第130話 模擬戦?

 俺の前に七人の学園生が出てきた。

 それぞれが自己紹介をする。


 日本人は、男の子一人だけ。       竜也

 欧米系の白人の子が男女一人づつ。    ボブとアマンダ

 アジア系恐らく中国人の男の子が一人。  チェン

 妙に整った顔立ちの女の子は韓国人かな? ジウ

 浅黒い肌の南米系の男の子。       カルロス

 漆黒の肌を持つ女の子。         アルジャーナ


 みんな自信満々に前に出てきた。

 まあ、いくらランク一位って言っても子猫だからな……

 何とかなると思ったんだろう。

 

「麗奈、この子たちはどうなの? それなりに行けてる感じ?」

「うん、学園生の中では穂南ちゃんを別としてハイレベルな子たちですね」


「そうなんだ、でもまともに手合わせなんかしたら怪我しそうだし、遊び要素のある感じでいいよね?」

「何するんですか?」


 俺は穂南と麗奈に頼んでグランドに直径五メートルほどの円を描いてもらった。

 穂南に通訳してもらう。


「黒猫社長が提案したのは、七人が一度に黒猫社長にかかって行って、この輪の中から社長を出すことが出来たら、その時点で輪の中に残ってた子にプレゼントをくれるって言ってます。みんなそれでいいかな?」


 バトルロイヤルな相撲を提案してみた。

 思ったより簡単な提案に、学園生はやる気十分な感じだった。


「何か質問とかある?」


 そう聞くと、中国人っぽい男の子が手を挙げた。


「プレゼントって何が貰えるんですか?」

「うーん、そうだねミスリル製の武器に好きな属性を付与してあげようかな」


 ミスリルの流通量が増え安くなったとはいえ属性付与のミスリル武器ならまだ五千万円はする。


 学園生たちからも歓声が上がった。


「残った一人じゃなくて、黒猫社長が出た時点で残ってた全員なんですよね?」

「うんそうだよ、頑張ってね!」


 俺が土俵の真ん中に陣取ると、七人全員で俺を取り囲んだ。


「あー、相撲だから俺は武器使わないけど、みんなは好きな武器使っていいからね」


 土俵の真ん中でそう言ったが、この子たちには「ニャニャニャニャニャー」としか聞こえてない。

 穂南がそれを訳した時にはすでに一斉に俺にとびかかってきていた。


 勿論俺は素早くよけて、股の下をくぐって生徒たちの外側に出る。書かれてる線のそばで立ち止まり、右手の肉球を上にして中指の爪で『クイクイ』って挑発する。


「社長、だからそれ見えないって!」


 麗奈が外野から実況突っ込みする。

 俺を蹴りだそうとした、カルロスのキックをよけて、タイミングを崩したところに、タックルしてまず一人。


 タックルした後の着地の瞬間を狙って、ボブとアマンダが両サイドから掴みかかろうとしてきたところを、ボブの腕につかまって肩まで駆け上がった。

 そのまま俺を追いかけるように追撃してきたアマンダのパンチが、ボブの身体の上で逃げ回る俺に当たらずボブに炸裂するとボブはよろける。


 そのタイミングで後ろ足でボブの後頭部を蹴るような形で大きくジャンプ。

 弾みでボブはラインを割る。


 大きくジャンプした俺はスキルを使うのは大人げないと思ったから、ジェット噴射や操糸を使った立体起動の動きは避けてるので、一直線に飛ぶだけだ。


 土俵の中央部分でチェンがヌンチャクを出して待ち構えてた。

 俺は体を丸めて回転しながらチェンのヌンチャクに突っ込む。


『ヒュン』と風切り音が鳴って俺の身体を直撃する直前にヌンチャクに尻尾を絡ませてそのまま着地する。

 ヌンチャクを手放さなかったチェンを尻尾で振り回してヌンチャクごと投げ飛ばした。


 後四人だな。

 さすがに、もう全員が武器を取り出して構えてる。


 訓練用の木製の武器だから俺に当たったところで怪我はしないだろうけど、当てられるのは嫌だから、四人の攻撃をことごとく避けながら、隙を見つけ出し全員をタックルでラインの外に出した。


「終わりだね! また機会があったらいつでも挑戦していいから訓練頑張ってね」


 俺がそう伝えるとジウちゃんが聞いてきた。


「あの、黒猫社長さん。挑戦して勝てればいつでもミスリル武器ってもらえるんですか?」

「うん、それでいいよ。暇がある時に月に一度は顔を出すようにするからね」


 他の子たちも聞いてくる。


「今日参加しなかったメンバーも次は挑戦していいの?」

「勿論!」


「えーと、麗奈先生や咲先生だったら黒猫社長に勝てるんですか?」

「俺がスキル使わない条件で咲や麗奈が何でもありなら、さすがに無理だね」


 そう言ってしまうと学園生たちが見たいと言い出したので、俺が麗奈と咲を相手にスキルなしで、咲たちは何でもありって言うルールで同じように土俵で戦う事になった。


「社長、本気でいいんですか?」

「いいよー」


「TBさすがに今回のルールじゃ負けられないから手加減しないよ」

「咲、殺る気満々だね……」


 試合開始と同時に咲が飛漸を弾幕の様に飛ばしてきて、麗奈がサンダーレインを発動した。

 手加減なさすぎだ……


 土俵全体に振りそそぐ雷に咲はパリィを発動して避ける。

 ……魔法ってパリィ出来るもんなんだな。


 そう思いながらもスキルなしじゃ逃げ場がないから、俺の身体は感電した。 

 状態異常耐性があるから麻痺状態にこそならないが、さすがにビリビリ感はある。


 そこに咲が剣技のボルテックスソードを放ってきた。

 俺に水属性の竜巻が襲い掛かって上空に巻き上げる。

 そこを、麗奈がボーガンを取り出して狙ってきた。


(ヤバッオリハルコンの矢とか使うなし……)


 さすがに当たると痛いじゃすまないので、操糸スキルを発動して立体起動で避けた。

 ルール違反だから俺の負けだ。


「無理!」


 そう叫んで着地した。

 だが、ド派手な戦闘は学園生たちには、とっても受けた。


 咲たちの本気を見た学園生たちは憧れの眼差まなざしで見ていた。

 穂南が「TB社長の反則負け!」って宣言して模擬線は終了する。


 今日、俺と対戦した七人で代々木ダンジョンにも通ってるそうで将来性抜群な未来のシーカー達を頼もしく感じながら学園を後にした。

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