第88話 【閑話】二次ダンジョン十層スタンピード

(麻宮咲)

 私はポンペイ島のパリキュールダンジョンから久しぶりの日本へと戻った。

 二次ダンジョン大阪梅田ダンジョンの十層スタンピードへ協力するためだ。


 今までダンジョンにはずっと関わって来たけど、スタンピードの対応をする為にダンジョンに入るのは今回が初めてだからちょっと緊張する。


 成田から麗奈と一緒に、代々木ダンジョンシティに隣接する私達の事務所兼自宅へと戻った。


 家へ着くと洋子さんと穂南ちゃんが出迎えてくれた。


「お帰りなさい。咲ちゃん。麗奈ちゃん。ずっと海外で活動してると気が休まらないでしょ? 今日は久しぶりの和食を用意してるから、先にお風呂に入っておいで」

「はい。気を使って頂いてありがとうございます」


「さっすが社長のお母さんですね! 私達の望みそうなことをよく理解してらっしゃいます!」

「ちょっと麗奈。図々しいのは駄目だよ?」


「ごめんなさーい」

「いいのよ気にしなくて。それより進はどうなの? ダンジョンからは、まだ出られそうにないの?」


「やっと今回のポンペイ島でマスターレベルが2に上がったから、恐らく後四か所か五か所のダンジョンを攻略しないと出られそうにないと言ってました」

「そうなんだね。でもあの子ならきっと大丈夫だよ。あら? そう言えばお祖父ちゃんは一緒じゃ無かったの?」


「あー、修三さんはTBに頼まれてDFT社に納品に行ってます。あそこの松田部長さんって言うTBの自衛隊時代のお友達の方が納品を急いでくれって泣きついてたので」

「あーそうなんだね。ここからだと場所が近いんだから一度帰って来てから行けばいいのにねぇ」


「なんだか最近すっかり若返られてやる気満々なんですよ。そう言えば洋子さんも一段と若返られましたね。もうすっかり穂南ちゃんのお姉さんで通用するレベルじゃないですか?」

「あらやだ。本当かい? 咲ちゃんにそう言ってもらうと嬉しいね」


「咲さん。お母さんをあんまり調子にのせないでくださいね? 最近ダンジョンでお祖母ちゃんと一緒に鬼気迫る勢いで狩り続けるもんだから、もうすっかり代々木でも有名人になって来てるんですよー」

「えっ? お祖母ちゃんって幸子さんもダンジョンに行かれてるんですか?」


「うん。そうなんだよ。アシュラフさんの所に行ってた時にお祖父ちゃんが随分若返って来てたでしょ?」

「確かに……」


「それでね、このままじゃお祖父ちゃんが若い女と浮気するとか言い出してね。あ、お祖母ちゃん帰って来た。お祖母ちゃん。咲さん達帰って来てるよー。ちょっとこっちにおいでよぉ」


 外出から帰って来たTBのお祖母ちゃんである幸子さんが玄関から入って来ると、何故か修三さんも一緒に居た。

 びっくりしたのは、幸子さんの見た目だった。

 私達がTBと一緒に海外に出発する一月半程前には、年齢通りの70代のお祖母ちゃんだったのに、そこに居たのは精々アラフォーの、それこそ私達が旅立つ前の洋子さんとそっくりの女性だったからだ。


「修三さんとご一緒だったんですね。お待ち合わせでもされてたんですか?」

 そう尋ねてみた。


「あら、お帰りなさい咲ちゃん。待ち合わせしてたわけじゃ無いんだけどね。この爺さんが私に声かけて来たんだよ。しかも私だとも気づかずに平然と『そちらの素敵な方。お茶でもご一緒していただけませんか?』とか、もうナンパする気満々で」

