第101話 一次15層
「ボス。始まりました」
『だね。予想通りこのLCはボス部屋の登場だったけど、ここスタンピード起こって無くない?』
「そうですね。この階層の魔物達も別に階段に向かってはいません」
『まぁそれならここは後回しでOKって事で、ユミは一層に戻って地上迎撃部隊の警察隊に伝えて上げて』
「了解しました。ボスは十層から転移されるんですか?」
『そうだね。各ダンジョンで一班ずつは中ボス前で待機してる筈だし、迷う事は無いからね』
そう言って一度ユミを一層まで送り届けると、一人で十層に戻りダンジョン転移を行った。
現時点では俺は三次ダンジョンには転移出来ないので、スタンピードに当たりさえすれば、そこが一次ダンジョンで間違いない。
三回目の転移でスタンピードに遭遇する。
十五層まで駆け下て、ボス部屋前に待機していた部隊にスマホの画面を見せて質問した。
『ここは何処?』
あいかわらず、子猫な俺に対して反応が微妙だ。
思いっきり色の黒い兵士たちが並んでるし、アフリカ大陸の何処かの国だろうと予想をした。
「GQ(赤道ギニア共和国)マラボダンジョンです。英雄TBの来訪に感謝します」
って結構、丁寧に歓迎してくれた。
この間の各国のジャッジホンの作成の時にFM(ミクロネシア)の一層に来た人だったかな? アフリカ系の人の顔を見分けるのは、俺にはちょっと無理……
惜しいな。
アフリカには間違いないけど、マラボって大陸の西側にある島だったような気がする……
俺は早速、この十五層の中ボス部屋へとここに居たチームリーダーの人だけを伴って突入する。
一応十五層は初めてだから、他の人を守る余裕が無い可能性あるしね。
かと言って一人で突入したら、鑑定スマホで鑑定出来ないからしょうがない。
力押しで倒せるのは解るけど、それだと各国に指示が出せないからここは協力して貰う。
ハビエルさんと言う部隊長さんだ。
相変わらずラスボス部屋と違って味気ない空間だ。
潜入して扉が閉じると、一次ダンジョンの中ボスが現れた。
人と変わらない大きさだけど、その両腕の替りに大きな翼を持ち、胸の辺りは人間の女性と同じような豊かなふくらみを持っている。
足はどうみても鷲とかそう言った感じの猛禽類のような蹴爪になっていて、とても筋肉質なのはわかるけど、羽毛でおおわれている。
顔は無表情な女性のような感じだ。
ハーピーだよね。
一羽だけかと思ったら、上空から全く同じ見た目のハーピーが二十羽程も襲い掛かって来た。
『ハビエル。隠れてて』
そう叫ぶけど「ニャニャ。ニャニャニャ」としか聞こえない。
それでも雰囲気で分かってくれたのか、俺と離れてくれた。
ジャッジホンで鑑定する暇も与えて貰えないぜ。
俺はトルネードを発生させて、ハーピーの群れに打ち出した。
強くは無い。
トルネードに巻き込まれたハーピーは次々に消えて行く。
でも、消えた分だけまたすぐに現れる。
恐らくあれだ。
見た目の違いは分からないけど、最初に現れた一羽が本体って言うかリーダーな感じで、そいつを倒さなきゃとかそんな感じだろう。
俺はトルネードを連発しながら、全部で五十羽ほども倒した頃に漸く、リーダーを巻き込む事に成功した様で、宝箱と下層に続く階段が現れた。
宝箱のスキルオーブはハビエルに譲った。
「ありがとうTB」
『俺はすぐに他のとこの対処に向かうから後は、スタンピードの手伝いしてあげてね』
そう伝えると十層の転移スポットまで戻って、取り敢えず島長官に連絡を入れた。
『十五層の敵はハーピー。敵の数が多いですけどボウガン装備で一部隊突入させれば、楽勝な筈です。属性は風が良いと思います』
『了解だTB、すぐに世界中に連絡する』
『三次ダンジョンの十層はどんな感じですか?』
『先程、麻宮さんから連絡があった。グレートボア。大きな猪だったらしい。修三さんと麻宮さんで対処したそうだ』
『安心しました。俺はダンジョン転移しながら終わって無い場所があれば手伝ってきます。装備的な問題で突入が出来ない国とかあれば、人口ランキング151位以降のダンジョンは待機も念頭に置くように伝えて下さい』
『解った。伝えよう』
各国の待機部隊って基本12人だけど、12人で攻撃出来れば何とかなるよね?
ボウガン持って無くても魔法使える人が中心な筈だし。
◇◆◇◆
ロンドンダンジョン
『どうだハリス。ロンドンダンジョンのスタンピードは問題無さそうか?』
『ジェームズ中佐。それが……』
『どうした?』
『ダンジョン入り口から、魔物が出て来ません』
『なんだと? 魔王軍はスタンピード自体を抑え込む方法を持っているのか?』
『それは私では判断できませんが、魔物が出て来ていないと言う事が、ロンドンでの事実です』
『もし、それが事実であるなら、TBによる対処よりも安全だと言う事になるぞ』
◇◆◇◆
『ねぇ聖夜。各系統の上位種の指示が出せたら、外に溢れないのはいいけど、階層増えるたびに種族増えるでしょ?』
『あーそうだな』
『今ってここに人が入って来れないから、これ以上仲間増やせないし、新しい種族に命令できるメンバー居ないよ? これからどうするの?』
『そうだな。攫ってくるってわけにもいかないな。宗教でも立ち上げたら信者が集まらないか?』
『結構いけそうね。スタンピードで家族を亡くした人とか救いを求めて来るかも……』
『まぁ俺達も含めて、そのうち人に戻れる方法を探してるんだし。悪くない手段だろ』
『そうだね。でもさ、今回の成果で国によっては私達に連絡を取ってくるとこが出て来るんじゃ無いの? 私達に任せたらスタンピード自体を起こさないで済むから、既にTBより優れてる筈よ』
『問題はある。俺やエミが居ない中で各種種族を揃えて、ダンジョンに派遣するとしてだ。そいつらが本当にダンジョンスタンピードを抑制して、俺達の思い通りに動くかどうかが解らないだろ』
『各国にしてみてもダンジョン資源を完全に俺達に握られる状態になる上に、永続的な安全なんか信じる事は出来ないだろうしな』
『そうだね。魔物だしね…… 私達』
『当面は欲を出さずにロンドンだけで我慢して、世論の高まり次第で考えよう』
『聖夜。本当に王様になりそうだね』
『そうなればエミは王妃様か?』
『でも…… ウルフじゃ嬉しく無いかも……』
ロンドン十五層の対処を終えた聖夜は、メンバー四十名を集めてカルト教団を立ち上げる事を伝えた。
魔王教団入信者募集のホームページを立ち上げ、ロンドンダンジョンシティに訪れるサイコな信者を募る事になる。
意外に希望者は多かったが一度ロンドンダンジョンシティに入って行った人物が、戻ってくることは誰一人としてなかった。
ロンドンの魔王軍はそれから一月ほどの間に、千人を超える規模となっていく。
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