第106話 スライム対策

 なんか、会議やミーティングで一日過ごすととっても疲れたので、家に帰ると穂南のベッドに潜り込んで久しぶりにゆっくりと寝る事が出来た。


 こんな風に気を抜いて寝れるなんていつ以来だろう?


 翌朝は早くから目が覚めたので、昨日松田が言っていた付与の出来る魔導具を作ってみた。


 麗奈と咲は、それぞれ実家に顔を見せに行ってる。

 麗奈は都内だけど、咲は高知だから帰って来るのは明後日になるらしい。

 ずっと戦い続けてるからこんな時間は大切だよね。


 それで肝心な付与バッグだけど結果は成功だった。

 現時点ではこのバッグで出来るのは属性魔石や、理付けの出来ている下着類は作成できる。


 同時に複数個の付与も行えるんだけどMPの問題があるから他の人の場合だとどうなんだろ?

 と思ったけど、ふと思いついて緑ポーションを付与の時に一緒に入れてみると代用が出来る事が解った。


 ランク1で50

 ランク2で200

 ランク3で800

 ランク4で3200

 ランク5だと無制限


 のMP消費に代用できる。

 一回で消えちゃうからランク5を使うと得と言う事も無いんだけど、今まであまり使い道の無かった緑ポーションが一気に有用になるな。


 現状では付与バッグを作った俺の能力的な問題でLV2相当の付与しか行えないけど、この先俺の異次元ボックスのレベルが上がって行けばもっと上の付与が出来るようになるだろう。


 まぁ取り敢えず出来上がったので、五個ほど作って麗奈に一つ、松田に二つ、D³の研究班に一つ、彩に一つを預ける事にして、使い道を色々模索して貰う。


 実家に戻っている麗奈以外は、メールで連絡を入れると大喜びで受け取りに来た。


 彩の所はスキルホルダーが幅広く揃っているので成果が楽しみだな。

 

 夕方までは穂南も学校に行ってるし、お袋は意外にまじめにDキューブの経理の事を税理士さん達と話してるし、祖父ちゃんは祖母ちゃんと手をつないで出かけて行ったし暇だ。


 久しぶりに俺は一人で、東京の街をうろついた。

 東京に住む人々はずいぶん減ったように思える。

 特にダンジョン周辺の渋谷や新宿は大半がダンジョンシティ内に含まれているし、高層建築物の立ち入りの制限が激しいので実質ゴーストタウン化している。


 外見上は綺麗なビルが多いのにね……


 交通の要所となる新幹線や高速道路に関しては、点検や補修を優先して一応の機能回復はしてるけど、まだ根本的なスライム対策は出来て無いから不安要素は大きい。


 溶解液の無効化物質を開発できれば凄い需要なんだろうけどな。

 あーそう言えば、俺のおしっこって溶解液だけど水の中とかにおしっこした場合は別に何も変化はしなかったな。

 これって何かに利用できないかな?


 そう思いついた俺は、Dキューブの研究班がいる大学内の研究室に出かけて行った。

 そこで文部科学省出身の浅田さんに先程思いついた事を伝えてみると、凄い興味を示してくれた。


「液体の中に溶解液を混ぜた場合、その液体に溶解効果は無いって事ですよね?」

『うん。そうだと思うよ』


「早速実験してみましょう」


 そう言いだして浅田さんが用意したのは、液体塗料だった。


「この中に溶解液を混ぜて貰えますか?」

『えっ?』


 その言葉に俺は少し焦った。

 浅田さんは三十前の美しい女性だ。

 その眼前でおしっこする俺……

 どんなプレーなの?


 まぁでも子猫だからいいかと開き直って液体塗料の入った缶の中におしっこをしてみた。


 ちょっとだけ飛び散った部分に穴は開いたけど、液体塗料自体は缶を溶かす事も無かった。


 それを見た浅田さんが、その液体塗料を刷毛でベニヤ板に塗ってドライヤーで乾かした。


「社長。この板に向かって溶解液をかけて下さい!」

『ねぇ。ちょっと恥ずかしいんだけど?』


「大丈夫ですって、私は気にしませんから!」 


 その実験を始めてから他のスタッフたちも集まって来てたので、俺は女性に囲まれた中で、おしっこをする状況に追い込まれた……


 この姿じゃ無ければ自殺ものだな……松田なら喜んでするかもしれないけど……


 そして試してみた結果は。


「凄いです社長。このベニヤ板は溶けませんでした! これは一気に問題解決に繋がります。どの程度の濃度まで効果が出るのか知りたいので、実験に付き合って下さい!」

『ねぇ……それってずっと浅田さんの前で俺おしっこし続けるの?』


「はい、勿論そうです」


 正確な量を図る為に、計量器の上に置かれたビーカーに入れた塗料の中に俺が溶解液をかけ、それを様々な濃度に薄めて塗りつけたベニヤ板を用意して、再び俺が溶解液をかける。


 そんな過酷な実験に水を大量に飲みながら突き合わされた。

 絶対セクハラだよね!


 でもそのお陰で二十万倍まで薄めても効果は発揮する事も解り、二十五万倍だと溶解した。


 建築資材やシーカー用装備品にこの溶解液混合塗料を使った物を用意すれば、一気に安全面は高まる。

 

 ガラスなどの原材料も溶解している状態の時に混ぜ込めば、耐溶解液対応ガラスとかも作れるだろう。


 この日はとても有意義な実験結果をものにする事が出来た。

 溶解液はスライム捕まえれば簡単に手に入るから、一々俺に羞恥プレーはさせないでね!


 この技術はそのままDキューブ内で公開しようと思ったけど……

 研究室のメンバーに「「「特許を取ってからにして下さい!!!」」」

 と凄まれた。


 実際に活用するのは国じゃ無くて塗料や、金属、ガラス、プラスチック等の各メーカーになるからお金にしなきゃ駄目なんだって。


 色々大変だねぇ……

 でも、復興に向けて大きく一歩を踏み出せたよね?


 その後、スライムはダンジョンの中で捕まえると何故か外に持って出れないので、ダンジョン外で野良スライムを探して捕獲する事が大流行する事となる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る