第91話 タラワダンジョン

 KIは太平洋上にある赤道直下のギルバート諸島、フェニックス諸島、ライン諸島の一部等を領土とする、GB連邦加盟国である。


 近年の地球温暖化によって領土の殆どが水没の危機を迎えている。

 主要産業も大きなものはなく、世界で最初に日付が変わる国と言う以外には取り立てて大きな話題の無い国でもある。


 ただし広範囲に島が点在してるので排他的経済水域だけは世界3位と言う広大な面積を誇り、漁業権益も重要な外貨獲得手段になっている。


 過去を振り返れば第二次世界大戦当時に日本が実効支配し、USとの激戦地になった歴史があり、現在でもその当時の残骸が残っていたりもする。


 でも……その当時の大日本帝国ってなんでこんな美しい環礁があるだけの場所を、手に入れようとしたのかな? 意味わかんない。


 ダンジョンはこの国のボンリキ島と言う国際空港があるタラワ環礁に出現していた。

 各国の二次ダンジョン十層のスタンピードを終えて、再び日本の横田基地に集まったDキューブのメンバー達がプライベートジェットを使って、到着したのは三日後である。


 俺も麗奈からのタラワダンジョンへの到着報告を受けると、ダンジョン転移を繰り返して、七十回目の転移で漸く合流する事に成功した。


 現時点で九十か所の転移可能ダンジョンがあり、ランク3になると百八十か所に増えてしまう……

 ランク3特典で転移先が指定できるようにならないと、結構きっついよな。


「社長! 久しぶりですー。こんなに長く社長と離れた事無かったから寂しかったですー」


 そう言いながら麗奈が俺を豊かな胸に抱きしめてくれた。

 日本のメンバー以外は、今回各自が母国のスタンピード攻略に協力し、Dキューブ初期メンバーがみんなスキルホルダーとなって戻って来ていた。


 これで、スキル持ちじゃ無いのは修三祖父ちゃんとUSの二人だけか。

 今度スキルオーブ出たら優先で取らせてあげたいな。


 いや…… 待てよ?

 もしかして異次元ボックスの作成を使ってスキルオーブも魔石使って作れるとか無いか? みんなで十四層に移動した後で狩はメンバーに任せて実験を始めた。


 まずは五層の敵から落ちるLV5の魔石に風魔法を合成してみようとしてチャレンジした。

 あーこれじゃ駄目かな…… 完成したのは風の初期魔法が一度だけ発動できるエアカッターの魔石だった。


 どうやら普通の魔石じゃ駄目なようだ。

 でもスキルオーブならどうだろ?

 ドロップ確率は低いけど、何が覚えれるか解らない情況じゃ無くて俺が付与できる内容に限定されちゃうけど、覚える種類は指定できそうだな。


 まぁこの辺りは今後も要研究って事で!

 

 ◇◆◇◆ 


 タラワダンジョンでの狩りを始めて三日目にジェフリーから連絡が入った。

 人口ランキングのTOP30に入る各国


IN インド

ID インドネシア

PK パキスタン

BR ブラジル

NG ナイジェリア

BD バングラディシュ

MX メキシコ

ET エチオピア

PH フィリピン

EG エジプト

VN ベトナム

CD コンゴ民主共和国

TR トルコ

IR イラン

TH タイ

IT イタリア

ZA 南アフリカ

TZ タンザニア

MM ミャンマー

KE ケニア

CO コロンビア

ES スペイン


 現状既に参加している八か国に加えて、上記の二十二か国の六次ダンジョン発生国に対して、NDFの島長官からの要望を受け入れDキューブへの人員派遣を許可した。

 

 当然のように、参加させて貰えるとなるとダンジョン防衛に関して大幅なアドバンテージを得る事になるので、各国とも二つ返事で派遣を決めてきた。


 国の情勢など色々問題点のある今回の決定だけど、ダンジョンの危機から世界を守るという観点では主義主張などは関係なく受け入れを決定した形だ。


 人口ランキングで三十位以降の国家からはGDPで決定するべきでは? などの意見もあったようだけど、実際にダンジョンの出現が人口比率で現れている状況なので、今回の決定は、間違いではないと思う。


 Dキューブとしてもっと大きく受け入れが行える状況であればいいんだけど、実際問題として俺が面倒を見ると言う事を考えると現在の他国から57名(GBのみ1名)と言う人数でも十分大人数だし、しょうがないよね。


 俺が日本語しかできないので、参加メンバーは原則日本語理解者とした為に、ほぼ八割は諜報畑の人員が派遣されているのは、まぁしょうがないかな……


 アフリカの国なんかが普通のダンジョン攻略班で日本語理解者が居る可能性なんて殆どあり得ないだろうしね?


 基本的なダンジョンに対しての知識は既に持っているメンバーばかりだと言う事で、メンバーの決定から二日後にはDキューブのプライベートジェットが横田まで新メンバー達を迎えに行き、ジェフリーや修三爺ちゃん達と共にタラワダンジョンにやって来た。


 海外組五十七名と修三祖父ちゃん、麗奈、咲、鮎川さん、遠藤さんの六十二名体制となる。

 遠藤さんはロンドンの件でまだこちらに戻って来てないけど、六十一名のメンバーを三交代制で二十四時間体制の攻略を進めて行く事になった。


 追加メンバーの到着から三日後KIタラワダンジョンは十四層にボス部屋が出現した。


 それと同時に五次ダンジョンの五層スタンピードが起ったけど、五次ダンジョン以上のある六十か国では流石に五層スタンピードで今更大きな問題が起こるわけでも無く、日本においてもNDFが彩の指揮で無事に被害なしでの撃退に成功する事になる。


 そして問題の十四層に現れたラスボスは……


「社長? あれがラスボスですってやばくないですか」

『うーん。あれはジャックの時と同じでステージオブジェだと思うけどな?』


 目の前には巨大な空母のような艦影が浮かんでいた。

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