第94話 ロンドンダンジョンシティー
『聖夜。15層が現れたね。次のスタンピードまで恐らく一週間も無いよ?』
『エミ。今の俺達のステータスだと恐らく15層は楽勝だから、先にユミとの交渉をすすめてくれ』
◇◆◇◆
エミの姉の遠藤ユミは、島長官の指示を受けてGBを訪れていた。
「ハローよろしくお願いします。君も所属してるD³に派遣されてるポールの相棒をしていたジョージだ」
「こちらに滞在中はよろしくお願いします」
「俺も魔王軍を名乗る連中から最初に取引を求められた時に、一緒に10層に居たから大体の事情は理解している。それで今回の要求なんだが、ロンドンダンジョンシティーの全域を魔王軍に渡せと言う事だが、まじか?」
「そうね魔王軍を名乗る勢力からは、そう言う風に言ってきてるわ。それで今後もこの区域の被害を食い止める事が出来ると」
「軍として考えればそれでも構わないんだけどな。実際今は人が住んでない状況だから。ただな……」
「女王陛下の宮殿よね……」
「ああ300年の伝統を誇る由緒正しい宮殿だからな……」
「でも、既に前回のスタンピードで建物の強度とか考えたら使用するのは無理があるでしょ?」
「そうだな。王室にはGBの安全保障との引き換えで納得してもらうしかないな。具体的に引き渡すって言ってもどうするんだ? 相手の姿は見せて無いんだろ?」
「今のダンジョンシティーの防壁を修理して内部への立ち入り禁止が条件ですね。それを守ればロンドンダンジョンシティーの外へのこれ以上の魔物の流出は抑えられるそうよ」
「それに対しての引き換え条件はダンジョン産のアイテムや薬品を売ってくれるって話だろ」
「そうね現状でミスリルやランク4までのポーション類はあるそうよ」
「どれくらいの量があるんだろ?」
「それは明かさないでしょうね値崩れを起こしても困るだろうし」
「だろうな」
◇◆◇◆
ロンドンの状況を確認して、エミに対して連絡を入れたが、それでも会う事は拒否をされた。
GBのダンジョン防衛の責任者であるジェームズ中佐も、この案件は取り敢えず飲んでくれて、宮殿を中心に取り囲まれた3㎞四方のロンドン中心地は完全に魔王軍を名乗る勢力に渡す事になった。
その後防壁修理は滞りなく行われ、それに対してダンジョン物資による支払いを受ける事になる。
その後航空写真や衛星写真により、ダンジョンシティ内の監視は行うが、魔物の姿は普通に存在しており、特に宮殿付近に現れる40体程の魔物が理知的な行動を取っている事が確認された。
この40体はスタンピードと関係なしにダンジョン内とダンジョンシティの行き来が出来る様で、これが魔王軍であろうと正式に認定される事になるが、現状はGBとの約束を守り防壁外へ魔物が出る事が無いように、ダンジョンシティ内の魔物の駆除も行っているようだ。
『一体何がしたいのエミ? 青木警視も居るんでしょ?』
『そうね。今はまだ決まって無いけど、女王様気分で暮らすのも悪く無いって解ったから、そのうち仲間を増やして世界征服でも目指そうかな?』
『そんな事は、私が絶対許さないわ』
『ええ。お姉ちゃん怖いよ』
『15層は来週スタンピードの予定だけど、大丈夫なの』
『自分たちの心配をした方が良いんじゃない? どうせTBだよりだろうけど、180か所もTBだけじゃどうにもならないんだし』
『まぁいいわ。取り敢えず約束は守ってよ。もしロンドンがスタンピードで魔物を溢れさせれば、そのTBが突入してあなた達に向かう事になると思うよ』
『その時はGB全体が破滅を迎えるかもね? 知ってる? 今の私達の戦力はダンジョンランキングの100位以内のメンバーだけでも40人居るんだからね。それに私達がもし強くなった秘密を公開すれば便乗する世界中のテロ組織なんていくらでも出て来るでしょうしね』
『エミ…… やっぱりあなた達は知性を残したまま魔物の姿になってるの?』
『それは内緒って事で』
日本に帰り島長官とも話した結果、予測の域は出ないが魔物のコアを摂取して理性を持ったまま魔物化しているで間違いないだろうと言う見解だった。
決定的にそう思わせたのは、現時点でまだ他のダンジョンでは出現が確認されていない魔物種。
ゴブリンやウルフ、スライム等の上位種らしき個体が衛星写真で確認されているからだ。
「長官。あれがエミや青木警視の今の姿と言う事なんですか?」
「様々な状況を考えるとそう見るのが現時点では妥当な判断だろう。ただしロンドンに関しては現状彼らのお陰で、被害が今以上に広がっていないことも真実だ。早急に排除というのも違うと思う」
「TB達よりも上位の実力を持っている可能性はないですか?」
「それなら、もっと強気に出て来るだろうし、TBは既にエリクサーやオリハルコンも開発しているのだから、まだ実力には差があると判断しても良いだろう。それよりも実際各国の一次ダンジョン所在地である首都近郊は、殆どの国で生活困難区域になっている。かろうじて生活圏が失われていない日本やUSの方が特殊なくらいだ。それに比べればロンドンもダンジョンシティ内部を除けば人が生活出来ている以上、魔王軍の存在は重要であると判断できる」
「私自身エミたちに対抗できるように、D³の討伐班に合流して、実力を身につけたいと思いますが、帰属してもよろしいでしょうか?」
「その件は大丈夫だ。ただし妹さんからの連絡が入った場合は、綿密に私に連絡をして欲しい」
「了解しました」
一次ダンジョン15層スタンピードまで一週間を切った状態で、私はD³へ合流する為にLCへと向かった。
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