第108話 フェニックス
『お袋、ちょっとこれで写真撮って俺に見せて』
「了解」
燃え盛る羽を広げたフェニックスは三m程の大きさだ。
炎をまき散らしながら、大きく飛び上がる。
「TB動きが早くて撮れないわ」
「しょうがない」って言ったけど、「ニャァニャニャア」って響き渡った。
炎か…… 弱点は水だろうな。
俺は、異次元ボックスから魔導砲を一台取り出して、お袋に渡す。
勿論属性も水にセットした。
「お袋。これで狙って」って伝えるが、ジャッジホンお袋が持ったままだから、ちゃんと伝わったのか不安だ。
家で車の洗浄する時に同じタイプの高圧洗浄機使ってるから、きっと解ってくれる筈だ。
俺が次に用意したのは……
このままじゃ大学生たちが危ないからな……
眷属召喚【トリトン】
『マスターおひさ』と俺には伝わったが、傍目には「キュイキュイ」って言ってるだけにしか聞こえないだろうね。
『トリトン。ここを海に環境設定してくれ』
『オッケー、って随分暑苦しそうな鳥が出て来てるのね』
『そそ。レアボスみたいで俺一人じゃ無いから、困ってな』
環境が海に変わると、お袋に伝えた。
『大学生達、海に飛び込ませて出来るだけ頭上げるなって言って』
「解ったわ。高圧洗浄機が中々命中しないねぇ」
『でも焦って無いな……』
「あなた達、水の中に飛び込んで!」
お袋が叫ぶと、大学生達が次々と飛び込んだ。
『トリトン。ここで眷属チェンジしても、海は残ったままか?』
『大丈夫よ』
『そっかじゃぁちょっとチェンジ。またな!』
『バイバイ』
眷属召喚【赤城】
すると、巨大な空母が現れた。
殆どこの部屋いっぱいのサイズだ。
環境設定で広さは変わらないか。
俺は、赤城に指示を出す。
『ゼロ戦ゴーレム出撃だ。弾丸は通用しそうにないから、体当たりで海に落とせ』
そう命令すると、三十機以上のゼロ戦が部屋を埋め尽くさんばかりに飛び立つ。
流石にゴーレムだけあって、同士討ちも無しに次々フェニックスに突っ込んで、更にゼロ戦がどんどん飛び立つ。
フェニックスも基本はファイアブレスと体当たりが戦法の様だが、ゼロ戦の物量作戦には分が悪い様だ。
十分程攻防が続いたが、ついにフェニックスが海に落下した。
再生持ちだから、この中で止めを刺すしか無いな。
火の消えたフェニックスは、意外に貧相だった……
夢が無い感じだな……
海の中でオリハルコンダガーに風を纏わせて、その首を跳ね飛ばした所で、黒い霧に包まれて行った。
赤城を元に戻すと、ゼロ戦たちも消えて行った。
結構MP消費したな。
緑ポーション大量に使っちまったぜ。
で、問題のドロップはあった。
フェニックスからならレアなスキルっぽいよな。
でもお袋でいいか。
『お袋。これ触って』
「いいのかい?」
『うん』
宝箱がいつものじゃ無くて、明らかに豪華な感じだしね。
箱からは虹色をした、スキルオーブが出ている。
「これ絶対凄そうだよ? 私で本当にいいの」
『うん』
念を押されたけど、お袋に取得して貰った。
結果は……
凄いんだけど、微妙だった。
スキル【回復】すべての状態異常や病気、怪我から回復できる。
俺はエリクサー作れるから、お袋に取らせて良かったぜ。
『お袋、現代の聖女様だな』
「それ、処女じゃ無くて大丈夫?」
『自分で張り治せるんじゃない?』
「そうだね。帰って試してみよう」
お袋はやっぱりどこか天然だった……
余りの展開に、大学生達はただただ呆然としていた。
部屋から一度出ると、ステージは元の状態に戻っていたけど、どんな仕様なんだろ。
「お母さん。随分遅かったね。なんかあったの?」
「なんかさ、レアボス? ってのが出てTBが随分派手な攻撃バンバン使って滅茶苦茶だったけど、お母さん聖女になっちゃったんだって」
「えぇ? 何よそれ。まったく理解不能だよ?」
『まぁ取り敢えず一度地上に戻ろう二人ともステータスカード取れて良かったな』
「うん」
「そうだねぇ。帰ったら母さんと穂南のスマホお願いね」
『あいよ』
「あの…… 今日は貴重な体験をさせて頂いてありがとうございます。今日の事って人に喋っても大丈夫な感じですか?」
大学生達が聞いて来た。
お袋のスキルの内容とかは知らないし俺が出来る事とかは、別に言われても構わない。
変に俺に絡むやつとかが減ると思うし。
『別にいいよ。ただし大げさに言わないでね?』
「普通に話しても誰も信じないくらいに凄かったです。サイン貰えますか?」
『ペン持てないし、スマフォで一緒に写真撮るくらいでいい?』
「全然いいです! ありがとうございます」
結構いい子たちで良かったぜ。
俺達は十五層の台座のリフトを使って一層へと戻った。
「お兄ちゃん折角だから一番新しいスマホに機種変更していい?」
「じゃぁ私も新しいので頼むよ。解らなかったら穂南に聞けるように同じのがいいわ」
『了解。後で彩に連絡して置けよ? スキル取ったからもう迷惑かけないで済むって』
「うん。伝えとくね」
俺は一人で家に戻り、お袋と穂南はスマホショップに向かった。
家に戻ると、咲が実家から戻って来ていた。
「TB。出かけてたんだね。どこ行ってたの?」
『咲。お帰り。お袋たちと代々木の十五層に行ってた。中ボス戦で二人ともステータスカード出したよ。お袋なんて【回復】って言うスキルで、恐らくエリクサーと同じ効果』
「えっ? それってめちゃ凄くない? 薬以外の治療系スキルは未発見だったよね?」
『だね。俺に出なくてよかった』
「まぁそうなのかな? 洋子さんもなんか色々巻き込まれそうだね」
『うん。ひそかに穂南のも凄いけど。言語理解って言うのが出た』
「へーうちの会社の研究室に監禁されそうなスキルだね二人とも」
『無茶な束縛をしないように、ユミさんと鮎川さんに頼んどこう』
「麗奈も今日戻って来るから、そろそろ活動始めないとね」
『だね』
その日の夕方麗奈も戻って来て、久しぶりに賑やかな食卓になった。
お袋と穂南はジャッジホンのフル機能バージョンを手に入れて色々と試してた。
爺ちゃんが、ちょっと真面目な顔で俺に話しかけて来た。
「進。わしは代々木の部隊の育成をメインにやって行こうと思う。こっちにも常にある程度の人間が居ないと、育成も安定せぬからな」
『そうだね。祖父ちゃんはこっちに居て家族を守って貰える方が安心できる。祖母ちゃんや穂南も居るからね』
「それにじゃ。ばあさんがすっかり若返ってな。ほっておくと浮気をされても困るからな!」
『仲良しで何よりだな!』
「社長。修三さん残ってくれるなら、私は咲と一緒に付いて行っても良いかな? 決定権? とかで修三さんにも代表取締役になって貰ってれば問題無いと思うし、どうせダンジョン省からの出向組が、全部チェックしてくれるから、問題も無さそうだしね。
『ああ、そうだね。じゃぁ麗奈は一緒に行動って事でよろしく!』
「やったぁ」
日本の事は取り敢えず祖父ちゃんと彩に任せて俺は、再び咲と麗奈を伴い旅立つ。
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