第74話 記者会見
俺達が横田基地に到着すると、米軍の人がたくさんお出迎えをしてくれてた。
カール大統領のスピーチが、とっても効果があったみたいだね!
そして米軍の人達の後ろには、スーツ姿で現れた彩も来ていた。
彩の隣にはどこかで見た事がある様な、ナイスミドルな感じの人が爽やかな笑顔で立っている。
『誰だったっけ?』
「TB。テレビニュースで良くしゃべってる人だよ。内閣の偉い人。漢方長官とか言うんじゃ無かったっけ」
『ああ、官房長官な、漢方だと体に良さそうだな』
俺と麗奈が進んでいくと、そのナイスミドルが自己紹介をしてきた。
本当は握手をしようと手を差し出して来たんだが、余りにも子猫な俺の外見に出しかけた手を引っ込めてた。
「やっと会えたよ日本の英雄に。初めまして官房長官でNDFの長官を兼務させて貰ってます島颯太と言います。これからのダンジョン防衛の件で、お話をさせて貰いたいのですが構いませんか?」
『今日これからでしょうか?』
「長旅でお疲れでしょうから、明日の朝からでお願いしたいのですが、今日は少しだけ斑鳩大佐と一緒にカメラの前に出て頂くわけにはいきませんか?」
「TB、ちょっとだけ付き合って。ゴメンね」
『麗奈も一緒って事だよね?』
「うん」
『麗奈はOK?』
「私は社長が行くところならどこでも一緒ですよ」
『そっか。ありがとう。って事で長くならないように頼むね』
「咲達はまだ時間かかるんでしょ?」
「そうですね。公式には何処にも行ってないはずだから、明日の朝には普通にいると思いますよ」
「あ、それ、マスコミの前では言わないようにお願いしますね。事情は総理にカール大統領から説明があったようですけど耳にすると不用意に騒ぎ立てる輩が必ずいますので」
「解りました」
俺達は横田基地を出るとリムジンに乗って首相官邸まで連れて行かれた。
流石に日本の閣僚が一緒だとジェフリーとデビットも一緒に付いてくるわけにはいかなかったから、今のうちに主要国のエージェントと連絡を取るそうだ。
「TB、この国の規則の中では君を北原進さんとして扱うのが難しい事を謝罪しておくね」
『まぁそれは今更ですから』
「TB達の活動を妨げないで済むようにダンジョン省とも協力体制を取って、世界中のダンジョンの攻略に関しての活動を、日本国として応援させて貰います。それに先駆けて代々木十層と札幌五層のスタンピードでの活躍に対して、国から褒章を与えたいと思いますが受けて頂けますか?」
『それは……カール大統領もノーベル平和賞がどうとか言ってたんだけど道端でうんこするのも大変になりそうだから、お断りの方向でお願いします』
「社長。うんこダンジョンでしかしないって言ってたじゃないですか?」
『麗奈……断り文句なんだからまじで反応しないで』
「あ、そうだったんですね。ゴメンなさい」
「斑鳩大佐から伺ったんですが随分高性能なアイテムや武器を作成したりできるそうですね?」
『まぁ一応』
「それは販売される予定とかはあるんでしょうか?」
『魔導具の作成に関しては、大量のMPや魔石、魔法金属の使用が必要になりますので、数量を決められての生産などは予定にありません。余分に作ればDFT社を通じて販売する事はあるかもしれませんとしか言えないです』
「解りました。その辺りの事はTBにお任せしますので。ダンジョンの攻略に関しては基本、日本を拠点にしていただけると言う事で良いのでしょうか?」
『あくまでも基本的にです。少しダンジョンの規則性などで実験したい事などありますから、その時は海外が主な活動予定地になります』
「そうですか……了解しました。一つお願いしたいのは海外での活動を妨げる事はしませんが、斑鳩大佐との連絡を密に取っていただいて、どこにいるのか解らない情況は作らない様にお願いしたいと思います」
『できるだけ希望に添える様にします』
基本子猫な俺は、こうやって人と会話をする時って麗奈に抱っこされて目線を合わせるんだけど、これだとスマホにチャット入力する時に麗奈の首からぶら下げた状態のスマホに文字を打ち込むのが結構大変だ。
特に麗奈のは弾力が高いからね!
だからと言って彩のじゃ弾力が無さすぎるし困るぜ!
首相官邸に到着すると、やたらたくさんのテレビカメラや新聞社の一眼レフが、フラッシュを光らせまくるから、まぶしくて困る。
猫の目は集光力高いんだから、少しは考えろよな。
「まず、今回の代々木スタンピードを日本では死者0と言う、他国では考えられないような、結果で終われたことをNDFとして、どうお考えなのでしょうか」
「皆さん方の期待される答えはNDFに任せればこの先もスタンピードに対して十分な対応が可能なのか? と言う事でしょうが、そう甘いものではありません。実際問題として私が以前所属した特殊構造体攻略班と比べれば、より高い可能性で攻略は可能ですが、あくまでもそれはこの組織が世界最強の
「その黒猫TBは国の組織に所属して日本の為だけに活動して貰う訳にはいかないのですか?」
「みなさんはTBの能力をよくご存じでは無いかも知れませんが、今回の世界中の一次ダンジョン十層を食い止めた事に関する、TBの報酬は一億ドルを優に超えます。恐らく年間だと十億ドル以上は簡単に稼げるのに、それに匹敵する給料を払えますか? もしあなた方の払う税金を使ってその額をTBに報酬として与えれば、大騒ぎして支払いを決めた政府に文句を言うのではないですか?」
「でも猫でしょ? この国には『猫に小判』なんて言う格言がある通り、お金を与える必要なんか無いんじゃないですか? 猫缶や、おやつで十分でしょ」
その発言を聞いた島長官が前に進み出て発言者に対して言い放った。
「えーと? あなたは何処に所属されてる方でしたか?」
「国営放送局の物です」
「今後あなたの所属される組織は一切のNDF関連の会見への参加を禁止します。報道の自由を掲げるのは結構ですが、日本を、世界を救った英雄に対しての失礼な発言を許す事は私がNDFの長官である限り決して許しません」
その言葉と同時に会見場に居たSP達が一斉に動いて、該当放送局関連の人間を会見場の外へと連れだした。
「お見苦しい物をお見せして申し訳ありません。今後この国とこの世界は英雄TBと協力し合い、少しでも人々が被害を受ける事が減る様に考え行動します。勿論NDFの隊員も英雄TBも自らの命を懸けて立ち向かうのです。その姿を皆さんの胸にしっかりと刻み込み応援をして下さることを心から願います」
一瞬会場に静寂が訪れたけど、この官房長官ってなんか凄い人だなって思った。
最初からこんな人がダンジョン攻略の対応してたら上田二佐の様な優秀な人を失わずに済んだのがちょっと悔しいぜ……
「英雄TBへの質問は、代理人の田中さんへ質問すればいいのでしょうか?」
漸く質疑応答に戻った所で麗奈が発した返事は……
「あ、うちの社長。普通に言葉解りますから。まぁ喋れませんから返事は私がしますけど、どっちかって言うと
『麗奈、それもなんか嫌だぞ?』
まぁお陰でちょっとシリアスなムードが漂った会見場の空気が和んだからいいや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます