第103話 シャバの空気は上手いぜ
俺の思い付きで作った魔導砲は、当面スタンピードの制圧には十分な効果が期待できるために、各国に一台づつは配置する事にしたけど、魔石の用意の問題があるから、平常時の使用は控えて貰う様に通達はしている。
でも現状は同時スタンピードも多いから、これもダンジョンの存在する数、六百三十台までは増やさざるを得ないかな?
属性魔石は消耗品なので、生産上の都合があるし、そこまで頼られても俺にも限界あるしね……
でも! STのサントメダンジョンの攻略により、漸くマスターレベルがランク3へと上昇した。
ランク3マスターになる事での変化は結構大きかった。
まずは、事前情報であったようにダンジョンの外に出れるようになった事だ。
次が、ダンジョン転移で移動できるダンジョンの数が、四次以降のダンジョン発生国以外の九十か国に及ぶ、三次ダンジョンまでのすべてのダンジョンを転移先を指定して転移できるようになった。
これはダンジョンNoを指定して、ダンジョンリフトから転移できるんだけど、一次ダンジョンだと1180とかで二次ダンジョンだと2153とか、三次ダンジョンだと3133とか頭の一桁が変わると言う事が解った。
三次まで発生してる例えばNZ(ニュージーランド)のような国だと、一次ダンジョンのウェリントンだと1122、二次ダンジョンのオークランドダンジョンだと2122って感じだね。
ダンジョンシステムを作った人がどういう判断でNoや発生場所を決めたのかは不思議だけど、TW(台湾)に現れてなかったりするし、国連加盟国基準なのかな?
あくまでも俺がやりたい事は、ダンジョンから魔物が溢れ出して人々の生活を脅かす状況を止めたいと言う事であって、必ずしも俺達だけがお金持ちになろうとかは、考えて無いんだけど……
今のDキューブの状況として、各国からメンバーを派遣されていると、俺がただやりたいように動くと言う訳にも行かなくなって、結構面倒な気がする。
でも意外な事に一般の兵士たちじゃ無くて諜報関係の人間が中心に集まっていることにより、逆に各国同士の軋轢や些細な喧嘩なんていう事は、今の所起きていない。
問題を起こすと、Dキューブから強制的に退去してもらい以降該当国家には、Dキューブとしての援助は一切行わないと通達してあるし、その辺りは各国も別の手段を手に入れるまでは、大人しくしてくれるのかな?
でも…… 聖夜達の魔王軍の行動があるから、その流れで自国の防衛をどうにかしようとかする国が出てこないかは心配だけどね。
◇◆◇◆
サントメダンジョンを終えて、久しぶりにメンバー全員で一層に転移して、俺もダンジョンの外へと出た。
「社長。やっと出れましたね。取り敢えず穂南ちゃんや彩さんに会いたいでしょ」
『うん。そうだな。家に帰りたいな』
サントメ国際空港から、横田基地へ向かってDキューブのプライベートジェットが飛び立った。
横田基地へは、お袋と穂南と祖母ちゃんも迎えに来てくれていた。
俺は麗奈の胸に抱かれていたけど、麗奈から穂南へと受け渡された。
むむっ…… また少し成長したか?
麗奈とのサイズ差が殆どないぞ。
兄として嬉しいような悲しいような微妙な気持ちだ。
『ただいま。穂南。何も問題は無かったか?』
「結構色々な事があったけど大丈夫! 私やお母さんだって結構頑張ってるからね」
『そっか。怪我をしないようにな。無理をしちゃだめだぞ』
「そんな事言ってお兄ちゃんの方が、よっぽど心配だよ。もう死んだりしないでね」
『お、おう。解ったよ』
その日は久しぶりに家へと戻って、ゆっくりとお風呂に入った。
お袋に洗ってもらったけどな……
久しぶりに俺が帰宅した事を松田が聞きつけ、翌朝早くから俺達の事務所を訪れて来た。
「TBやっと戻って来たな。商品は修三さんや鮎川さんが定期的に納品してくれてるから、最先端の商品以外では今の所問題無いんだけどな」
『歯切れが悪いな?』
「現状で、一次ダンジョンは十九層まで進行してるだろ?」
『そうだな』
「各国の攻略部隊以外で十五層まで辿り着いて狩りをするなんて事が、ほぼ出来ないし、そうなるとダンジョン資源が一般に出回る事も無いんだよな」
『そうなるだろうな。当然』
「もっと一般探索者にもお金が稼げるように出来るシステムを作りたいんだよな」
『でも結局身の丈に合わない狩りをしても、代償は自分の命だからそれは成長を待つしか無いんじゃないかな?』
「それも解るんだけど、例えばTBの所の攻略班なんて、加入してから一月とかで最前線まで潜れるようになるだろ?」
『武器を貸与するし、必ずベテラン組と一緒に行動するからな』
「そう! それなんだよ。そう言う育成システムを作れないんだろうか?」
『十層まではダンジョン鋼の武器で何とかなるし、それ以降はパーティー推奨って言うか、スキルを身につけないと難しいのはしょうがないだろ?』
「DFT社で始めた
『槍やクロスボウをちゃんと扱えないで下層に潜れば、事故も起きると思うけどな』
「まぁそうなんだけど、十層程度までなら比較的安全に狩りが出来るシステムは欲しい。それ以降はもっと厳しい基準を設けて、事故の抑制につなげたい。今世界中でダンジョンの外に出ている魔物達もその辺りまでが対処可能なら、かなり事故が減るだろ? 特に直接戦闘だとダンジョン内と外ではかなり能力が違うし、魔導砲のような武器じゃないと、対応は難しいからな。あれの簡易版で一般に使える商品が出来ないかの相談なんだよ」
『なるほどなぁ。魔導砲の場合は本体を作るだけなら、俺じゃ無くても作れるけど、結局属性魔石が無いと、ただの少し性能が良い高圧洗浄機だからな』
「そこで提案なんだ。もう世界中にスキルホルダーは百万人近く居る。各種属性魔法を扱える人も多い。それなら魔石に付与だけを行える魔導具とか作れないのか?」
『あー、そう言う事か。試して無いけど一部機能だけの魔導具化なら出来るかもしれないな。マジックバッグに付与の機能を持たす事が出来れば、属性スキル持ちが魔石を収納する事で、生産可能かもな?』
「それってもしかして俺みたいな鑑定スキル持ちなら、簡易版のジャッジホンを作れるか?」
『いや、それはまた少し違うんだよな。精々使い捨ての鑑定魔石なら作れるんじゃないか? 魔石なら安く手に入るんだから、何千万円もするジャッジホンを買えない人にでも買える商品は出来るんじゃない? MPの所持量なんかで出来るかどうかは変わるけど、今は緑ポーションは凄い安いんだろ? 実現性が全くない話じゃ無いかもな。 実際俺が一般の人達が使えるほどの魔導具を作り続けるのも無理があるし、まぁ試しに付与バッグが作れるかどうか試してみるよ』
「頼む。成功した場合なんだが、買取じゃ無くてライセンス生産制度で、出来上がって一般に販売した商品に対しての報酬にしようと思う。その方が継続的な収入につながるだろ?」
『まぁ魔石の付与が成功してから考えたほうがいいかな』
「解った」
松田の提案によって、俺の作業が少し楽になるかも知れない道筋が見えた。
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