第107話 お袋たちと狩り

 一週間程のんびりと家で過したけど、ダンジョンの攻略は進めないと、まだまだ先が長いんだよね。


 ポールの班が先乗りで次のBB(バルバドス)のブリッジタウンダンジョンへと向かっていて、「TBはラスボスが出現してからくればいいよ。ずっと出れなかったんだから」と言ってくれてる。


 元々GBの攻略班の隊長だっただけあって、チームをまとめての狩りだと咲や麗奈よりも頼りになる。


 家でのんびりしてたら、穂南の友達らしき女の子達が何故か両親と一緒に、訪ねて来た。


「こんにちはー。幸子さんいらっしゃいますか?」


 何故か穂南でなく、祖母ちゃんを尋ねて来た。

 お袋に聞くと、祖母ちゃんの指導でダンジョンでの狩りをしてるそうだ。

 祖母ちゃんも頑張ってるんだな。


「あの? もしかして、黒猫社長さんですか?」


 俺は「うんそうだよ」と返事したけど、当然聞こえる音は「ニャンニャニャ」だった。

 お袋が補足してくれたから、無事に通じたけどね。


「凄いー本当に子猫なんだぁ」そう言いながら、美咲、詩織、恵子と名乗る三人と、詩織ちゃんと恵子ちゃんの親御さんが騒いでた。


 一足先に帰って来ていた穂南が二階から顔を出して「TBも忙しいんだから、あんまり邪魔しちゃだめだよ?」と声を掛けて来た。


「穂南。あんたも今日は今から行くんでしょ? 母さんはもう準備できてるよ」

「はーい。ちょっとだけ待ってね」


 なんだか穂南の周りも戦闘民族だらけになって来たなぁ……


『俺も今日はお袋たちについて行くよ。今は何層に行ってるの?』

「あら。TBも来るのかい? 私達は今は十五層が中心だね。NDFの人達が居ないと流石に十五層の中ボスは危険かな? と思ってそこまでにしてたんだよ」


『あれ? 十五層だったらダンジョンリフト使わなきゃ片道五時間くらいかかるだろ?』

「あーそれね。彩さんがいつも代々木に居るから、私達だけはパーティに入れてくれて連れてってくれるの」


『そうなんだ。彩は仕事なんだからあんまり迷惑かけちゃ駄目じゃん』

「私か穂南がステータスカード手に入れたら解決しそうだけど、中々スキルオーブ出ないんだよね」


『そっか。それなら今日は俺が一緒に行くから、中ボス戦を穂南とお袋で別々にすればどっちかは手に入るかもしれないな』

「まじ? スキル獲得出来たら超うれしいな」


『まぁ10%の確率だからそれなりに可能性はあるよね』

「TB。もしスキル獲得出来たら、高機能バージョンのジャッジホン作ってね」


『了解!』


 ◇◆◇◆ 


 早速代々木ダンジョンに、みんなで向かい、今日は俺が居るから、それぞれ目的階層に送り届けた。


「わーTB社長さんありがとうございますー。いつも片道二時間かけて降りてたから。今日は時間節約できます」


 祖母ちゃんたちも五層まで送り届けて上げたら、美咲ちゃん達にも感謝された。


 お。

 一つ思いついた。


 後で松田に提案してやろう。

 ダンジョンガイド業務は絶対需要ありそうだ。


 簡易ジャッジホンのパーティ勧誘機能だけを付与したのを作れば、DFT社で抱えてるステータスカード所持者に希望階層まで送り届けさせる事が出来るじゃん。


 俺は、お袋と穂南を連れて十五層に訪れた。

 

 ここの中ボスのハーピーは最初に現れるリーダーを見失うと面倒なんだよね。

 でも解ってさえいれば、どうって事は無い。


『穂南、最初に中央部分に現れるハーピーの胸をボウガンで打ち抜いて』

「了解、お兄ちゃん」


 入る時にパーティーを組んだままだとボスが出てこないので、それぞれソロでの突入になる。

 一応穂南がうち漏らした時の為に俺もトルネードをすぐ発動できるようにして突入した。


 結果は、穂南の一撃でリーダーハーピーを撃ち抜けたから問題無く倒せた。

 そして、宝箱も現れた。


『穂南。良かったな。罠も無いしこれはスキルオーブで間違いないよ!』

「わーい! やったー。触っても良い?」


『OK』


 穂南がスキルオーブに触れた。


『なんだった?』

「えっとね。言語理解だって」


『おーなんだかラノベ定番の神スキルっぽいな』

「英語の成績よくなるかな?」


『かもな。取り敢えずお袋迎えに行こう』

「うん」


 俺と穂南は神殿のセーフティーゾーンで一人で待ってる筈のお袋の元へと戻った。


「お姉さん一人でこんな階層まで来てるんですか?」

「えっ? 違うわよ娘とペットが一緒よ」


「誰も居ないじゃん? もしかして置いてきぼりでも喰らったんですか? 俺達が守ってあげますよ?」


 お袋…… ナンパされてんじゃん……

 面白いから穂南と二人で陰に隠れて見てた。


「大丈夫です。こう見えて私はあなた達よりは強いと思うわよ?」

「またまたーそんな訳ないじゃん。俺達はこう見えてスキルホルダーなんだぜ。今からこの階層の中ボス戦に行けるぐらいの実力があるんだぞ」


「そう、それなら頑張っておいでよ。私はあなた達の後でいいから」


「一緒に来ないのか?」

「スキルオーブが欲しいから一人の方が良いわ」


「おい順平。お前今日はまだ行かないって言ってたじゃないかよ」

「恭弥。絶対このお姉さん俺達の事、馬鹿にしてるだろ? 今更引き下がれるかよ」


 大学生くらいの男三人パーティだけど、お袋がからかうから引き下がれなくなっちゃった感じだ。


 これは危険だ。


「ニャー」って鳴きながら、俺は穂南と一緒にお袋の前に顔を出した。

「あら穂南お帰り。どうだった?」


 穂南は指でVサインを出しながら「出たよ!」って伝えた。


「あの? もしかして、黒猫社長ですか? その猫」

「ええそうよ。 うちのペット」


 その言葉を聞いて、大学生達がびっくりしてた。


「お姉さんって、黒猫社長のパーティメンバーなんですか?」

「見ての通りね」


 お袋がそう伝えると、三人揃って気を付けして「「「すいませんでした」」」

 って謝った。


「別に謝るような事はまだされてないし、良いわよ。中ボス戦行くんでしょ? 頑張ってね」

「いや、強がってました。本当はまだ無理だと解ってたんですけど、お姉さんの前で格好つけて見たくて……」


「あらそうなの。命は大事にしなきゃね。折角だから見て行く?」

「はい、是非」


 こうしてお袋をナンパしようとした大学生を連れて、中ボス戦に向かう事にした。


「あなた達は、前に出過ぎない様にね。私がもし、しくじったら、TBが何とかしてくれるから、慌てないように」


「「「はい」」」


 妙に行儀良くなった、大学生を連れて俺とお袋はボス部屋に入った。


「あ…… ハーピーじゃないじゃん」


 そこにはレアボスであろう、フェニックスが現れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る