第72話 これからの事

 咲とも合流出来て、この先をどうするかを麗奈と三人で話してた。


「私はとりあえず、ステータスで麗奈にまで大幅に置いて行かれちゃったから、相当頑張らないとね。一体どんな体験したら、あそこまでステータスって伸びたの?」

「咲、十一層では、それはそれは想像を絶するような苦難が待ち受けていてね。私も社長も毎日を死ぬ思いで、ほぼ二十四時間体制で戦い続けた結果なの」


「そう……やっぱり並大抵の体験じゃ無かったのね」

『おい! 麗奈。何でそんな大げさに言ってるんだ。いたって普通に睡眠もとって、テントもトイレもあったし、十一層だから敵も多少は強くなってたけど全然危険な事なんか一度も無かっただろ』


「だってぇ、その間お風呂入れなかったんだよ?」

「ちょっ麗奈。TBと言ってることが全然違うじゃん。本当は何があったの?」


「しょうがないなぁ。三週間目までは全然普通に無理しない程度に敵を倒して過ごしてたんだけどね……金色の亀さんが出てきたら、全く他の敵も現れなくなったんだよね」

「金色の亀?」


「うん。それを六日間社長と交代しながら、ずっと殴り続けてたら倒せたんだけど、ただ殴るのも退屈だから、魔法とかも使いながらずーっとひたすら殴ってた感じだね」

「でもそんな凄い敵なら、ドロップも凄かった?」


「それが……ドロップ無し。でもそいつが倒れたと同時に、上に上がる階段が現れて、後からステータス確認したら今のステータスになっちゃってたんだよ」

「そうなんだ……」


『あの金亀が階段出現の条件だったかどうかは解らないんだけど、凄まじい経験値がもらえたのは間違いないな。宝箱に飲み込まれたのが俺達で良かったよ。他の人間なら一月も食料とかもたなかっただろうし』

「まぁねぇ……」


『でもな、俺が思うに今の段階はまだ全然序盤だと思うし、今のステータスの差なんて、二十層とか現れるころには、誤差程度になると思うぞ。それよりも今回作れるようになった、ステータス強化の防具の効果とかの方が大事だから、咲も又すぐに追いつけるさ』

「そっか、TBがそう言うならそうなんでしょうね。でも、ステータス強化の防具ってなんで下着と靴下限定なの?」


『それは彩に言ってくれよ。俺の責任じゃない』

「男性用ブラって一時期はやったけど最近見かけないよね? それと……彩さんVITの上昇って、パンティーって言ってたけど男性の場合はブリーフとかトランクスでもいいの?」


『実験してないが、彩のパンティーはTバックだったからな。それ限定だったら、男用には作りたくない気がする』

「靴下は問題なさそうだよね」


『爺ちゃんの下着借りてきて、ちょっと試してみる』

「うん。他には何か付与できるの?」


『ステータスだとDEXがまだいけるな』

「普通のTシャツとかにしてよね?」


『解った』


 その後で修三祖父ちゃんからトランクスを借りてきて、VITを付与しようとしたが、『VITはパンティに限定して理付けされています』と脳内に流れた。

 Tバックは条件じゃないみたいだが、パンティじゃないと駄目なようだ……


 怪力ブラ

 護身パンティ

 快速靴下

 器用なTシャツ


 の四アイテムを確定させてしまったが……

 後から思えば、ペンダントや指輪にしておけばよかったと少し後悔した。


 その後俺達の会社を通してDFT社から販売されるこれらのアイテムは男性が堂々とパンティやブラジャーを購入できる理由にもなり、一部の層からは絶大な支持を受けるんだけど……


 ◇◆◇◆ 


 久しぶりに穂南の胸にうずもれて気持ち良く朝を迎えた。

 俺の事を進だと解った上で、一緒に寝てくれる妹がとても愛おしいぜ!


 朝からアシュラフさんに呼ばれて、咲と麗奈と一緒に会議室に行った。

 テレビ会議で、カール大統領とマイケルとメアリー。

 アシュラフさんジェフリー、デビットのメンバーだった。


「改めてお礼を言わせて貰おう。TB今回の十層スタンピードの協力ありがとう」

「TB、俺は十層でオーガに足を吹っ飛ばされて、横田から届いたポーションのランク5が無かったらやばかった」


『マイケル間に合ってよかったね』


「早速だが今後のダンジョンの攻略に関して何だが、世界中で同じ条件で溢れ出してくる以上、各国が人員を出し合って対応組織を作るという点では、悪くは無いんだが」

『何か問題があるんですか?』


「はっきり言うとUSの様に優れた戦力を育てていても、今回のような事態に陥る。そうであれば世界的な対応組織を作った場合、例えば我がUSやCN、RUと言った国家では、優秀な人員を国外に派遣する立場になり、それにより国内の防衛力はレベルが下がってしまうと言う懸念があるんだ」

『なる程、税金で賄う以上は自国が完全に守れる状態でない以上は、他国への戦力の流出は出来ないですよね』


「そう言う事だな。その事情を踏まえてその上で協力組織を作ろうと思えば、どうするのが良いと思う?」


 その会話のやり取りで、それまで無言を貫いていたアシュラフさんが口を開いた。


「わが国では、元々ダンジョンの攻略に関して国民を使いません。勿論一般探索者を禁止すると言う事ではなく、国家としてスタンピード対応を行わせるのは、お金を払って傭兵部隊を使っています。これを踏まえてですが、超国家間のダンジョン攻略チームは商売として取り組めばいいのではないですか? 税金を使うから国民に対して遠慮も出てしまい、自国の利益しか語れないと言う事になります。それならダンジョンからの産出物や優秀なスキルがお金になる事は既にTBが十分に証明しています。今以上の技術の開発や魔法薬の提供で十分に採算も取れると思います」


 アシュラフさんの意見は俺も少し考えていた部分だった。

 でも、これも扱う額が巨大なだけに、どこがやるの? って言う問題になるんだよね。


 アシュラフさんの意見を聞いたうえで、カール大統領が口を開いた。

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