第123話 レイキャビク終了!
俺は十層についてくと神殿から咲に連絡を入れた。
『咲、今はどこで狩りしてるの?』
『八層だよ、麗奈もこの階層に居るよ』
『OK、今から行くね』
そう伝えると上の階層に向かって走った。
一応、口にはダガーナイフを咥えたままだ。
この辺りの階層であれば、ほとんどの敵はエンチャントウインドで風魔法を纏わせた攻撃で一撃で屠ることが出来る。
ドロップした魔石やポーションを異次元ボックスに収納しながら八層に辿り着く。
気配探知を発動して咲と麗奈の位置を特定して向かった。
レイキャビクダンジョンではISは軍隊を持っていないために警察組織がダンジョンの防衛も行っている。
現在ISのダンジョン機動警察隊は十五層から十八層辺りでの訓練を行っているそうだ。
今回のボス部屋の攻略が終われば、島国でもあるアイスランドは凄く安全度が高くなるから、観光スポットとしても人気が出るだろうね。
「調子はどう?」
「この階層だから、狩りは順調だけど他のモンスターのコアも実験のためも兼ねて全部飲んでるから結構大変ね」
「そうなんだ、聖夜たちの進化度合いから考えたら、その辺りも間違った選択ではなさそうだね」
「社長! 私覚えちゃいましたよ【雷魔法】」
「お、早かったな。この階層だと全部エレクトリックマウスだね。何匹で覚えたか数えた?」
「勿論です! 丁度二百匹分のコアを飲んだところで覚えました」
「そうなんだ。やっぱり上位種だと短縮できるっていう仮説は正しかったみたいだね」
「咲は成長度合いはどんな感じ?」
「身体強化がレベル3、DEX強化がレベル2まだ上がったわね。剣術はレベル5だよ」
「強くなったね。俺も頑張って異次元ボックスのレベル上げないとな」
そんな感じでレイキャビクで三日ほど過ごした。
勿論、ダンジョンから出れば温泉を堪能したり、夜空に浮かぶオーロラを眺めたりしながらだ。
ビキニの水着ではしゃぐ咲と麗奈の入浴姿は中々眼福だったと言っておこう。抱っこされながら温泉につかる俺も、普段以上の密着感でうっとりできたしね!
三日目の深夜にキムから連絡が入った。
「ボス部屋が出現した。すぐに攻略に入るか?」
「そうだね、他の班の連中も一緒に連れて行こう。経験を積ませるのは大事だからね」
「俺たちはボス部屋の前で休憩してるな」
「了解」
すぐに他の三班へ連絡を入れて、ボス部屋の攻略に入る事を伝える。
さすがに統率が取れていて十五分後には全員が揃う。
ダンジョンリフトで次々と二十層へと移動して待機していたキムたちに合流した。
俺が話す言葉を同時通訳で全員に麗奈が伝える。
一応四班のリーダーたちには言語理解の魔石も使わせた。
「全員、所持品を確認してね。一番大事なのはエスケープの魔石! これは各パーティーが確実に一個持っていてよ。エスケープを使う人は常に余裕が持てるように、前衛はしないでね! 後は、撤退が必要な時は迷わず撤退する事。突入したらまずは敵の鑑定をして、俺が方針を決めるから勝手に攻撃は始めないでね? 後は俺から出す指示によって行動するように!」
「「「「ラジャー」」」」
現れたボス部屋特有の少し豪華な神殿へと突入した。
ステージは火山だった。
激しく噴火していて上空は黒煙で覆われている。
島の様になってて周りは海で囲まれてる。
溶岩が海に飛び込むと水蒸気が大きく上がって視界が遮られる。
「熱いなー、みんな溶岩に気を付けてね。ボスはどこだろう」
「社長、このステージだと火の鳥とか火竜とかサラマンダーとかですかね?」
「フェニックスはこの間、代々木十五層で中ボスのレアボスで出たから、ドラゴンかな?」
俺たちはみんな火口からボスが現れると思って火山の噴火口に視線が集まっていた。
しかし現れたのは海からだった。
水蒸気が激しく上がった中から、馬鹿でかくて真っ赤なクジラが大きく飛び上がった。
サイズは百メートルクラスだ……
後方からいきなり現れた巨体のジャンプにより十メートルクラスの高波が発生して総勢五十人のメンバーの半分が波にさらわれた。
ヤバイな……
「麗奈、鑑定を急いで。キムとマーは波にさらわれたメンバーの救出に集中して」
次の瞬間真っ赤なクジラが大きく口を広げて海水ごと波にさらわれたメンバーを飲み込み始めた。
「あーやばいね。麗奈と咲以外は全員エスケープ使って」
