第92話 赤城

KRのキムが教えてくれた。

「あの艦影は太平洋戦争当時の日本海軍の空母で赤城ですね。初期の三段式でなくでなく一段全通式に改造されてからの艦影です」

『日本人の俺達より日本の艦船に詳しいとかなんか凄いね……』


「職業柄日本の軍事に関する知識は勉強してるからねボス」


 スパイってそんなことまで勉強するんだぁ。

 って少し感心したよ。


 まぁ俺は自衛官だったけど陸自だからね。


 その巨大な艦影を眺めていると、今度は当然のように艦上の滑走路からゼロ戦が湧き出る様に飛来して来た。


 ゼロ戦からの機銃掃射と同時に、赤城からの砲撃も始まった。

 コックピットを覗き込んでも人の乗ってる気配はない。


『ちょっと砲撃や機銃掃射を避けながら戦うんじゃ分が悪いから麗奈と咲と修三祖父ちゃんとポール以外はエスケープの魔石を使ってここから脱出して』

「「「了解ラジャー」」」


『あ。ちょっと待ってキムって赤城の船内の構造もわかる?』

「大体は理解しています」


『それなら、キムは案内で残って』

「了解です」


『麗奈。鑑定はどう?』

「えーとね。ゼロ戦は飛行機の形したゴーレムですね。弱点は雷属性です」


 咲以外は4人ともクロスボウも持っていたので雷属性を付与したミスリルアローで狙い撃ってもらった。


 効果は抜群だけど…… ミスリルアローが海の中にボチャボチャ落ちるから…… 経済的じゃないな。

 それならまだ、俺の電撃の方が経済的かと思って雷魔法で狙い撃った。


 ゼロ戦は対処できるけど、このままじゃ進展はないな。


『咲、どうしたらいいと思う?』

「そうねぇ。やっぱりあの大きな空母を沈めるか、あの船に乗ってるかもしれないボスを倒すしか無いのかな?」


「あ。社長。あの空母もゴーレムですね。どうやら空母本体がボスみたいですよ」

『まじか。でもゴーレムならどこかにコアがある筈だな。乗り込んで手分けして探そう』


「「「了解」」」


 船が無いと近づけないな? と思っているとちょっと閃いた。

 ダメもとで使ってみるか! 【眷属召喚】ジャック


 スケルトンの海賊を呼んでみた。


『呼んだかマスター』

『うん、ジャック海賊船って出せる?』


『任せろ』


 ジャックが海賊船を呼び出したのでこれで近づけるかなと思ったけど、ジャックの船だと動きが遅すぎてゼロ戦の的になるだけだった。


 あっという間に穴だらけになって沈没した。


『ジャック。海賊船弱いな』

『我の強さに準ずるので、今のステータスだとこのダンジョンの敵が相手だと分が悪い』


 こうやって眷属召喚でジャック達に活躍して貰う必要性がある以上、俺のステータスをある程度割り振って上げなきゃならないと思った。


 その為にはもっと頑張って狩しなきゃいけないな。


『ジャックここが終わったらステータス上げて上げるね』

「楽しみにしておくぞマスター」


 次はトリトンを呼び出してみた。

 トリトンは動きも早いし大きなジャンプも出来るからどうにかなるよね?


『トリトン。ここにいる五人と俺を乗せて赤城の甲板の高さまで飛び上がれる?』

「大丈夫よ、落ちないでね」


 トリトンの背中にしがみ付いて赤城の側に近づいた。

 艦砲射撃は続いているけど、俺達を乗せたまま一度深く潜ってそこから一気に飛び上がった。


 体全体を横回転に回すような感じで俺達を甲板に落とすとトリトンは再び海へと戻った。


『トリトン潜るなら先に言ってよ。みんなずぶぬれじゃん』

『あら。駄目だった? でもオーダー通りにその大きな船の上に乗れたでしょ?』


 まぁ確かにオーダー通りだし、方法を指定しなかった俺も悪いなと思って、お礼を伝えて戻って貰った。


「社長服着たままの潜水って気持ち悪いです」

『ちょっと乾かすな』


 そう言って風魔法でみんなを乾かした。


『六人いるから二人ずつペアで艦内のコアを探そう。俺とキム。咲と麗奈。祖父ちゃんとポールで行こう。麗奈と咲は滑走路の左舷に艦橋ブリッジがあるからそこを頼む。ポールと祖父ちゃんはゼロ戦の格納庫をお願い。俺とキムは機関室を目指そう。案内は任せたよキム』

「「「了解です」」」


 ◇◆◇◆ 


 咲と麗奈はブリッジに向かうと、操舵室へと突入した。

 そこには、旧大日本帝国海軍っぽい姿のクルーがせわしなく動き回っていた。


 私達が入って来たこともまるで、気にしてるような気配はない。


 取り敢えずジャッジホンで鑑定を行う。


「あれ? 咲この人たち写真に写んないから鑑定出来ないよ」

「んー……どういう事だろうね?」


「って言うかさ、全然攻撃してくる気配もないよね」

「良く見たら…… ちょっと透けて無い?」


「た、確かに。この人たちってもしかして魔物じゃ無くて、純粋に幽霊?」

「キャッ。幽霊って言われると急に怖くなったよ」


「咲。魔物は怖くないくせに、幽霊は怖いって変じゃない? まぁいっか取り敢えず浄化してみるね」


 そう言って麗奈が浄化を発動すると、ブリッジに居た人たちは光に包まれながら、消滅して行った。


「麗奈。除霊師とかで食べて行けるかもね」

「ダンジョンがなくなったら考えるよ」


 乗組員たちの消えた後には大きな総舵輪ステアリングにかけられるように金色に輝く鍵がかかっていた。


「何のカギかな?」

「取り敢えずTBの所に持って行けばいいんじゃないかな?」


「そだね。もうこのブリッジは他に何も無さそうだし、下に向かおうよ」

「うん」


 ◇◆◇◆ 


「ここが格納庫になってるんじゃな。次から次にどんどん上に上がって行ってるのに、全然格納庫のゼロ戦の数が減っておらんな」

「修三。一番奥を見て見ろ。ゼロ戦がどんどん湧き出て来てる。ゴーレムゼロ戦の製造工場みたいな感じだ」


「ポール殿。あのゼロ戦が湧き出てくる場所を破壊したいの」

「そうだな。ゼロ戦は雷属性だったな。俺の槍はミスリルサンダーランスだからきっと行ける筈だ」


 二人で見当をつけてゼロ戦が湧き出してくる場所へ向かうと、そこにはスクラップを拾い集めて、どんどん修理をしながらゼロ戦を送り出すゴーレムが居た。


「こいつは、戦闘能力は無さそうだけど止めなきゃ延々とゼロ戦作られても困るのう」

「あー。躊躇する必要は何もない」


 そう言いながらポールが整備士ゴーレムを破壊した。

 それと同時に、この階層のゼロ戦が爆発炎上し始めた。


「ヤバいぞポール殿。下層に向かったTBとキムが脱出できなくなるかもしれん。上が燃えてることを伝えに行こう」

「了解だ。あ。修三そこになんか鍵が無いか? やたらキラキラしてる」


「確かに、どこのカギか解らぬが取り敢えず持っていくかの」


 ポールと修三も最下層の探索をしているTBを追いかけた。

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