第125話 自宅完成!

「やっと家に帰って来たね」

「せっかく綺麗な新築なんだから、散らかさないようにね」


「はーい、お祖父ちゃんたちの家も凄い立派だよね」

「お祖母ちゃんと二人だけだから、小さくていいって言ってたんだけどDキューブの専務さんの家がこじんまりっていう訳にもいかないしね。ダンジョンシーカースクールの校長先生でもあるし」


 ようやく北原家の敷地に新しい家が完成して、引っ越しを終えた。

 隣には修三夫婦の家も完成して新生活が始まった。

 国際的な基準に合わせた九月から新学年が始まるこの学校には、世界中からダンジョンシーカーを目指す有望な若者たちが入学した。


「美咲たちも、みんなシーカースクールに転校したし、全国から結構な数が集まってるからね」

「穂南より強い子とかいるの?」


「うーん、どうだろうね。私はお兄ちゃんの作った装備品使ってるから、何でもありなら負けないと思うけど、Sクラスの子たちなら装備を外した状態だと、そんなに変わらないかもね」

「希望すればNDF、Dキューブ、DFTのどれかには就職が出来るから、モチベーションが高いのかな?」


「圧倒的にDキューブ攻略班の人気が高いけどね。だって半分以上外国人の子たちだし」

「お給料もいいしね、穂南は卒業後はどうするの?」


「私は就職はいいかな? Dキューブに就職とかしなくても言語理解の魔石作るだけで結構いいお小遣いになるし、これ以上時間が無くなったら何も出来ないからね」

「お金に困ることは無いけど、一応世間体っていうか就職はした方がいいと思うよ?」


「じゃぁシーカースクールの教官でも希望しようかな?」

「それはいいわね、お祖父ちゃんもお祖母ちゃんもいるし、私も安心できるわ」


「お母さんはどうするの?」

「私は今のままで十分よ。相変わらずお母さんと同じ系統のスキルを持った人が出ていないから、Dキューブでの臨床試験だけでも結構忙しいからね。狩りもそれなりにしないと、若さを保てないしスキルレベルも上げなくちゃいけないし、毎日が大忙しよ」


「後は、お兄ちゃんが人間の姿に戻れたら、本当に嬉しいんだけどね」

「進は今のままの方が幸せかもしれないわよ? もし人間に戻ったら、咲ちゃんか麗奈ちゃんか彩ちゃんを選ばなきゃいけないでしょ? 穂南にだって抱っこしてもらえなくなるし」


「あー、それありそうだねー。お兄ちゃんの性格だと誰かを選べないかもねー。抱っこは私がしてもらう方になら、なれるかな?」


◇◆◇◆


 福岡ダンジョンシティーの再開発もようやく話がまとまり着工された。

 世界各国でもDキューブが設立した復興支援基金を活用して一次ダンジョン出現地=首都の復興か、首都移転のどちらかを選択して取り組み始めている。


 この半年の間は日本中でダンジョンシーカーの数が激増したおかげで、モンスターによる被害もずいぶんと減った。

 最近の日本を含む先進国でのトレンドは、ダンジョンによる若返り効果である。


 Dキューブ社の役員である北原家一同が、ダンジョンシーカースクールの発表時にテレビ取材を受けて、その容姿と実年齢が日本中の話題に上がった。


 校長である修三夫妻が実年齢七十五歳にもかかわらず四十代前半の容姿のナイスミドルであり、その娘である洋子は四十九歳になっているのに、二十台の容姿を保っていたからだ。


 当然、ダンジョンで活動を始める以前の写真も用意され、はっきりとした若返り効果をアピールしたところ三十代以上の女性探索者が世界中で激増した。


 この世界がダンジョンと戦う事を受け入れ始めていた。


◇◆◇◆


 人口ランキングで150位のTL(東ティモール)のディリダンジョン四十一層の攻略が二週目に突入した時に下層へ通じる階段が現れた。


 攻略部隊を指揮していたポールがTBに連絡をする。


「TB、ディリ四十一層で階段が現れたが神殿は現れなかった。どうやら次の攻略場所はここじゃなかったようだ」

「ニャニャ? 今、代々木に居るからそっちにダンジョン転移で移動するね」


 ポールからの連絡を受けて、麗奈と咲を連れディリダンジョン四十層へと転移した。


「社長、どこかのダンジョンにボス部屋が出現しているんですよね?」

「そのはずなんだけど、今回のTLからは二次ダンジョン出現国だから、ルールが違っているのかもしれないね」


「ねえTB、それなら可能性は東ティモールの二次ダンジョンなんじゃないかしら?」

「ふむ、咲の言う通りかもしれないね。ポールと合流して向かってみよう」


 ポールのいる四十一層から下へ降りる階段の場所まで行くと、十二人のポール班が待機していた。


「ポールだけおいらのパーティに入って」

「了解だTB」


「他のメンバーは、このまま外に出て一時休暇でいいからね。ホテルでゆっくりしてて」

「ありがとうございますボス」


 最近は付与バッグの性能が上がったので、穂南の作る言語理解の魔石が一週間は効果が続くので、攻略班の連中も普通に使っている。


 母国語で普通にしゃべっても誰とでも会話が成立するから精神的にずいぶん楽なんだってさ。

 

 穂南がお小遣い稼ぎで作って売り出してるけど、結構な売れ行きみたいだよ。

 国際会議ではマストアイテムになってるほどにね。


 一日百個ほど作ってるらしいけど、全部売れてるって言ってたな。

 一個一万円で売ってるから、純利益でも七十万円くらいはあるらしい。

 日給七十万円のJKか、ヤバいね……

 それでも、俺が家にいるときは買い物に連れてけって言われて、たかられるんだよな……

 可愛いから許すが!


 ポールを加えた四人で四十層のリフトからダンジョン転移を発動する。

 行先は『2150』この国のアタウロ島に存在する二次ダンジョン『アタウロダンジョン』だ。


 凄く人口密度の低い島だから四十層辺りに人が来ることなんかまず無いダンジョンだろうね。

 逆に麗奈や咲がコアを飲むのに使うには便利が良いかもしれない。


 四十一層に降りて出現しているはずの階段に向けて進むと、ボス部屋が現れていた。


「ビンゴだね。さすが咲!」

「普通にみんな同じこと考えるでしょ……」


「って事は、こっから先は攻略も人口順位121位のKW(クウェート)までは二次ダンジョンで展開しようね」

「了解だTB」


「さぁて、さっさと片付けようか!」

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