第78話 トロントからキングストン
GBからの連絡で、VCでの活動は即日認められることになった。
直行便は無いので、一度CAのトロントで乗り換えて向かう事になる。
乗り換えの都合上CAで十五時間も滞在する事になるのがちょっと困るけど、そこはあくまでも一般企業だから、チャーター便などは今の所考えられない。
でも、AEのアシュラフさんが、Ⅾキューブのメンバーの国籍で普通に動くと色々問題がある場合も多いので、USのカール大統領から各国へ働きかけさせて、その辺りの問題と後はプライベートジェットでボーイングの737の百人乗り程度のを用意させておこうという話になっているそうだ。
日本も流石にここまでくれば協力的で、プライベートジェットを入手すれば利用空港は横田基地を使わせてくれる手筈になっているんだって。
機体にD³って書かれたプライベートジェットとか、ちょっとカッコいいかも。
殆どお金使って無いし、それくらいは贅沢しても良いよね?
トロントで滞在中に、CAのダンジョンフォースの指令官と、トップチームの隊長と副官が訪ねて来た。
当然のようにジャッジホンとミスリル製の武器の件だったので、また前と同じ問題になったら面倒だから、すぐに麗奈から島長官に確認を取って貰ってOKの返事をもらった後で提供した。
雷属性の付与をしたミスリルランスを五本と、風属性付与のミスリルランス五本。
ミスリルのクロスボウ五張。
風属性付与のミスリルアロー五十本。
雷属性付与のミスリルアロー五十本。
属性付与無しのミスリルアロー百本。
マジックバッグLV1を十二個
〆て千四百二十万USドルのお買い上げでした。
毎度在り!
その取引を見ていたKRのヤンが話し掛けて来た。
「TB、そう言えば各国にDキューブの出資枠を用意してくれると言う話はどうなったんだ?」
その件に関しては麗奈が島長官となんか話してたみたいで、俺のかわりに返事をしていた。
「Dキューブに積極的に協力をしてくれる国に関して、株式発行数の四十九パーセントを協力各国に対して発行する準備があります。資金がたまれば世界中の首都が現状スタンピードによって居住できない情況なので、そう言った地域の復興にダンジョン産技術を用いて取り組む会社となります」
「当分他のシーカー達やダンジョンアーミーの研究班がTBの様な装備を作れるとは思えないから、出資金がどれだけの価値を生むのかと思うと興奮するな」
「Dキューブ単独で何とかできない事も無さそうなんですけど、他の国から協力を得ながら行動する方が、色々な面で迅速に動けると島長官からも助言を受けましたので」
「あの官房長官は侮れないな」
「それは良いとして皆さんは実際のダンジョン内での戦闘は大丈夫なんですか? GBのポール以外は攻略班と言う訳では無かったのだから少し心配なのですが?」
「みんな諜報員として厳しい訓練は積んできているから、そこそこ動けるはずだぞ?」
「うーん。咲どう思う?」
「みなさん、厳しいようですけど皆さんではこの麗奈や私と比べても、ダンジョン内で行動する事においては全くの雑魚です。だからくれぐれもポールの指示に従って不用意な行動は避けて下さいね。これから向かう十一層より下の階層では一瞬の気のゆるみで簡単に死ねますから」
「おい。咲は日本の剣術チャンピオンと聞いてるけど麗奈もそんなに強いのか?」
そう聞いて来たのはCNの巨漢マーだ。
「えーと、今晩の皆さんの全員分のディナー掛けて勝負でもしますか? 勝負内容は任せますよ?」
「そんな細い腕で俺と勝負なんて出来るとも思えないが? よし腕相撲だ」
そんな事を言い出したのでテーブルの上で麗奈とマーが腕を組んだ。
「レディゴー」
その掛け声とともに自慢の怪力で一気に押し倒そうとするマーに対して麗奈はにっこりと笑って「もう力を入れていいんですよ?」と話しかけた。
麗奈の言葉に表情の引き攣ったマーを他のメンバーが凝視する中「ごちになります!」といいながらゆっくりと腕を倒した。
「大体、見た目なんて全然当てに出来ない事くらい、社長見てたら解りそうなもんだけどな? 子猫だよ? この子猫が世界最強の存在なんだから、くれぐれも見た目とかで、うかつな判断をしない様にして下さいね」
「わ、解った」
トロントでのディナーは、運よく予約の取れた高級なステーキショップに全員で訪れた。
俺はソースの掛かって無いステーキを、ほんのり温かいくらいのレアで食べたよ。
約束通り全員の料理代金を払ったマーは少し涙目だった。
「大体こんな店で高級ワインなんて頼むなよ」
なぜかここに居るメンバーでは、日本語が全員が理解できる唯一の言語なので見た目とは裏腹に、日本語で会話をしてる。
ポールもTBと意思の疎通をする為に必死で練習したそうだ。
その為にポールが取った手段は、ケンブリッジに留学しに来てた日本人留学生と交際をするという手段を取ったんだって。
見た目も性格もどうでもいいから、日本人女性と付き合いたいとSNSに書き込んだら、結構な男前で筋肉質なポールのアカウントに数百名にも及ぶ申し込みがあったとか、日本女性全体が軽く見られちゃうから、ちゃんと相手を選ぼうね……
マジで!
◇◆◇◆
翌朝、トロントからVCへと移動した俺達は、現地の攻略部隊の出迎えを受けながらキングスタウンダンジョンへと進入した。
今回はDキューブとしての初舞台で、穂南とお袋と祖母ちゃんは流石に来てないけど、祖父ちゃんはちゃっかり参加している。
俺も知らなかったけど、修三祖父ちゃんは陸自で棒術の教官をしてただけあって、結構上がってるステータスとも相まって、ポールと咲と麗奈を除けば最も強い。
俺は戦闘スタイル的に子猫だからみんなと比べられないけど、人類最強は麗奈だからな……
以前は咲が剣術では圧勝できたそうだけど、今なら竹刀で撃ち合っても勝てそうだと言ってた。
でも友達思いの麗奈は、ダンジョンではクロスボウとランスしか使わないけどね。
「咲はライバルと切磋琢磨するより、褒められて自分で努力して伸びるタイプだから剣では最強だと思わせてる方が良いの!」
って言ってた。
俺は麗奈と咲との三人で十一層に降りるけど、他のメンバーはいきなり十一層だと危険だから、ポールと修三祖父ちゃんに八層で鍛えて貰う事にして、ある程度使えるようになったと判断できれば下層に来るように伝えた。
『このキングストンダンジョンは人口十一万人のVCの一次ダンジョンだ。以前、一次ダンジョンが消失した
「そうだね社長に言われて調べたのは私だから間違いないよ」
『この十一層の魔物の討伐数が世界で一番進んでる状態で、十二層が現れるタイミングになれば、違う現象が起こるんじゃないかと思ってね』
「確率としては高そうですよね」
『うん。それにパターン的に人口の少ない国の一次ダンジョンなら、そろそろ最下層に到達するかも知れない可能性もあるしね』
「ダンジョンの踏破って事ですか?」
『そそ。もし踏破なら凄い特典とかあるかもしれないじゃん』
「なる程ですね。そう言う見方で考えると、日本や中国とかのダンジョンで、踏破するとなると相当難しそうですよね」
『うん。ここである程度の答えが出せたら、色々可能性を考えれるからね』
そんな感じでキングストン攻略は始まった。
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