第99話 新たな武器

 攻略班のメンバー達を送り出した俺は、タラワダンジョンのボス部屋へと戻った。

 まずは、赤城の機関室に向かう。

 今までとパターンがちょっと違うんだよね。

 ダンジョンコアが、赤城の機関室の中にあるから。固有種配置とかどうなるんだろ?


 ダンジョンコアに触れ、固有種配置を選択すると、立派な艦長服を着たメタリックなゴーレムが現れた。


『赤城艦長です。指示を承ります』

『個体名は無いの?』


『赤城艦長が個体名です』

『そなんだ…… まぁいいや。眷属召喚とかした場合ってコアはどうなるの』


『艦体のみが召喚され、私がこの地に残りダンジョンコアを死守します』

『そうなんだ。納得。ゼロ戦アタックとかも使えちゃう感じかな?』


『マスターのMPを消費しますが、使えます』


 随分使い道は高そうだな。

 赤城にステータスポイントを真剣に振り分ける方向性がいいかも。


『ねぇ外装とかミスリルとかオリハルコンに換装できたりする?』

『できなくはありませんが、条件が厳しいと思います。排水量41300トンのこの船体の換装を行うのにはマスターの異次元ボックスの容量と、魔法金属の在庫の問題が出てきます』


『えーと仮に収納できた場合は、どんだけの魔法金属が必要なのかな?』

『合成のレベル分の一の容量です』


 うーんと、収納自体はLV8まで上げれば出来そうだけど、金属が5000トン以上必要になるのかぁ。

 ダンジョン鋼なら何とかなるかも知れないな。

 

 ちょっと今後の目標は出来たね?

 ゴーレム作成はどうなんだろ? 


『ゴーレム作成で作れるのって、何か制限があるのかな?』

『マスターが出会ったゴーレムタイプの敵であれば、保有魔石とMPを消費して作成可能です』


 なるほどね。

 って事は、ゼロ戦タイプは作れるって事か。空を飛ぶ手段は手に入行ったって事だね。


『ゼロ戦ゴーレムは操縦はどうするの?』

『手動操縦も可能ですが、マスターであれば念話で指示を出すだけで操縦可能です』


 おー! 子猫のおいらでも操れるって事だな!


 ゼロ戦に乗って「飛べない猫はただの猫だ」って、言ってやる。

 ジェット噴射で結構飛んでたけど、あれはあくまでもジャンプだからノーカンで。

 ゼロ戦なら重さは普通車と変わらないくらいだから、ミスリル製とかでも出来るかも!


 問題は武器だな。

 機銃なんて、これから先の敵じゃ役に立たないし、魔導砲みたいなのを作りたいな。


 イメージはどんなのが良いだろ?

 魔石からエネルギーを抽出してビームの様に打ち出す躯体かぁ。

 

 あ! 閃いた。


 俺はすぐに遠藤さんに連絡を入れた。

 幸いまだ日本に居たので、購入してきてもらう事にした。


 遠藤さんがLCに到着したら、実験開始だね。


 ◇◆◇◆ 


 今回は遠藤さん一人だから、既存の航空路線でLCセントルシアまで来て貰うから少し時間はかかる。


 このLCという国は最初に攻略したVCの北側に存在する国で、お決まりのようにGB連邦加盟国だ。

 一体GB連邦って何か国あるんだろ?

 暇だったからちょっとググって見たら、五十四か国もあるんだって……


 人口比率では世界人口の三分の一に近いそうだ。

 人口二位のINインドとかもあるからか。

 凄いね。


 まぁ政治的な強制力とかは今は殆どないから、ちょっとお願い事がしやすいとかそんな程度だろうけど。


 でも昔はこれに強制力があったんだから大英帝国って凄いよね。

 まさに世界の覇者だったんだろうね。


 そんな事を考えてたら、ユミさんから連絡が入った。


「ボス。LCのカストリーズダンジョンに到着したわ。私一人だと十層で落ち合うのはちょっと不安だから、転移は一層でお願いしていいかしら?」

『ああ。確かにそうだね、了解。じゃぁ一層でダンジョン転移するね』


 今回は結構早く二十回目の転移でユミと会えた。


「ボスの注文の品持って来たわよ。高圧洗浄機を三台って何に使うんですか?」

『気になる? まぁ出来上がってのお楽しみって事で。先に作っておきたいからちょっとそこで待っててね。折角だからシーフードレストランで食事でもしてきたらいいよ』


「解りました。じゃぁ一時間程外をぶらついてきますね」

『了解』


 俺は異次元ボックスに高圧洗浄機を放り込むと、まずは魔法融和性を求めて、全体をミスリルに換装した。

 次はAC電源で使用する部分を、魔石駆動に変更する。


 そして各種属性を付与した魔石をタンクの中に放り込み水で満たした。

 圧力は全体がミスリルで補強してあるので、ウオーターカッター並みの高圧にも耐えられる。


 これを起動して、一層のスライムを狙った。

 試しに使った魔石は雷属性の物だ。


『魔導砲試作機発射!』そう叫んでレバーを引いたけど、当然そこに流れる音は「ニャニャニャニャニャンニャン」だった……


 DE産の高圧洗浄機が銀色に光り輝くミスリル製に換装された発射口から、雷属性の魔法がビーム状に打ち出されて、水圧など関係無しの感じでスライムを一瞬で消し去った。


 うん。

 実験成功だな。


 後の二台も同じように改造して闇属性と風属性の魔石もそれぞれ試してみた。

 更に二種類三種類の魔石を入れた状態での発射も挑戦すると、属性の混ざり合った凶悪そうなビームが打ち出せた。


 これは使えるぞ。

 ダンジョン攻略のメインとなる程の武器だな。


 凄いのは、レバーさえ引けば誰でも使えるって事だ。

 まぁ属性魔石の補充が俺しかできないから、一般に売り出すような事は出来ないけどね。


 こんなもん商品として出したら、俺はただの属性魔石作成マシン扱いになっちゃうし……


 取り敢えず今回は、ユミに使わせてみよう。


 そして食事から戻って来たユミと共にカストリーズダンジョンの十五層に向かった。

 魔法の発射できる高圧洗浄機型魔導砲に感動したユミが十五層で無双していたが、ベースが高圧洗浄機だけに、連続使用が三分程度で水のタンクが空になる為、水の補充が結構大変だと解った。


 マジックバッグ一杯に水タンクを入れていても、一時間の連続使用は厳しい。

 まぁ連続で使わず確実にワンショットで決めて行けば結構、使えるんだけどね。


 そんな感じで新たな武器を手にして、十五層のスタンピードを迎える。

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