第93話 タラワ終了

 麗奈と咲がTBを追いかけて一番下の階層に降りて行くと、別のタラップから丁度ポールと修三も降りて来た。


「修三さん格納庫はどうでしたか?」

「ゼロ戦を整備しているゴーレムがおっての、そ奴を倒したら格納庫のゼロ戦が爆発を始めたんじゃ。早く進に伝えて脱出しなければヤバいと思って降りて来た」


「そうなんですね。最悪ギリギリヤバくなったら、みんなエスケープの魔石はあるから、大丈夫だとは思うけど」

「そうじゃの。それとよくわからん鍵を拾ったからそれを進に届けようと思っての」


「あー鍵、私達も拾いました。やっぱり攻略に関係ありそうですね」

「TBを早く見つけなきゃ」


 四人で合流して赤城の下層でTBを探していると、なにやら良い匂いが漂って来た。


「麗奈? これってカレーの匂い?」

「わしは随分若返ったから加齢臭は無くなったと思うが?」


「修三さん……違います。カレーライスの匂いです」

「おおそうか。軍艦だけに海軍カレーかの」


 匂いの元を辿って扉を開けると、そこにTBとキムさんも居た。

 って言うか、カレー食べてた。


「社長。何食事してるんですか? ていうか猫なのにそんなに香辛料強いのとか玉ねぎたっぷりのカレーなんか食べたら、体調悪くなりますよ?」

『ニャ。カレー食べてるのキムだけだから』


「ブリッジと格納庫でそれぞれ鍵を手に入れたんですけど、使う場所が解らないから取り敢えず持って来たよ。キムさんよくそんなよく分からないもの口に入れれますね」

「ボスが『意味がある筈だから食べて見ろ』って言うから、しょうがなく食べてた」


『あーありがとう。恐らくさっき入れなかった機関室の扉に入る鍵だと思う。カレーは絶対意味ありそうだろ?』


「確かにそうだけど、毒とかだったらどうするの?」

『青ポランク5まであるからそうそう死なないだろ?』


「相変わらず緊張感ないですね。上の格納庫で整備士ゴーレム倒したら、誘爆始めちゃったらしいからヤバいかも知れないし、急ぎましょう」

『あー解った』


「ボス。カレーの中から鍵が出て来た」

『キム。なんか汚いから洗わずに渡さないで』


 皿の上に鍵を戻させると、咲に洗ってきてもらった。

『これで鍵が三個か、他の部屋は一通り見たしこれで全部だろうね? 取り敢えず機関室に行こう』


 上の格納庫で誘爆をしてるという割に、このフロアに音とか聞こえないのを不思議に思いながら、機関室に向かうと扉に鍵穴があった。


『この鍵穴で良いのかな? でも一つしかないね』


 そう言いながら鍵を使うと合うのは一つだけだった。

 扉の中に入ると、入って来た扉が勝手に閉じ、扉は消えた。

 部屋の中には何もなく反対側に扉がまた一つあるだけだ


 先に進み再び扉の前に立つ。


『ちょっと咲。その刀で扉とか壁が斬れるか確かめて? ポールはエスケープが使えるか試してみて』


 咲のオリハルコンソードを使った居合斬りでも扉を斬る事は出来なかった。

 正確には刃がすり抜けたような感じだ。

 手で扉を触っても普通に鉄の扉なのに不思議だ。


 そしてポールの使ったエスケープの魔石も反応しなかった。


『やばいね完全に閉じ込められるとこだったな』

「鍵一つだけ持って来てたりしたらここで閉じ込められてオワコンだったの?」


『かもね。まぁ取り敢えず進んでみなきゃ解らないし、開けてみよう』


 そう言いながら扉に二つ目の鍵を差し込むと、ここも扉は開いた。

 中に入っていくと、再び入って来た扉は消えて、新たな扉が現れた。


『行くしかないね』


 そう言いながら、三つ目の扉の鍵を開ける。

 すると、そこにはやっと機関室らしき場所が現れ、このゴーレムのコアであるだろう大きな魔石が存在した。


「でも……近づくと絶対敵が現れますよね? パターン的に」

『だろうね……でも取り敢えずあれを破壊するしか無さそうだし。麗奈。ちょっとクロスボウで狙って見て』


「はーい」


 そう返事をしてオリハルコンアローに風属性を付与した矢でコアに狙いを定める。

 矢がコアに直撃する寸前で結界のような物に阻まれて、コアの周りに黒い霧が立ちこめた。


 その霧の中から、大量の海軍兵士のような姿をした敵が現れた。


「TB。あれはゴーレムだよ」


 素早く鑑定を掛けた咲が教えてくれた。

 

『取り敢えずみんなでゴーレムの対処をして。俺はコアの処理を出来る方法考えるから』


 五人がゴーレムと戦ってる中で、コアまで駆け寄るとやはり結界があってコアに触れない。


『キム。この艦のエンジンを壊して見て』

「了解」


 キムが修三祖父ちゃんを連れてコアの後ろにある、エンジンを破壊しに向かった。

 俺はその間、咲と麗奈を手伝って、海兵風ゴーレムを倒した。

 弱くはないけど特別強くもない。

 ただ延々と湧きだしてくるのが厄介だ。


「ボス。格納庫のパターンだと、ゴーレムを作り出すゴーレムが居たんだが、ここにも同じような存在が居ないのか?」

『ポール。それって格納庫だとどの辺りに居たの?』


「湧き出してくる場所だな」


 確認してみるとゴーレムはコアの側から湧き出してきていて、恐らく結界の中だ。

 結界と言えども強度の設定はある筈だし、壊れるまで殴り続けるのが正解かな?


 そう思いながら、攻撃を加えてると、修三祖父ちゃんが報告して来た。

「エンジンの破壊に成功したぞ」


 その声が聞こえた時に、結界も消え去った。

 それと同時に、海兵型ゴーレムも力なく崩れ落ちていった。


 どうやらこの船のエンジンが全ての動力源だったみたいだ。

 コアクリスタルに近寄ると声が聞こえて来た。


『ダンジョンナンバー1177クリア。ダンジョンマスターとなるか消滅させる事を選べます』


『へ? もしかしてボスがエンジンだった?』


 まぁいいや。

 エンジンの側に近づくと、モンスターコアらしきものが転がっていた。

 俺はそのコアを吸収すると再び声が聞こえる。


『ネームドモンスター『赤城』のコアを吸収しました。【ゴーレム作成】スキルを獲得しました』


 エンジンが存在した場所には魔法陣が浮かび上がり、そこから脱出が可能だった。

 取り敢えずダンジョンマスターを選択して指示を出す。


『みんなはこの魔法陣から外に出て、次のLCに向かってね』

「了解です社長」


 そう指示を出すとポールが声を掛けて来た。


「ボス。次のLC何だが、恐らく一次ダンジョンの十五層スタンピードが三次ダンジョンの十層スタンピードと重なって発生するだろ? どう対処する」

『あー。そうだねぇ。どうしよう。ちょっと俺だけで判断できないから、一度ここの一層にみんなで集まろうか。俺も日本のNDFの長官に連絡してみるよ』


 そう伝えると、俺も一度みんなと一緒に一層へと戻った。

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