「「「「「ラジャー」」」」」
エスケープならきっと飲み込まれたメンバーも一緒に脱出できるはずだ。
「あれ? マーなんで脱出してないの?」
俺の周りにはマーだけがまだ残っていた。
「ボスやばい、俺のパーティは後衛のスミスにエスケープ持たせてたんだ。俺しかここに残ってないってことは、五人がまだ腹の中だ」
「なんだって? ヤバイな胃液が強烈そうだから急がないと溶かされちゃう」
麗奈が鑑定を済ませて伝えてきた。
【レッドデビルホエール】 レベル63
スキル
跳躍
外部装甲(物理攻撃無効)
耐熱装甲(炎、冷気に耐性)
弱点
雷属性
「社長、一応弱点は雷みたいですけど、あの巨体にどこまで有効かわかんないですね」
一瞬考えたが、他に策は無いな……
「マー、次にあいつが飛び上がるタイミングでおいらを口の中に投げて」
「TB大丈夫なのか?」
「急がないと五人が溶かされちゃうからね」
そう言った直後にクジラが再び飛び上がった。
マーが二キログラムも無い俺の身体を勢いよくクジラの口めがけて放り投げた。
「ああー、待って社長ーーー……」
麗奈の声が聞こえたが遅かった。
咲が「どうしたの麗奈?」って聞いてきた。
「だって、今マーさんにエスケープの魔石渡して発動すればいいだけだったじゃん」
「「「あっ……」」」
とりあえず麗奈がエスケープの魔石をマーに渡してすぐに発動させた。
俺は空中から更にジェット噴射を使ってクジラの口の中に飛び込んだ。
五人のメンバーが口の奥にある髭の様なところに絡みつかれていた。
どうやら意識を失ってるみたいだ。
少しずつ奥に飲み込まれていってる。
「大量の海水と一緒に飲み込まれたからしょうがないか……」
そう思った瞬間に、五人の姿が消えた。
「エスケープが発動したか、よかった……」
その次の瞬間今度は俺が髭に巻き付かれた。
「ニャニャニャ」
口に咥えたオリハルコンエッジに雷を纏わせてすぐに髭を刈り取る。
自由になったから、そのまま喉のあたりまで進んで、所かまわず切り刻んだ。
気道を見つけて、そこから鼻腔を目指して脳に向かった。
切り刻みながら、魔法も乱れ打ちする。
五分ほど暴れまわったら、巨大クジラの動きが止まった。
「図体のわりに強くはなかったな」
クジラの身体が黒い霧に還元されると俺は海中に放り出された。
溶岩が次々飛び込んできてたので、水中はあったかい。
【眷属召喚】トリトン!
「キュイキュイ」って言いながらいきなり水中に現れたトリトンが俺を鼻先でつつきあげるように一気に海面まで上昇した。
「トリトンありがとう。もう戦闘は終わってるから用事は俺を陸地まで連れてくだけでいいよ」
「なーんだ。解ったー」
トリトンの背中に乗って陸地まで連れて行ってもらう。
「社長、大丈夫ですか?」
「うん、まあ怪我の功名っていうか、きっと外から倒すのは凄い難しかったと思うから、良かったんじゃない?」
「トリトンも帰っていいからねーありがとー」
「もっと活躍させてよね」
と言い残してトリトンは帰って行った。
足元にレッドデビルホエールのコアが転がっていた。
いつものように『ツルンゴクン』と飲み込む。
『【レッドデビルホエール】のコアを吸収しました。【耐熱装甲】スキルを獲得しました』
『ダンジョンナンバー1170クリア。ダンジョンマスターとなるか消滅させることを選べます』
今回もネームドでは無かったか……
「あ、異次元ボックスのレベルが上がった!」
「社長、マジですか? 何が出来るようになったんですか?」
「麗奈、ちょっとまって。先にダンジョンマスターになってからゆっくり確かめるから」
「はーい」
ダンジョンマスターを選ぶと噴火の止まった火口近辺に飛ばされた。
「熱!!!」
これ……耐熱装甲取得してなかったら蒸発してたかも知れねえな……
もう少し注意深く行動しないとワンミスで死ねる要素が増えてきたなぁ
固有種配置で【レッドデビルホエール】を配置してダンジョン内転移で一層に戻る。
ちゃんと咲と麗奈も一緒に戻っていた。
一層の入り口に他のメンバーもみんな居て、クジラに飲み込まれた連中が治療を受けていた。
幸い重傷者はいないようだ。
「さぁレイキャビクも終わりだ。本部に戻ろう」
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