第102話 LCダンジョンの攻略
俺は、GQのマラボダンジョンを終えた後十層のダンジョンリフト装置からのダンジョン転移を繰り返しながら、行ける範囲での中ボス戦を行った。
結果三十か所のダンジョンにおいて、戦力不足の判断で突入をためらっており、俺が対処をする事になった。
四ヶ所目くらいからは慣れてきて、突入と同時にリーダーハーピーに狙いを定め、一撃で葬り去れば終われるようになったので、結構楽になった。
島長官から連絡が入り、全ての一次ダンジョン十五層と三次ダンジョン十層のスタンピード終了報告を貰ったのが発生から十四時間後の事だった。
俺はユミにカストリーズダンジョン一層に戻る様に指示を出すと、何度かのダンジョン転移を繰り返し、合流する事が出来た。
その合流した先で衝撃的な情報を聞かされることになる。
ロンドンダンジョンで魔王軍は、スタンピードを起こさせる事なく、終了させたと言う事だった。
今回もスタンピードの地上迎撃部隊では、少なくない犠牲者が出ているし、ロンドンダンジョンと同じ状況が他のダンジョンにも作れるのであれば、俺達が行っているスタンピード対策よりもはるかに優れていると言う事になる。
『ねぇ、実際どうなの? ユミは聖夜やエミと連絡ついてるんでしょ? 彼らは人類にとって敵なの? 味方なの?』
「ボス。私にもはっきりとした判断はつきませんが、人類の味方として行動しているようには思えません。現在のエミ達の行動は自分達の利益の為に、取り敢えず餌を撒いてる状況だと思えます」
『そうか…… ユミってさ、実はエミと仲悪かったりする?』
「ボス。少なくとも私はエミを可愛がっていましたよ?」
『そこ疑問形なんだ……』
「エミは良くも悪くも妹ですね。甘えん坊でわがままな部分は確かにありますが、根は悪人ではありません」
『問題は世論だよね。内情はどうあれロンドンはスタンピードすら起こさずに、今回の十五層を乗り切ったけど、俺達は世界中で二百名以上の死者を出して千五百人以上の負傷者を出している。これは誰の目にも見える事実だからね』
「場合によっては対応を魔王軍に任せれば? と言い出す勢力も出てくると?」
『そうだね。実際今はロンドンだろ。俺達も何か所か既に行ってるけど、GB連邦加盟国だけで世界に五十四か国もある。そこがもし、魔王軍を頼るとでも言い出せば、情勢は一気に変わる可能性まであるよね』
「でも…… 姿を見せてはいませんが、彼らが魔物である事は99%間違いありません」
『それを言っちゃえば、俺だって見た目猫だし、言葉が解って魔法の使える猫なんて、普通の人から見て魔物と何が違うの? 聖夜達だってちゃんと意思の疎通が出来るんなら、俺と何も変わらないんじゃないかな?』
「確かにそうなんですが、今のエミや青木警視を信用する事は駄目だと、私の中で警鐘が鳴るんです」
『そっか……俺達は今、自分が出来る事を精一杯頑張るでいいんじゃないかな? 取り敢えず明日の午後にはメンバー達も戻って来るし、今回は追加メンバーの件で初期メンバーのうち十二人程受け入れで残る事になってるけど、それ以外のメンバーが到着し次第、ここのボス部屋に突入しようと思う』
「了解しました」
◇◆◇◆
ユミと二人でロンドンの状況をネットで検索しながら調べていると、また驚きの展開になっていた。
『魔王教団だって? こんな怪しい宗教に信者なんて集まるの?』
「普通ではあり得無さそうですけど、ダンジョンによって多くを失った人々には、宗教として新たな力を授けると言い切られた場合、引き寄せられる人々は出てくると思います」
「全身を覆い隠すようなローブを羽織った人物が、ダンジョンシティの入口で迎え入れてるそうですね」
『そのローブの中身って……人間じゃ無いよね?』
「おそらく……」
『まぁ今は目の前のダンジョン攻略を急ぐしか無いよ。俺も早くダンジョンから出れるようになりたいしさ』
◇◆◇◆
午後になって、横田からのチャーター便でDキューブのメンバーが戻って来た。
「社長。ただいまですー」
『お帰り麗奈。咲。今日は早速ここのボス部屋に突入になるんだけど、咲と麗奈と修三祖父ちゃん以外のメンバーは、一層で待機を頼みたいんだ』
そう伝えると、ポールが質問をしてきた。
「それはどう言う事だボス?」
『はっきりとした根拠は無いんだけど、このカストリーズダンジョンは攻略が終わって無いにも関わらず、十五層スタンピードを起こさなかったでしょ?』
「確かにそうだな」
『もしかしたら俺達が突入した瞬間とかで、スタンピードの起こる可能性とかも残されてるかもしれないと思ってね』
「そうか……でも仮にスタンピードを起こした場合だが、この五十名足らずのメンバーで、対処できるというのか?」
『それに関してはユミに対応方法は伝えてあるから指示に従って欲しい』
「ユミが?」
そう言って遠藤警部の方をみんなが見ると、銀色に輝く高圧洗浄機を三台並べてドヤ顔で立っていた。
「なんだ? その昔のお化け退治の映画で使ってたような機械は?」
「これからのダンジョン攻略を担う新兵器です。今から使用方法などをレクチャーしますから見ててください」
そう言ってユミが一層のスライムを相手に魔導砲を発射して見せた。
メンバーから歓声が上がる。
「恐らく魔石の在庫数から言っても24時間連続使用しても大丈夫だから、活用してね。今回の結果を見て量産して各国に販売をすると思うよ」
『凄いな。ボス。きっとこれからのダンジョン防衛は一気にはかどりそうだ』
『魔王軍に負けてられないしね』
俺は麗奈と咲と修三祖父ちゃんの四人で十五層のボス部屋へと突入した。
すぐにポールから、ジャッジホンでメッセージが入った。
『ボスの読み通りだった。今のタイミングで魔物がスタンピード行動を起こした』
『了解。安全第一で対処を頼むね』
そしてこのカストリーズのダンジョンに現れたボスは……
美味しそうに見える巨大なオマール海老だった。
鑑定をしてもらうと雷属性が弱点で、ハンマー攻撃は強烈そうだけど、俺達にとってはそう問題は無いかな?
俺の雷魔法と、麗奈達の属性攻撃で難なく十分ほどで攻略に成功した。
『ダンジョンナンバー1176クリア。ダンジョンマスターとなるか消滅させる事を選べます』
あれ? こいつはネームドモンスターでは無いんだ……
砂浜に転がっていたコアを飲み込むと『【火魔法】を獲得しました』
と、これもまぁありがたいけど、特別優れたスキルでは無い物を入手して、カストリーズダンジョンの攻略は終了した。
『麗奈。次のWS(サモア)に向けて移動だ。到着したら連絡してね』
「了解です。社長まだランク3にはなれないんですか?」
『うーん。次かその次くらいで何とかなるとは思うんだけど』
「WSには新規採用のメンバーも送り込む事になると思いますから、よろしくお願いしますね?」
『あーそう言えば、高圧洗浄機を二百台ほど仕入れて欲しいんだけど、鮎川さんに頼んで他のメンバーと一緒に来るようにお願いして貰っていいかな?』
「解りましたー」
攻略は、WS、ST(サントメ・プリンシペ)とネームドモンスターも現れず、TBの開発した魔導砲によりその後のスタンピード対応は、無事故が続き状況は好転したかに思えた。
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