第119話 福岡復興の話
今日のモンスター退治で出たドロップ品は全部NDFに譲った。
NDFは国のダンジョン攻略隊だから、ドロップ品は国庫への収入となるけど、自衛隊の時とは違って納品額に応じた賞与査定が付くそうだ。
収入になると分ればやる気も出るからな。
自衛隊時代はまったく収入には繋がらなかったからモチベーションも違うだろう。
「TBありがとうな。みんな喜んでたぞ」
「ああ、それくらいは構わないよ。そろそろ祖父ちゃん迎えに行くからよろしくな」
「ああ了解だ」
大名の祖父ちゃんの家に戻ると結構な大荷物が集められていた。
アルバムだけでも五十冊くらいあった。
穂南とお袋がアルバムを広げて眺めだしたから全然役に立たなかったと祖母ちゃんがチクリと刺していた。
「だってぇ、お母さんの若いころの写真とか超レアなんだもん」
「まあ別にいいけどな」
荷物を纏めて異次元ボックスに放り込んだ。
さすがに家具とかはそのまま置いていくことにしたみたいだけど、それでも4トントラック一台分くらいはあったからな。
「祖父ちゃん。今から福岡市役所の仮庁舎に行くよ」
「おう、仕事もしなきゃならんな」
みんなで装甲バスに乗り込んでももち浜に向かった。
連絡は入れてあったので、すぐに会議室に案内された。
本当なら穂南はまだ高校生だしDキューブの社員でもないから会議室には入れないところだったけど、言語理解スキルの所持者という事で俺の通訳として同席してもらった。
「福岡へようこそ。市長の麻生です」
「Dキューブの専務の北原修三です」
「常務の北原洋子です」
「専務の秘書の北原幸子です」
「ニャニャニャ」
「えーと社長のTBですって言っています。私は社長の通訳の北原穂南です」
この後は基本俺が喋るのを穂南がみんなに伝える形で進行した。
「今日天神の街をNDFの方と一緒に回ってきました。東京の代々木や大阪の難波のダンジョンシティーと比べてもあふれ出ているモンスターが明らかに多いことを確認しました」
「福岡市としては一日も早く市の中心部であるあの土地を復興して近隣地域の危険も排除したいのですが具体的にDキューブさん側はどのように着手したいと考えられていますか?」
「建物の状況も確認しましたがビルは全て危険で立ち入りが出来る状況ではありませんでした。できれば所有している法人か個人に取り壊しをしていただく事を希望しますが、取り壊し業者を入れるにしてもモンスターが普通にいる地域ですので、ガードを雇い入れたりしなければなりませんし、解体費用も当然高額になります。しかし足並みをそろえて街全体の解体工事をしなければ、モンスターの排除が根本的にできないので意味がありません」
「おっしゃる意味は解りますがそれだと、どうすればいいと思われているんですか?」
「自社で解体工事の費用を出していただける物件以外は一括して所有権の放棄をお願いします。一度福岡市か国の所有にしていただいてそれをDキューブが一括購入した上で復興に取り組みます。復興が終了すれば適正な価格で売却をしたいと思います」
「所有権の放棄ですか? それに応じてもらえる可能性は低いのではないでしょうか?」
「所有者責任を少し厳しく設定していただくしかありません。所有したままでその物件に隠れていたモンスターが原因で二次被害に至った場合は賠償責任があるとかを市の条例として定めて、所有する事に利点が無いと思ってもらうしかありませんね。Dキューブが引き受ける条件は地域一括で取り組めること、その一点だけです。そうでなければ責任が持てませんから」
「そうですか、結構厳しい条件ですね。国とも協議してお返事を差し上げたいと思います」
「よろしくお願いします。今後の協議はDキューブの吉田が担当させていただきます。私たちが顔を出すのは契約の調印の時となりますので、またお会いできることを願っています」
みんなで福岡市役所の仮庁舎を出た後で祖父ちゃんが俺に話しかけてきた。
「できれば昔からこの土地に住んできた人間の土地は復興後に返して上げれるようしたいもんじゃな」
「祖父ちゃん。俺もそれは正しい考えだと思うよ。でも今それを言っちゃうと足並みを乱す連中が湧き出すからな。反社とかの」
「そういう心配もあるんじゃな」
「今は俺たちにできるのは、ダンジョンを攻略して二度とモンスターが溢れださないような状態にすることだと思うから、祖父ちゃんも人材育成頑張ってね」
「分かった。それはまかされよう」
福岡の街では今は観光という雰囲気でもなかったので、その日のうちに再び飛行機に乗り羽田へと戻った。
事務所に戻ると咲と彩がお茶をしていたので話をした。
「彩、福岡で俺たちを案内してくれたの長尾だったけど彩の指示?」
「うん、そうだよ。懐かしがるかなって思って頼んでおいたの」
「そっか、確かに懐かしかったよありがとう。咲は今日はなにしてたの?」
「うん。彩さんと二人でずっとゴブリン狩ってたよ。おかげで二人ともレベル2まで上げれたからDEX強化手に入れたよ」
「そっか、頑張ったね。その次の段階はどうなるのかが俺は分からないんだけど、聖夜たちは四段階まで進化してるようだから、何か続きがありそうなんだよね」
「TBが分からないこともあるんだね」
「その代わり俺はマスターランクが上がってるからこれは聖夜たちにはまねができないはずだしね」
「TBは一次ダンジョンは何層まであると思ってるの?」
「恐らく六百層を超えると思ってる。それに対処するためには実力も人数もまだまだ全然足らないよ」
「そっか、私はNDFの組織を拡大して日本中をダンジョンの脅威から守って見せるから協力頼むよ」
「そういえば麗奈はまだ帰って来てないの?」
「うん、今日は泊ってくるって言ってたよ」
「そうなんだ。麗奈の祖父ちゃんにも一度会ってみたいな」
「私は会ったことあるよ、結構ファンキーで面白い人だよ」
「そうなのか? 昨日の麗奈の話だと危険なにおいしかしなかったけどな」
「明日一緒に麗奈を迎えに行ってみる?」
「いいかもな」
「じゃぁ麗奈に連絡入れておくね」
咲たちと別れて、穂南のベッドへと戻って行った。
今日も穂南のおっぱい枕でぐっすり寝よう。
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