第110話 秘密の実験

「TB、それじゃよろしく頼む」

『ジェフリー、ゴブリンで良いんだな?』


「ああ、ファーストスキルが身体強化ならそれが一番いいだろ? 異次元ボックスは欲しいけど、小便が川か海かダンジョン内でないと出来なくなるのは、『人間としてどう?』と言わざるを得ないからな」

「それじゃぁ狩るよ。倒して十秒以内じゃないと消えちゃうから気を付けてね」


「了解だ」


 俺が、二層で素早くゴブリンを仕留めて、喉ぼとけの場所にある、コアを取り出しジェフリーに渡した。


 一瞬コアを見つめて手が止まったが…… 次の瞬間には『ツルン』と音を立ててコアを飲み込んだ。


 一瞬黒い霧がジェフリーを覆った。


「駄目だ失敗か……」


 その場に居た他の四人はそう思ったが、霧が晴れた後にはジェフリーがちゃんと人間の姿で立っていた。


「TB成功の様だ。メッセージも聞こえた」

「おめでとう。ジェフリー。でもさ今黒い霧に包まれたよね? 恐らくジェフリーがもし死んだ時は、体はモンスターと同じように消えちゃうよ……」


「そうか、そうなら俺は既にこの見た目であっても立派にモンスターって事なのか……」

「だが、身体強化の能力は実際凄く強力だから、死んだ後の事とかあんまり考える必要なく無いか?」


「デビット他人事だと思って、楽しんでるだろ?」

「勿論だ。だが成功するって解ったなら俺も獲得しよう。何にするのが良いかな?」


『デビットちょっと待って、一応なんだけどこのまま他の魔物のコアを取得して、同じように獲得できるのかを確認してからの方が良いと思う。色んな種類のコアを獲得できるのは、俺だけの可能性が高いんだよ』

「何故そう思う?」


『衛星画像解析でロンドンの街の中を撮影したデータでは。恐らく聖夜は今の時点で。ゴブリンジェネラルになっているんだよね』

「そうだなUSが解析した情報ではロンドンの魔王軍のリーダーは、ゴブリンジェネラルだと判断している」


『ジェネラル迄上がろうと思えば、三回はランクアップが必要だと思うんだよね、実際まだダンジョンでは通常モンスターとしてジェネラルは確認されて無いから』

「なる程な。現状ではホブゴブリンまでだったかな?」


『スキルをね、次の段階まで上昇させるのに、ゴブリンの場合ランク2スキルで二百個必要だったんだよね。そして俺でさえランク3スキルはまだ獲得してないんだよ。聖夜がジェネラルになる為には単純に考えたらゴブリンコアだと200万個くらい必要だと思うんだ。ホブゴブリンコアだとしても2万個くらいだよ? そんなに同種のコアを飲み込めるわけないよね?』

「確かにな」


『それでも、聖夜は実際に成長してる所を見ると、最初に成長した形態に進化系統が固定されるんじゃないかと思ってさ』

「TB。猫なのに難しいこと考えるんだな」


『今更それ言う?』

「よし取り敢えず俺が、他の魔物のコアを飲み込んでみて、そのスキルが覚えれ無かったら、TBの仮説が正しい可能性が高いな。進化系統が固定されるなら、最初に飲み込むモンスターコアの種類は、相当大事だし検証は大事だ」


 ジェフリーの言葉で取り敢えずデビットは思いとどまったが、麗奈がここで中々な意見を放った……


「社長! はい! ちょっといいですか!!」

『どうした麗奈』


「社長この間本社で放尿プレー楽しみながら新素材開発したじゃないですか? 溶けない系塗料。あれをトイレに使えばスライムでも問題無く無いですか? それなら異次元ボックスもゲット出来ますよ?」

『日本中のトイレがそうならいいけど、家の外では絶対トイレに行かないとか出来る? それに別に俺は放尿プレーを楽しんだんじゃないし……』


「そっか……でも異次元ボックスの利点と比べたら、スライム系変異は大流行しそうですね」

『かもしれないな……でもなんか落とし穴ありそうだなぁ』


 取り敢えず、ジェフリーに三層まで降りて貰って、今度はグレーウルフのコアを飲んでもらうと、やはりと言うかウルフのスキルは獲得できなかった。


『やっぱりそうか。後はこの情報を流すかどうかだけど、一応日本は島長官に報告するけど、USはどうするの?』

「内容が内容だけに、カール大統領だな」


『そのうち誰かが気付きそうだし一応他の人には内緒にしておこう。麗奈と咲も良いね』

「了解」


「でも、TB。私もゴブリンのコアを飲ませて」

『咲……良いのか?』


「今でも十分人外だって解ってるからね。少しでも強くなってTBと一緒に戦えるなら私はそれを選ぶよ」

『そっか』


「社長。私は違う種類のモンスターコアにするよ、魔力系の伸びが良さそうなのにしたいな」

『麗奈はそう言うと思った……』


「何でですか? 止めてくれてもいいんですよ?」

『なんか今更って気がするし』


「扱いが酷く無いですか?」

『頼りにしてるよ』


「ふーん。それならいいですけど」


 検証は成功して、翌日島長官とカール大統領には報告があげられたが、現時点ではその情報に対して、発表は控える事に決定された。


 その要因としては、やはり溶解液の問題が一番懸念されたんだよね。

 銀行の金庫の壁であろうと、刑務所の壁や鉄格子でも簡単に溶かしてしまう以上、これを発表すれば世界中の犯罪が一気に増加する可能性が高すぎると判断されたからだ。


 俺達にはカール大統領と島長官から厳重に情報の秘匿が求められた。

 因みに島長官は、藤堂総理には内容を明かし、総理の判断として秘匿が決定したと言う流れだったけどね。


 お袋たちには……

 なんか口が軽そうだから、言わないでおこう!

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