第115話 松田の悩み

【DFT】に到着すると松田を呼んでもらう。

 松田には言語理解の魔石を渡してあるので会話はそのまま可能だ。


「どうだ松田。異次元ボックスの使い勝手は?」

「ああ、とりあえずはまだレベルを上げれてないから合成が出来てないんだ」


「サボってんな。お前も攻略班のメンバーだったんだから少しは気合入れて頑張れよ。そんなんじゃ彩に相手されないぞ」

「それを言われると耳が痛いな。一応俺は【DFT】の部長だから今は仕事が立て込んでんだよ。日本にある六か所のダンジョンの取引所の開設が終わるまでは、ちょっと忙しいんだ」


「へーちゃんと仕事してるんだな」

「そういえばTB、話は少し変わるんだが俺の溶解液なんだが例えばだ女性とHなことしたときとか大丈夫なのか?」


「あ……考えてもみなかった。どうなんだろ、殺人犯になる前に気づいてよかったな松田。因みに一人では試してみたのか?」

「いや、何故かモンスターコアを摂取してから、そんな気分にならないんだ」


「そうなのか。俺は子猫だからまったく性欲は無いんだけどな」


 俺がそう言うと麗奈が突っ込んできた。


「社長、おっぱいとか下着とか大好きじゃないですか?」

「麗奈……それは性欲とは別の本能的なもんだから……」


「そうなんですか? でも、それって男性として終わってますよね」


 その発言で松田がその場にがっくりと膝をついた。

 俺も胸にも少し刺さったぜ……

 今度Dキューブの研究室でデビットにも協力してもらって調べなきゃならないな。



 【DFT】を出ると本部に向かった。

 文部科学省から出向の浅田さんと、外務省から出向の増田さんが声をかけてきた。


「社長とCEOが一緒なら都合がいいです。少し話を聞いておいていただけますか?」

「どんな話でしょうか?」


 麗奈はCEOではあるが、ここでは出向組のほうが年齢も上だし、全員がキャリア官僚だからとても能力の高い人たちであることを、ちゃんと認めているので話し方は丁寧だ。

 

探索者シーカーの養成学校の話です」

「さっき常務っていうか社長のお母さんから少し伺いました。社長も修三さんがOKであれば問題ないと仰られてましたよ」


「話が早くて助かります。養成学校はこの大学の敷地に隣接している付属高校の土地を建物ごと政府が無償貸与してくれるそうです」

「それなら結構早くスタートできそうですね」


「一応スライム対策の塗料や柱の補強があるので、そのままでは使えませんけど、改装費も補助金が半額出るはずです」

「結構気前いいですよね日本政府も。でも学校っていうことは年齢の基準とかあるんですか?」


「中学卒業以上で入学できる高等教育も行う課程と十八歳以上を対象とした戦闘に特化した課程を併設します。戦闘特化の課程は決まった期間も設定せずに様々なカリキュラムを用意して、学びたい部分に特化して教える形ですね。戦闘訓練は【NDF】からも講師を派遣してもらえるそうですよ」

「授業は有料?」


「高等教育課程は全額政府の援助で、一般課程は半額援助だそうです」

「設立に必要な人員は政府から紹介していただけるのでしょうか?」


「はい、全国のダンジョンシティがあった場所に所在した学校の教師が沢山いますから募集をかければ百倍ほどの倍率になると予想されます」

「それって生徒じゃなくて先生が?」


「はい、そうです。生徒は海外からの生徒ですと英語か日本語でコミュニケーションが取れることが条件で、各国からの推薦で受け入れます。日本人の場合ですとステータスカード所持者は優先されますけど、基本は面接での合否判定になります」

「それでもすごい数が応募してきそうですよね」


「そうですね……学園の運営に関しては人員の採用を含めてこちらで進行させていただいてもよろしいでしょうか?」

「任せますのでお願いします」


 そこまで話すと国土交通省から出向して来ている二人が話に加わった。


「話は変わりますけど、今日本で一番被害が大きい都市はどこかお分かりですか?」

「えーと……福岡かな?」


「はい、その通りです。福岡はダンジョンを中心に十キロメートルの範囲内では生活困難地域になっていて、ほとんどの建物が基礎部分をスライムに溶解されていますので建物の出入りすら出来ません。これをDキューブで請け負って復興出来ないかと、政府からの要望が来ていますが、どう判断されますか?」


 丁度行こうと思ってたし、爺ちゃんたちと下見に行こうかな?


「条件とかあるんですか?」

「今回の被害で持ち主の個人や会社が自力で資金を出せるところはほとんどありません。勿論土地の価値自体が百分の一にまで下落して、それでも態々今の福岡の土地を買う人もいません。政府が公示を出して所有者の負担で建物を溶解液対応物件に改装するか所有権の放棄を求めます。そこで放棄された物件をDキューブで取得して復興に手を付けようと思います」


「いいんじゃないかな? その件も進めておいてね。俺も一度現地を見に行きたいし」


 話題的にタイムリーと言えばそうだけど、思い入れのある土地を手放さなければならないのも辛いだろうな。

 でも、地下鉄とかも危険だろうし、安全面を考えれば全面的にスクラップアンドビルドで取り組むしかないのかもね。

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