第129話 彩とお話

 モンスターコアの摂取を発表したことにより、世界中で大きな反響を呼んだがその中でもっとも大きな恩恵を受けた彩とDキューブの事務所で話していた。


「彩、何段階目になってるの?」

「えーとね、身体強化、DEX強化、INT強化、STR強化、VIT強化、AGI強化の順番で覚えたから今が六段階目ね、勿論効果は重複してるよ。モンスターのゴブリンに置き換えるとゴブリン、ホブゴブリン、ソルジャー、ジェネラル、ロード、キングだと思うわ」


「えーとNDFの隊員たちってみんなゴブリン系統に進化しちゃったの?」

「実働部隊は全員ゴブリンね事務型の男性はスライムコアの摂取をした人も一定数居るよ」


「NDFって何人体勢になったんだっけ?」

「今は総数で五万人を超えたところね。スキル所持者に限定すれば三万人ってとこね」


「凄いな。大体のところでどんな感じで進化したかわかる?」

「ほぼ間違いなく十人で三段階、百人で四段階、千人で五段階、一万人で六段階だよ」


「なるほどねぇ、おいらはスライムが三段階、ゴブリンが四段階、マウスが四段階、ウルフが四段階だね」

「結構バラけてるんだね」


「うん、意外にウルフの索敵能力を求める隊員が多かったね。ダンジョンシティとか都市の開放を進めるには重要度が高いから」

「あ、なるほどね。NDFでも新規でスキル保持者になった隊員たちにウルフを勧めるようにしなくちゃ」


「でも彩の様に配下を五万人とか抱えるスキル保持者って中々いないから、単純なステータスだと麗奈を超えちゃったよな」

「咲と麗奈に負けっぱなしっていう訳にもいかないからね。海外組はどうなの? 組織は大きいから中国とか百万人の配下とかでも無理じゃなくない?」


「マーに聞いたけど、あの国は年功序列だから千人以上の部下を抱えるような立場の人は現場で狩りなんてしないんだって」

「そうなんだ、勿体ないね」


「マイケルでも直属の部下って十二人だけだったらしいし、そこはジェフリーとデビットの進言で一万人単位の部下を持つ立場に変更するみたいだけどね」

「軍は偉くなっちゃうと中々自分が動くことを許してもらえなくなるからね」


「彩はどうなんだい? 狩りの時間は取れるの?」

「私は結構自由だよ、作戦系統は副官たちに任せてるから好きなように狩りが出来るよ。島長官に頼まれたテレビ出演とかだけはNDFの司令官として振舞ってるけど、それ以外は個人の狩りの時間を優先する感じね」


「そっか、上司が島長官でよかったな」

「もし体制が変わったりしたら、Dキューブにお世話になるかもね」


「でも、そうすると三段階目以降の能力って消えちゃわない?」

「あ……どうだろう。怖くて実験できないよね」


「そういえばさ昨日話題になってたスレッド見た?」

「あー見たわよ、魔王軍とかDキューブとかのコテハンの書き込みのでしょ? あれ本物なの?」


「Dキューブ攻略班はポールだって、本人が言ってたから」

「一般人が人質状態になることを思えば、強硬手段は難しいわね」


「うん、GBのジェームズ中佐とも話したけど聖夜達が約束を守って、ロンドンスタンピードを抑えてくれてる以上は、まだ放置するみたいだよ。GBも六次ダンジョンまであるから一か所を任せれるだけでもかなり違うしね。実際ロンドンの街はスタンピード被害が大きすぎて取り戻しても復興には手が付けれないから、遷都をする方向らしいしね。後は女王陛下の許可待ちだって」

「そうなのね。日本はまだ恵まれてる方なのか……」


「彩、次のスタンピードの時にね、試したい事があるんだよね」

「何?」


「聖夜達はモンスターを操ってると思うんだよね。恐らく同系統のモンスターたちは上位の存在に逆らえない的なルールがあると思うんだ」

「へーそうなんだ。って事は私がゴブリンを支配できるかも?」


「うん、それが成功したらだけど、今の彩は一気に聖夜よりも上位の存在になってると思うんだよね。聖夜と話が出来ないか試してほしいんだ」

「なるほどね。私が国外に出るのは難しいから島長官と交渉してもらう事にはなると思うよ?」


「うん。それは分かってる。とりあえずは次のスタンピードでゴブリンの支配が出来るかどうかだね」

「でも、そうすると私がスタンピードの撃退できなくなるけど、どうするの?」


「彩の担当は代々木だよね? 俺が代々木をやるから、彩は一層でスタンピードの対応してもらってもいいかな?」

「解ったわ」


 彩との話を終えると少し時間があったので、本部の隣にできたシーカースクールに立ち寄ってみた。


 祖父ちゃんは校長先生だから勿論いるけど実技の教官もやってるから結構楽しそうだ。


「あー社長、もう彩さんとのデート終わったんですか?」

「デートじゃねぇし……」


「邪魔しちゃ悪いと思って咲と二人で剣術の実技講師やってましたー」

「麗奈も咲も強さが異常だから、学園生だと相手にならないだろう?」


「それが、そうでもないんですよ。結構普通に打ち合える子たちが混ざってますね」

「まじ? どんな子たちなんだ見てみたいな」


 俺がそう言うと麗奈が『パンパン』と大きく手を叩いて剣術の実技の授業を受けていた子たちを振り返らせた。


「みんなー、世界ランク一位の黒猫社長が、みんなの授業を見に来てるよー。戦ってみたい子が居たら希望してもいいからね!」

「おい……麗奈。無茶ぶりすぎだろ」


 俺の姿を見た学園生たちが『ワーワー』と騒ぎながら近寄ってきた。

 咲が『しょうがないなー』的な表情で学園生たちを俺の前に並ばせる。

 祖父ちゃんも一緒に居たのですぐに静かにはなった。


 生徒の中から穂南が前に出てきて俺の通訳を買って出る。


「お兄ちゃん……じゃなかった、黒猫社長の通訳は私がするね!」


 もう、この頃には俺の正体ってあまり秘密って感じでも無くなっていた。

 暴露系のVチューバーがネタで取り上げてたしな……

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