第82話 カリブの海賊

 十一層神殿の扉を思い切りよく開けると、そこは青い海が広がっていた。

 水平線まで見えている。

 芸が細かいぜダンジョン。


 そして俺達が立っている場所は船の上だ。

 ぶっといメインマストが、そそり立ち帆がはためている。


「敵は何処なの?」

『あ、それフラグっぽい発言だな麗奈』


 その発言とほぼ同時に真横の海面が一気に持ち上がりくるりと半回転するような感じで、もう一隻の帆船が現れた。


 マストのてっぺんには、お約束かのような黒字に白い髑髏が染め抜かれた、海賊旗がはためいている。


 そして現れたのは二十体程の魚人と、どう見ても海賊の親玉感のあるスケルトンだった。

『鑑定しなくても大丈夫そうだけど……一応さっき鑑定大事って言ったから撮影して』


 パイレーツリッチLV33

スキル

 闇魔法


弱点

 聖属性


 サハギンLV22


スキル

 水魔法


弱点

 雷


 取り巻きのレベルがちょっと高すぎるな。

 これは俺たち以外だと危険だ。


『ポール、みんなを出来るだけ守ってやってくれ。自己責任だから守り切れなかったらしょうが無いけど自分が生き残ることが最優先ね』

「OK、まぁ後ろの連中は任せろ」


 そう言ってポールがてきぱきと指示を出し、クロスボウでミスリルサンダーアローを射出させた。

 

 効果は…… 


 抜群だった。

 結構レベル的に厳しいかと思ったけど、武器の優秀さがそれを凌駕して取り巻きたちは黒い霧に包まれて消えて行った。


 親玉のリッチは、現在、麗奈にレイプされてる……

 可哀そうだ……


 必死で何かをしようとしているが、麗奈が緑ポーションのランク3をがぶ飲みしながら浄化をし続ける。

 範囲な魔法だけにパイレーツは全く行動できていない。


 俺が何もしないのも駄目だし咲と二人でフラフラのリッチに飛び込んだ。

 俺が首を跳ね飛ばすと、咲がそのシャレコウベを十字に切り捨てた。

 

 額の奥の辺りからコアが飛び出した。

 俺はコアを目指して飛びついた。

 口で咥えて飲み込んだ『ツルン』


 そして着地……


 しようとすると船上では無かった。

 『ポチャン』という音と共に、海に投げ出された。


 うわ、めっちゃしょっぱい。

 遠藤姉が、素早く気を利かして浮き輪を投げこんでくれたので、浮き輪の上に乗り、それを足場にジャンプしてジェット噴射で無事に船に戻った。


 海賊船の上には俺と咲だけだ。

 俺はブルブルっと体を震わせて必死で水けを飛ばしていると久しぶりに声が聞こえた。


『ネームドモンスター『ジャック』のコアを吸収しました。ダンジョン転移スキルを獲得しました』


 ムムッ……めちゃ美味しいスキルな気がする。

 そう思ってると、再び声が聞こえる。


『ダンジョンナンバー1180クリア。ダンジョンマスターとなるか消滅させる事を選べます』


 ここは……どうするべきだ。

 前例がないし、消滅を選べばこの国は安全が保障されるけど、資源獲得という面では損失もある。


 マスターになって何が出来るかは、なって見ないと解らない。

 そもそも……マスターって外に出れるのか?


 解んないな。


 一か八かのダンジョンマスターだ!


 咲が俺を抱きかかえてタオルで拭いてくれてる最中にダンジョンマスターを選んだ。


 すると俺の身体は海賊船のマストのてっぺんに転移した。


「えっTB。どこ行ったの?」


「ミャア」


 マストのてっぺんから返事をした。


 そこにはクリスタルコアが存在した。

 コアに触れると、ダンジョンの設定が出来るようだった。


 スタンピード ON/OFF

 転移魔法陣生成 指定階層に転移できる

 固有種配置


 設定ってこの三つだけか……

 固有種って……ジャックとかサハギンとか配置できそうだけど、それは後からでいいか。


 でもスタンピードの発生を止めれるなら、このダンジョンは貴重な資源庫になったって事だね。


 そう考えていると脳裏に声が聞こえる。


『コアクリスタルに触れている間だけ、ナビゲート機能が利用できます。マスターのランクによって機能に制限があります。現在マスターTBはマスターランク1です』


「社長~何してるんですか?」


 麗奈の声が聞こえたので返事を返した。


『俺、ここのダンジョンのマスターになったんだけど……』

「社長凄いですね。個人所有物になったって事ですか? あ、子猫所有物? どうなんだろ」


『それはどうでもいいんだけど、マスターがダンジョンの外に出れるようになるのは、マスターランクが3以上だとかシステムが言ってて、俺のランク1なんだよね。だから今は出れない。みんなはこのマストの下にある、魔法陣で外に出れるから、とりあえず出てていいよ』

「えー社長どうするんですか?」


『なんか色々出来るみたいだからちょっと考えてる。麗奈と咲は一層から直接このマストの所に来れるから、一時間くらいしたら戻って来て』

「了解ですーランク上げる方法ってあるんですか?」


『それを今からここのシステムに聞いて見るところ』

「そうなんだ、じゃぁ一時間後に来ますね」


 ◇◆◇◆ 


 俺はダンジョンコアのナビゲートシステムによって、ランクを上げる方法を調べた。


 ①侵入者を配置した魔物によって撃退する事でExpを貯める。


 これは……却下だな。

 これやるとリアル魔王様じゃねぇかYO


 ②他のダンジョンを攻略する事でExpを貯める。


 出れないのにどうやって攻略するんだ?


 ん? 待てよジャック何かくれたよな。

 【ダンジョン転移】

 ダンジョン内転移じゃ無くてダンジョン転移って事はもしかして、他のダンジョンに行けるのか?


 鑑定してみよう。

【ダンジョン転移】

 マスターランクに応じて対応するダンジョンへと転移できる。

 マスターランク1では、同じランク1マスターの居るダンジョンへランダム移動。

 ただし、マスターをしているダンジョンのコアルームへ侵入者があった場合は、強制的に転移させられる。


 ダンジョンコアを破壊されるとマスターは消滅する。


 あ……これ、結構ヤバいよね。

 コア壊されたら俺、消えちゃうのか。

 でも、普通に戦って殺されても一緒だから、気にしてもしょうが無いな。


 ランク1マスターが居るダンジョンってどこだろ?

 可能性として考えられるのは、一次ダンジョンが発生して二次ダンジョンが発生してない場所だな。


 このキングストンは除外されるから、残り二十九か所のどこかか。

 転移方法はどうすればいいんだ?


 ダンジョンコアを触って転移を念じても何も起こらないな。

 あ、勝手に転移したら、麗奈たちに怒られるか?

 戻って来るのを待とう。

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