第79話 カリブ海って言えば……

 十一層は俺と麗奈は嫌って言うほど戦って来たから、今更な感じはするけどAEの三次ダンジョンしか通っていなかった咲にとっては九層以降の敵は初見になる。


 取り敢えず魔物の行動パターンに慣れるまでは、依然と同じように麗奈がクロスボウで釣って咲に倒させるでいいかな? と思って戦闘を開始した……が……


『麗奈、ミスリルの矢を使うな! 敵が全部爆散して全然咲まで辿り着かねぇじゃないか』

「ごめん。社長。ていうかさ社長の付与した下着とか、今の咲の刀なら何も問題無いと思うよ? 咲だって飛斬使えるし」


『そうか、それなら大丈夫そうだな。パーティを組んだ状態だからとにかく数を稼ぎたいし麗奈が得意なスケルトンが湧きやすい辺りで狩ろう』

「了解」


 俺達もステータスが大幅に上がってから、十一層に入って来たのは今日が初めてだったし、自分の強さが良く理解出来て無かったのもあるけど、今はステータスアップのアイテムを装備した咲の実力は俺と麗奈が十一層に落ちた時の俺程度のステータス数値はあるし、戦闘センスで言えば俺よりも高い咲にとっては、この階層は楽勝だった。


 午前中だけでも千体以上の敵を狩って、昼食の為に一度全員で一層に集まった。

 シーフードレストランでランチを取りながら状況の確認をした。


「社長! それはそうとして、なんでこの辺りはリトルトーキョーって名前なんですか?」

『俺がそんなこと知る訳ないじゃん』


 そう返事をするとDEのメンヒルデが教えてくれた。


「私達は諜報員だから、ある意味日本の国際的な活動に関しては、日本人よりも勉強してるし、今回このVCに来るにあたって当然日本との関係性なんかも調べてるから知ってるわよ」

『すげーなスパイ!』


 メンヒルデの言葉によると、この国の魚市場は日本の無償資金援助によって作られてるんだって。

 意外に役に立つ事やってるんだねー日本。


「そう言えば人気の海賊映画の撮影もこの国でやってるそうよ」


 それを聞いた時になんかちょっと嫌な予感がした。

 

 ポールが八層で活動してるスパイチーム達の動きを客観的に教えてくれた。


「みんな思った以上に動けてるな。TBの用意した装備が優れているからだろうけど、GBのトップチームと比べても全然悪くない。クロスボウで誘ってランスで止めを刺す形なら、クロスボウ一人ランス二人でコンビを組めば問題無く戦える。それより修三さんが凄いな。俺と比べても修三さんの方が的確に倒せてる感じだ」

『祖父ちゃん、ポールにそこまで言わせるとか凄いな。狩りをする階層はポールと爺ちゃんの判断で行けそうなら少しずつ降りてきたらいいよ。十一層に来るときはポール以外はみんなオーガと戦えるチャンスがあるから、俺とツーショットで一人ずつクリアしよう、二人くらいはスキルも出るだろうし』


「それは楽しみだな」


「ねぇTB、洋子さんや穂南ちゃんはどうしてるの?」

『穂南の学校もあるから、放課後にお袋と祖母ちゃんと三人で代々木の六層辺りに行くって言ってたな』


「はっきりと若返りの効果が期待できるのって、どれくらいのExpが必要なんだろうね?」

『祖父ちゃんやお袋のパターンで考えると、五層くらいで狩ってると効果が出始めるかな。恐らく深層階ほど魔素が濃いから効果が出るんだと思う。単純にステータスだけ上がればいいって言う感じではないと思うよ』


「そうなんだね。でもそれだと一般の主婦の人達だと五層より下で狩りをするのはハードル高いよね」

『まぁ若返りにかける執念は凄い物がありそうだから、気が付いたら民間のトップランカーがアラフォー以上の女性ばかりになってたりしそうな気はするけどね』


 とりあえず二次ダンジョンの十層が現れるまで後三週間くらいありそうだから、それまではここでがっつりと狩りをして何らかの答えを探そう。

 そう思いながら一週間目を迎えた時に変化はあった。


 この頃には他のメンバーも全員十一層で活動をする様になっていた。

 USのジェフリーと、FRのカタリーナはスキルも獲得した。


 ジェフリーが取得したのは、bowスキル。

 弓術だね。


 カタリーナはデトックスLV1と言うスキルだった。

 キュアポーション系のランク1の互換スキルだ。

 恐らくLVが上がって青ポランク5とかの互換スキルになれば世界中の医療機関からモテモテになりそうだな。

 でも解毒だから、青ポみたいに病気全般に効果を出すのとは少し違うのかもしれないけど。

 

「社長! 十二層の階段ですかあれ?」

『いや、どっちか言うとボス部屋のような感じがしないか? このまま進むのは危険かもしれないな。ちょっと彩に連絡してくれ。麗奈はUSのマイケルに連絡を頼む。十二層の階段が普通に現れてるのか、それともここと同じように神殿なのかだ』


「了解」


 すぐに連絡がついたが、通常の階段しか現れてない様だ。


「社長これって……もしかして?」

『ああ、間違いないと思う。このダンジョンのボス部屋だ』


 全員で神殿に進む。


 神殿内部がセーフティゾーンになってるのは、十層の中ボス部屋と同じだ。


『このダンジョンはこの部屋の中に居るボスを倒せば、消失するかも知れないけど入ってもいいと思うか?』


 ジェフリーが確認してくる。

「敵の強さがどれくらいか解らないだけに心配はあるな」


『ステータス的に考えれば、現状の俺のステータスは四十層辺りの敵と比べても、俺の方が強いと思う。ここの階層が十一層である事を考えて、中ボスが二倍レベルの敵が現れているし、ここで三倍もしくは四倍相当のレベルの敵が現れたとしても、何とかなるだろう、突入は危険があるから俺と麗奈の他は、入ってみたいメンバーだけ来たらいい。ただし守る余裕がないかもしれないから自己責任だぞ』


 そう告げると全員が突入を希望した。

 まぁそんな気はしてたけど……


『突入したら最初にするのは敵が現れた瞬間に写真撮って鑑定だ。鑑定画面を見てる間に狙われないように、鑑定してないメンバーはしっかり鑑定者を守ってね』

「「「了解ラジャー」」」


『鑑定が終わったら有効な攻撃方法の選定だ。これを怠って攻撃すると二次ダンジョンの五層みたいな悲劇が起こるからな。今回は基本俺と麗奈で倒すけど他のメンバーは危険が無いように、しっかり見ていてくれ。余裕があるなら動画撮影とかしても良いよ』


 ざっと注意事項だけ伝えると十一層に現れた神殿の扉を開け放った。

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