第105話 TB社長の忙しい一日

 NDFの本部を後にした俺は、麗奈と一緒に大学の校舎をそのまま流用したDキューブの本部へと向かった。


 大講堂の中に全員が揃っている。

 この敷地内に関してはダンジョンシティの中だけど、一応外周をダンジョン鋼コーティングされた壁で囲み、建屋に関してもチェックを行いダンジョン鋼での補強を行っている。


 スライムによる被害の大きい部分に関しては、順次取り壊しを行っていてかなり平地になってる部分が多い。


 初期メンバーの海外勢十三名と会社の役員である、麗奈、咲、修三祖父ちゃんとお袋、それにユミと鮎川さんは、前列で他のメンバーと向かい合う様に座っている。


 他のメンバー達も、各国からの出資に合わせ、株式の委任を受けてる。

 メンバーの殆どが株主の権利も有していると言う珍しい会社なんだけどね。


 株主の権利を有していないメンバーはダンジョン省からの出向社員である十二名だけだ。


 まぁ海外組は殆どが諜報筋の人間で腹の中身がどうなのかは、信用してかかるには不安もあるけど、全てのメンバーは自国をダンジョンの恐怖から守りたいと言う崇高な気持ちを持っていると信じて上げるしかないかな?


 今日は麗奈と鮎川さんが壇上で今後のDキューブの活動に関しての大まかな説明を行った。


 まず海外組は十六チームに分け一チーム七十八名で別れて貰った。

 現状の実力に応じて、チームごとの実力差が無いように振り分けるのは大変だったけど初期メンバー達が調整を付けてくれた。


 俺と共に行動するのはこの十六チームが順番で派遣されてくる。

 本部に残っている時は、基本は代々木ダンジョンで麗奈の指示のもとに訓練を積んでもらう。


 現状では十五層より下の階層には民間人はほぼ降りてこないので問題は無いだろう。


 各国に対しては出資割合に応じて、各種ポーション類や魔法金属の優先流通を行う。


 当面の目標は出現をしている全六百三十か所のダンジョンに関して、全てをスタンピードをしない状態にする事だ。


 現時点で予測できる範囲であっても最低でも二百層程度、最大六百四十層にも及ぶ遠大な攻略になっていく。


 当然今用意している程度の武器や防具では攻略はおぼつかないし、ステータス面で考えても二百層で戦えるようなステータスだと、二万以上になって来る。


 Dキューブに参加して貰っているメンバーはこの条件をクリアして貰うのが大前提である事などを伝えた。


 折角大学の施設を丸ごと使えているので、ダンジョン資源を使った新しい技術の研究開発に関しても取り組む事を鮎川さんが発表した。


 各国が独自に研究するよりもより多様性のある考え方で、意見を出して貰えるように求めた。

 研究開発に関しての人員の派遣はDキューブとしては全面的に受け入れる用意があると伝える。


 これに関しては、雇用でなく学びに来て貰うというスタンスだ。

 何よりもDキューブの強みは他では中々手に入れにくい、ダンジョン産素材が豊富に手に入る事が強みである事をアピールした。


 研究の成果は各国で共有し、ほぼすべての国が参加しているこの会社においては、ダンジョン産技術が公平に公開されて行く。


 ◇◆◇◆ 


 全体での会合を終えて、次の予定は日本のダンジョン省からメンバーとの打ち合わせだ。


 厚生労働省の 鮎川さん

 警察庁の   遠藤さん


 農林水産省の 後藤さん

 総務省の   沢さん

 外務省の   増田さん

 財務省の   豊岡さん

 文部科学省の 浅田さん

 経済産業省の 野村さん

 国土交通省の 南さん

        吉田さん

 環境省の   難波さん

 防衛省の   広末さん


 以上の十二名がダンジョン省から派遣されたメンバーと出身省庁になる。

 主要業務は、ダンジョン被害からの復興支援が中心で、ダンジョン省の立場では国外の復興計画には中々お金を出すこと以外に出来る事は無いのだけど、Dキューブとしての立場であれば具体的な手法や、実務においても行動できるのではないかと言う考えで選ばれてきたみたいだ。


 勿論人選も発案も島長官で、この組織によって世界中の復興が主導されれば、日本は世界のリーダーとしてもUSと肩を並べる存在になれるかも知れない。


 初動でUSに大きく遅れを取っていたのを、島長官が表に出てくるようになった事で、一気に取り戻した感じかな?


 何が凄いかって…… なんと全員女性で二十代後半から三十代前半のメンバーに限定されていて、何故か全員凄く美人さんだ。


 現役女子大生でしか無かった麗奈や咲に対しても、マウントを取る事なく、ちゃんとCEOと副社長として立ててくれる気配りの出来る人たちだった。


 会議に参加している修三祖父ちゃんも少し顔の表情が緩んでた。

 祖母ちゃんに言いつけてやる!


 当面は日本のダンジョン発生地の防衛と、スタンピードの心配のなくなった国に対しての復興支援が中心だ。


 WDA傘下の買取所をダンジョンの側に設置し、シーカーを育てる事が国中に散らばっている、スタンピード時に溢れ出した魔物の撲滅にもつながるので、それを中心に支援をする事になる。


 国内に関しては、ダンジョンシティを五層構造で作る案が現在立ち上がっている。

 ダンジョンを中心にして、一キロメートルずつの範囲で防壁を作り、ダンジョンから五キロメートル四方に置いては、基本的に居住地域からは外す政策だ。


 でも魔物の中には飛べる種族も居るから、ラノベで見かけるような結界技術をどこかで身につける事も必要だよね。


 後は土木工事に役立つようなスキルが一般にで回れば、その辺りの工事は大幅に役立ちそうだけど、現状ではまだそんな便利な能力は報告されてないな。


 どのダンジョンも都市の中心部で非常に地価の高かった場所が多いけど、危険と引き換えにその場所にこだわり続ける事は出来ないから、しょうがないのかもしれない。


 国がダンジョンからキロメートル以内の範囲の土地を強制的に接収する事になり、代替え地を現物で用意する事になる。


 日本が見本として作り上げる事が出来れば、それを真似する国も出て来るだろうし、日本のゼネコンにとって取っては世界中に大躍進できる、足掛かりになるかもね。


 国交省からの出向組の二人は忙しくなりそうかも。

 防壁に使うダンジョン鋼が全然足りないから、一般探索者たちは今からが稼ぎ時になる。


 高層建築物に価値がなくなったので、これから先は日本ではで過疎地が少なくなっていく流れかな? 


 そうなれば地方都市にとっては決して悪い流れじゃ無いかも知れない。


 そんな感じで、今日は一日中会議ばっかりで疲れたよ……

 子猫をそんな重要な会議に参加せるとか駄目だろ? って思うのは俺だけじゃ無いはずだ……

 

 明日は一日穂南とゆっくりとしたいな!

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