第86話 マスターランク2と眷属召喚

 十三層のボス部屋の扉を開けると、見事なサンゴ礁に囲まれた小島の上に出た。


「ジープ島?」

『なにそれ?』


「前にテレビでやってた、絶景の景色の島に似てるなーって思って」

『へー、でもボスはどんな奴が出るんだ?』


 取り敢えず麗奈にジャッジホンを構えさせると……


 島の四方向から黒い塊が一斉に飛び上がって、バブルリングみたいな輪っかや、ウオーターカッターのような鋭い水攻撃を放って来た。


「イルカ?」

『イルカだな。みんな。島自体が小さいから、避けるの大変だけど取り敢えず当たらない様に避けるのに専念しててくれ。あのウオーターカッターに当たるとヤバそうだし』


 4体のイルカ型の魔物をオリハルコンサンダーダガーで切り刻んで倒すと、ひと際大きなピンク色のイルカが現れた。


クイーンドルフィンLV39

スキル

 水魔法LV5

 テイルアタック

 ファントムソナー


弱点

 雷


 ピンクのイルカが、甲高い音で鳴き声を上げると、俺以外のメンバーがみんな耳を抑えてしゃがみ込んだ。

 俺はきっと、蝙蝠系の怪音波スキル取得してるから、耐性があったんだろう。


 俺はピンクなイルカの背中に飛びつくと爪をがっちりと突き立てて、雷を連発し、倒す事に成功した。


 イルカが姿を消すとコアが転がっていた。

 あれ? 初めて気づいたけどダンジョンボスって十秒ルールでコアが一緒に消えたりしないの?


『ネームドモンスター『トリトン』のコアを吸収しました。【眷属召喚】スキルを獲得しました』

『ダンジョンナンバー1178クリア。ダンジョンマスターとなるか消滅させる事を選べます』

『マスターランクが2に上昇しました』


 おお、続けざまにメッセージ来たなー


 小島の中央部分にダンジョンコアと転移魔法陣が現れ、ファントムソナーでしゃがみ込んでた連中も、ボスが撃破されると効果が切れたようで復活して来た。


「社長、ヤバかったです。社長は何で平気だったんですか?」

『おそらく、蝙蝠の怪音波スキル持ってたから音属性の耐性があったんだと思う』


「それは、同じようにアイテム化出来るんですか?」

『うん、魔石に付与するんだったら、スライムの魔石とかでも大丈夫かな?』


「それも作ってて下さいね」

『解った。みんなは二次ダンジョンの十層スタンピードが終わるまでそれぞれの国に戻って対応して貰いたいな。鮎川さんと遠藤さんは少し頼みたい事あるから残って欲しいけど』


「いいですけど何をするんですか?」

『取り敢えず、二次ダンジョンの対応を世界中で出来るだけ被害なしでクリアしたいし、二次ダンジョンがある百五十か国のうち、ジャッジホンを持って無い国が百四十二か国あるだろ?』


「そうですね」

『島長官に連絡して。その百四十二か国のステータスホルダーを二人ずつ一度ここに連れて来て貰うように伝えて。金額的にはサービスはしないけど、それじゃ嫌って言う所は無理に来なくてもいいよ。一度日本に集まって貰ってそこからチャーター便で飛んでくれば三百人くらい一便で来れるだろ? チャーター機とかは全部Dキューブで負担するから』


「解りました。至急連絡とります」


『で、遠藤さんと鮎川さんは、その便が到着したらその人たちの案内を頼むよ。作業自体は一層でやるけど、結構大変そうだしね。他のメンバーは二次ダンジョンのスタンピードが終わったら、次の予定地KIで集合にして置いてね。そこもGB連邦加盟国だし、ここからはヘリで移動できる距離だから、ポールに調整頼んでいいかな?』

「OKボス。さっさと終わらせて戻って来る」


『ポール、ロンドンはまだ動きが無さそうか?』

「今の所はスタンピードも無いし、ロンドン辺りは魔物だらけで一般人は近寄れないからな」


『そっか…… 色々大変だけど、一番気になる場所であるのは、間違いないから情報収集だけは頼むね』

「ああ、了解だ」


 一通りの指示を出し終わると、俺はこのダンジョンのダンジョンコアとの対話を始めた。


 マスターランクが2に上がった事で、ランダム転移で行ける範囲がぐんと広がっていた。三次ダンジョンが出現していない国ならば、一次ダンジョンと二次ダンジョンののすべてが対象となる。


 めちゃ便利かも……


 すぐに遠藤さんを呼んで、三次ダンジョンが出て無い国で二次ダンジョンがある三十か国は、全て俺が直接転移で中ボスに対応する事にして、ダンジョンシティ内の対応だけをして貰う方針に変更して貰った。

 これなら、ここに呼ぶ人数も三十か国六十人分減らせるな。


 五層でランダム転移して、スタンピードを起こしてる所だけ行けばいいし、他の国への連絡も、俺が麗奈に指示を出せばいい。

 少しだけ心配してた、麗奈たちの能力だけで対応できない場合のリスクもほぼ無くなる。


 ちょっと安心したぜ。


 そして次は、固有種配置だ。

トリトンはイルカだけに、海の無い十三層の通常ステージだと配置が無理かと思ってたけど、配置をしてしまえば勝手にフロア構成が海になるんだって。


『ねートリトンが持ってたこの眷属召喚ってスキルってどうやって使うの?』

『それはマスターが従えたネームドモンスターだったら、そのスキルを使えば呼び出せる』


 傍目に見たらピンクのイルカが「キュイッキュイ」って言ってネコが「ニャニャニャ」って言ってるだけの絵面だけど、ちゃんと念話で意思は疎通できてるよ?


『それってダンジョン内でなくても何処でもって事?』

『どこでもだけど、私を水が無い所に呼んでも、ピチピチ跳ねるだけだからね? 呼吸は出来るけど』


『私って……トリトンって女の子?』

『性別なんて無いけど、色的におっさんだと嫌でしょ?』


『確かに……』


 でも俺は、とても頼りがいのある仲間を手に入れる事が出来たようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る