第65話 11層の二人

『麗奈。触るなよ?』

「やだなぁ社長。いくら私でも学習しますって」


 現在十一層で狩を続ける二人の元に宝箱が出現していた。


『取り敢えずスマホで写真撮って』

「了解です」


『うん。大丈夫みたいだ開けるよ』

「はーい」


『スキルオーブだね麗奈が取得して』

「いいんですか?」


『今は麗奈の能力アップが、一番重要な問題だからね』

「了解です」


『何だった?』

「えーとですね【浄化】です」


『当りっぽい感じのスキルだね。アンデット系とかに有効なのかな?』

「それよりラノベでよくあるみたいな【クリーンアップ】的な使い方が出来るかどうかの方が気になります」


『まぁいいや。先にさ麗奈のスマホとステータスカード出して』

「はーい」


『運を上げてからやるから、終わるまで麗奈が周囲の警戒しててね』

「うん」


『ダジャレ?』

「そんな私がダジャレなんか言う訳ないじゃないですか?」


『でも……一気にスキル取得者増えてるね。もう十万人超えてるんだ』

「それでも七十億の人口から考えると7万人に一人ですよ」


『そう言う見方をすればそうだけど、実際にはかなり人口減ってるんじゃないかな』

「そうかもしれないですね。先進国以外だとスタンピードで溢れだした魔物が結構国中に溢れ出してる所が多いみたいだし、どうなっていくんでしょうね世界は」


『俺が心配なのは、天神ダンジョンがちゃんと制圧されたかどうかなんだよね。今回ばかりは逆にアメリカの方が信用できるぜ』

「彩さんが無事だったらいいんだけど」


『俺はなんやかんや言いながらも、元は攻略班の自衛官だから同僚が死ぬのは辛いよ』

「もうあれですね。地上に戻れたらTBがダンジョンはやっつけるから、自衛隊は危険が無いように街の人達を守る事に専念してね? って宣言するとかの方が良いかもしれませんね」


『うーん。どうだろそれは? あの組織には意地とか出世争いとかの色々な問題があるから俺達みたいな下士官なら問題無いんだけど、彩みたいに士官になると大変そうだよ』

「そうなんですねー」


 無事に一度のチャレンジでジャッジホンの製造にも成功した。

 麗奈は、俺のジャッジホンで撮影とかは頼んでたし、使い方は難しくないだろう。


 この十一層にはオークとゴブリンがセットで出てくるパターンが多く、ゴブリンも多彩な武器を使ってくる。

 アーチャーやランサー、ソードマンが存在する。

 もう少し階層が深くなれば、ソーサラーやヒーラーが現れても不思議ではない。


 そして武器持ちのゴブリンたちが現れるときは、ホブゴブリンが率いている場合が多いので、これも階層が深くなればジェネラル種やキング種が現れるんだろうな?

 オークはこの十一層では、中ボスで出て来たような、再生能力持ちでは無く、普通にパワーの強い二足歩行の豚だな。

 背丈も2.5m程度だ。


 そしてスケルトン種とゾンビも現れる。

 後はゴーレム系統だな。


 ドロップは武器を直接ドロップするパターンがあるが、現時点ではダンジョン鋼製の武器だから、俺達では使う事も無いけど、ため込んでおいて売りに出せばそこそこの金額にはなるだろう。

 俺は時間のある時に、ポーション類や金属類を上位の品質に合成する事を繰り返し、在庫を貯めて行ってる。


 ドロップはもう一つの系統として、現時点ではオークだけだがオークミートをドロップするようになった。

 これは形状的には、ロースの部分の様な肉だ。

 解りやすくいうと、とんかつ用だね。


 火魔法は無いけど、雷でダンジョン内に生えている草や木の枝を集めて燃やす事で炙り焼きにはできる。

 調味料を持ってきてなかったから、味気は無いけど、猫の俺にも十分美味しく感じる。

 麗奈はコンビニ弁当の方が良いみたいだけどね。

 水は、この階層に池の様な所があって湧き出している。

 試しに飲んでみたが、普通に美味しい水だった。


 

 新しいスキルは、ゴーレムのコアで【STR強化LV1】を取得した他は、身についてない。

 第三段階のスキルは今の所現れて無いので、期待薄かな?


『麗奈、早速だが浄化スキルをスケルトンとゾンビに使って見てくれ』

「はーい」


 こいつらは今まで俺の雷系のスキルでは倒せていたが、風属性では決め手に欠けていた。

 ポーションを使えば簡単だけど勿体ないしね。


 浄化は消費MPが10も必要で現時点でINTに余り振っていなかった麗奈では五発しか撃てなかった。

 俺の様に複数のスキルを持つ状態にならないと。魔法は使い放題って言う訳にはいかないな。


 今はMP回復の緑ポーション系が大量在庫してるので、あまり関係ないけどジャッジホンを使って、ステータスを振りなおす必要はあるな。


『しかしこの階層から上にも下にも移動できないのは困るな』

「ですよね、せめて下にいければ超強くなることも出来そうなのに」


 それでも現状では精々九層目が現れたかどうかの状態だろうから、俺達のステータスアップ効率は群を抜いているだろうけどね。


 二十四時間体制だし……


 実際現在ここに来て二週間ほどが過ぎているが、麗奈のランキングが思ったより全然高くて、22/106352 と言う順位だ。

 彩と比べればどうか解んないけど、咲よりは上になっていると思う。

 後二週間のうちには、二位まで上がりそうだよね。


 ◇◆◇◆ 


 それからさらに一週間が過ぎた頃に明らかに今まで見た事のない、ド派手な金色の亀が現れた。


 金色万年亀


STR  100

VIT  100000 

AGI  1 

DEX  10 

INT  10000

LUK  1000 


 なんか凄いステータスだけど、INTがいくら高くても魔法攻撃をしてくるわけでもないし攻撃力は100程度なら、今の俺と麗奈にはそんなに強烈な攻撃でもない。

 ただし防御面で考えれば、とても攻撃が通用するとも思えない。


 俺達二人のとても長い戦いが始まったのだった。

 なんと、この金色万年亀が現れてから、他の一切の敵が現れなくなった。


 しょうが無いから、こいつに攻撃をするしかないんだけど、一応魔法を放っても殴っても当たり判定がある様な仕草をしてくるので、少しずつは攻撃が届いているのかと思いたい……

 HP表示が無いのが恨めしい。

 もしHP表示があったとしたなら、どの攻撃も1づつHPを削っているような気がする。


 そしてAGI=1の数値が示すように、動きは極めて遅いが、一向に倒せる気がしない。

 他の敵が現れなくなっているので、二人で睡眠休憩を取ったりしながらひたすら無心で攻撃し続けた。

 毎日ひたすら殴り続けて、六日目になってようやくその姿が黒い霧に包まれて消えて行った。


「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャァアアアアアア???」

「ここまで時間かけさせておきながら、まさかのノードロップ?」


 俺と麗奈は愕然としたが、俺たち二人の目の前には待ちに待った、上層階への階段が現れていた。

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