる、みんな邪魔しない」
「「「「はい!分かりました橘さん!おはよう詩乃!!」」」」
緋彩の一言で男子全員がこっちに向けて満面の笑みで挨拶してきやがった。素晴らしい手のひら返しだなぁおい!
「……それじゃ、お弁当は任された」
お弁当を持ち上げて俺に見せると、緋彩は女子の輪の中に突っ込んでいった。すぐに千代ケ崎さんからLINEがきたので、どうやら渡せたらしい。
さて、余談ではあるが俺の席は廊下側最後列の位置にある。普段なら窓際最後列と並ぶ高レートな席なのだが、今俺は、絶対にそこに行きたくはない。
緋彩の目がなくなった事により、男子の目はまた殺意を持ったものに変わっている。あの中に入るのは自殺行為なんてもんじゃない。しかも俺の席のさらに後ろ、後方の入り口の小窓に張り付いている他クラスの生徒が見える。
「…………追いかけっこはしてやる。だからせめて鞄は置かせてくれ」
覚悟は決まった。俺が逆の立場なら絶対やるだろうしな、付き合ってやろうじゃないか、鞄置いたら。
「よかろう、我々とて最高の状態の貴様を潰した方が清々するわ!」
「なんでお前が頭張ってんだよ陽斗」
わーわーうるさい男子の中から出てきた陽斗に思わず言葉が出た。口調も普段と変えてノリノリだしお前周りに言ってないけど彼女いるだろ無関心でいてくれよ……!
「んー、面白そうだったし、な?」
な?じゃないんだよやっぱその爽やかスマイル腹立つな……。そんなことで親友の俺を見捨てるとは……悲しいなぁ……俺ってそんな安い存在だったのね!?。 てことで俺も仕返しするか。特大の爆弾降らせてやる。
「……なぁ、俺を殺したいやつの中に、会長派のやつもいるよなぁ?」
三年生の
そしてそこからわかるように、会長は男子からとてもモテる。
「覚えているか?最初の頃、お前達が振られた時に言われた言葉」
仰々しく、演説をするように男子に語りかける。ザワザワと男子がどよめく。ここまではよし、後は答えが出てくるか……。
「興味ない、だったよな……」
「そう!最初はそうだった。でも今は、好きな人がいるから、だ。ここにその相手がいる、と言ったら、どうする?」
どよめきがピークに達したところで、会長の彼氏である陽斗が肩を叩いてきた。
「なんだ?陽斗」
珍しく焦ったような顔をして俺に対して下手にでてくる陽斗、顔の前で手を合わせておねがいモードだ。
「なぁ、俺らって親友だよな……?」
「そりゃあもちろん」
答えると、陽斗が顔を明るくする。多分言いたかったことは、「だから俺を巻き込まないでくれ」と言ったところだろう。
だから俺は、親友ににっこり笑顔で告げる。
「もちろん一蓮托生、死ぬまで一緒だぞ♡」
目の前で陽斗がへなへなと崩れ落ちていく。ふぅ、悪役ムーブも悪くはないな!
「会長の彼氏は、ここにいる赤坂陽斗だ!」
高らかに叫んでから、俺は女子の集団の中心へ。
「千代ケ崎さんと緋彩にお願いがあるんだけど、ちょっと陽斗と一緒に走ってくるから、先生に適当に言い訳しといてくれ!」
「分かりました!」
「……ん、一限までには帰ってきて」
「助かる!」
快く了承してくれた二人には感謝しかない。男子はまだ驚きと動揺で動いてはいない。
「ほら行くぞ、早くしないと捕まる」
「元はと言えば俺がからかったせいだししょうがないか……クソ、やってやろうじゃんか、校内走り回りながら愛叫んでやる」
「気づくの遅せぇよ。てか隠してたの会長の為だったのにいいのか?」
「どっちにしろお前のせいで広がるし、叱られんのは変わらないそれなら俺のもんだって主張するね」
かー!イケメンは考え方までかっこいいな。見習いたくはないけど。俺がやったら普通に痛いヤツだし。
「ほら男子諸君、俺らをたたきつぶすんだろ?」
なぁ陽斗、煽れとは言ってねぇんだよ。めっちゃ怒ってんじゃん。
「「「「「氏ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」
「「さらばっ!」」
俺たちは全力で廊下に飛び出した。
このあと生徒指導と生徒会長に二人でこってり絞られた。追いかけてきた生徒は生徒指導の先生が独身だったので不問になった。おかしいだろそれ!
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