「いや。それはじゃな別にナンパとかそう言うのではなくて、余りにもわしの好みのタイプじゃったもんだからつい話がしてみたくなっただけなんじゃ」


「あー、幸子さん。まー良いじゃないですか。修三さんの好みのタイプは結局幸子さんだって事が良く解ったんだから」

「まぁ確かにそう言ってもらえればそうなんだけどね。なんだか釈然としないんだよね」


 麗奈がこの状況を楽しむように声を掛けた。


「私たちから見ても、現役世代の素敵なカップルにしか見えないんですから、いいじゃないですか? このまま久しぶりに二人っきりでデートでも行かれたらどうですか? 久しぶりに燃え上がれますよ?」

「なんだか麗奈さん発言がおばちゃんっぽい」


「えーそんな事無いでしょ? 穂南ちゃん。私は花も恥じらう現役女子大生なんですからね!」


 結局修三さんと幸子さんは二人で手をつないで、そのまま出かけて行った。

 幸せそうで何よりだよね!


 ◇◆◇◆ 


 それから四日が経過して、パリキュールダンジョンで各国の攻略班達へのジャッジフォンの作成を終了させて、鮎川さんと遠藤さんも日本へと一時帰国してきていた。

 この二人は今回はダンジョンへは向かわずに、島長官の下でスタンピード終了までオブザーバーとして待機する事になる。


 TBが用意してくれた新しい武器を、遠藤さんが手渡してくれた。

 オリハルコン製の凄い刀だ。


オリハルコンサンダーアクアソード


 STRに+50と50%の付与が付く上に、雷属性と水属性の2つの属性が付与してある。


修三さん用の槍はオリハルコンダークアクアランス

彩さん用の槍はオリハルコンサンダーウインドランス


麗奈のボウガンはオリハルコンボウガンと各種属性アロー


 これだけの備えがあれば、万が一にも撃退失敗は無い筈だ。

 すでに私たちの下着やマジックバッグは全てLV2へとアップグレードも済んでいる。


 修三さんと麗奈と三人で大阪の梅田に向かった。

 梅田では彩さんが待っていた。


「久しぶり咲ちゃん。麗奈ちゃん。どうなの? 随分強くなったんでしょ?」

「ええ、おかげさまでTBにみっちり鍛えられてます」


「そうなんでしょうねぇ。私のランキングがどんどん落ちて来るから、相当ハードな狩りやってるんだろうね? って予想してたよ。一体あなた達のランキングってどれだけ高いの?」

「えっと…… 麗奈が不動の二位は変わらないんですけど…… 私が今は五位ですね」


「なんかもうめちゃくちゃだね。でもあなた達ってメンバーの数TB込みで確か十八人だよね?」

「そうです」


「おかしいんだよね。私だって今までと変わらないくらいはちゃんと最前線で狩はしてるし、そんなにランクが落ちる訳ないんだけど、かろうじて一桁台の九位がずっと定位置だったんだけど、この一月で四十位まで落ちたんだよ」

「他の国の人達もめちゃ頑張ってるんでしょうね?」


「うーん。どうやらそれだけでも無さそうなんだけど、まだ確証が無いからこれ以上は口にしてもしょうがないかな?」

「なんだか気になりますね。スタンピード終わったらゆっくり聞かせて下さい」


「了解だよ」

「TBから新しい武器預かってますから渡しますね」


「サンキュー超助かる。ねー今までの武器ってNDFでそのまま使わせて貰ってもいいのかな?」

「大丈夫だと思いますけど、一応TBに聞いて見ますね」


 TBにラインで連絡して許可を貰ったから、私達の今まで使っていたミスリル武器なんかも、取り敢えず彩さんに預ける事になった。

 そして他の装備品も彩さんの分だけ渡したのだが……


「ねぇ麗奈? 嫌がらせかな?」

「え? それしか予備が無かったので…… 大丈夫です。ちゃんと詰め物も用意してますから!」


 新しい怪力ブラは在庫の都合上、彩にもFカップの物が渡されていた……

 ちょっと彩さんが怖かった。


 スタンピード自体は、TBからの連絡が入ってすぐに突入して、麗奈のアクアアローと修三さんのランスの一閃であっけなく終わった……


 終了後の会見で彩さんの胸部がいきなりボリュームアップされたことがネットで話題になっていた。

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