第48話 グリーンベレー

 俺達はワシントンDCで二日目の朝を迎えた。

 みんなで揃って朝食を食べていると、グリーンのベレー帽をかぶった一団が近寄って来た。

 俺達の前にその十二人の集団が勢ぞろいすると、ビシッと音がするような敬礼を決めた。


 その一団のリーダーが英語で何かを話し掛けて来るが俺は理解できない……

 意外な事に麗奈は解ってるみたいだ。

 咲ちゃんは表情を見るからにあまりわかって無さそう。


 穂南とお袋はポカーンとしてる。

 安心した。


 聖夜とエミは解ってるっぽい。

 流石キャリアだな。


 デビットが代表して通訳してくれた。


「彼らは、USのトップチームのメンバーです。全員がステータスカード所持者で、隊長のマイケルがランキング4位。他のメンバーも全員TOP100には入っています。世界ランキング1位のTBと友好を深めたいらしくて今日の狩りの同行を求めています」


「お兄ちゃん本当に凄いんだね。こんな強そうな兵隊さん達が挨拶しに来るとか」

『でも、流石に俺の姿見てちょっと引いてるぞ……子猫だしな』


 俺のかわりに麗奈が、結構流暢な英語で返事をしてくれている。


「私達も皆さんに会えたことを大変光栄に思います。これからUS滞在期間中は皆さんと友好を深め、ダンジョンの攻略及びダンジョン産技術の向上に向けて協力し合えればと思います」

「ニャ」


 俺も頷いておいたぜ!

 麗奈がなんて言ったかはよくわかんなかったけどね……


 でも何となく相手の反応を見る限り、変な挨拶はしてないと思うから大丈夫だよね?

 マイケル大尉に今日の予定を聞かれたから、午前中はお袋と穂南のステータスアップの為に三層での狩りを行い、午後から七層に行ってドロップ集めを中心に行動する事を麗奈に伝えて貰った。


 狩りに行く前に昨日同行した限りでジェフリー達USのエージェントが感じた質問事項を訪ねられた。

 当然のことながら興味を持たれたのはミスリル製の武器の事とステータスカードを持たないメンバーとパーティを組む方法の事だった。


 実際この辺りの詳しい事は聖夜やエミにもちゃんとは説明してないけど、あれば圧倒的に有利なのは鑑定スマホの存在なんだよね。

 

 俺は、それなりに窮地だった状況に手を差し伸べてくれたジェフリー達USの対応にそれなりに恩義を感じていたので鑑定スマホの存在を教えた。


『この特殊なスマートホンを利用して魔物や人物、アイテムの鑑定、ステータスの調整及びパーティ作成を行う事が出来ます』

「それは私達が手に入れる事は出来ないのか?」


 当然の質問が戻って来る。


『現時点ではパーティメンバー以外に与える予定はありませんが、ここに滞在している間に信頼に足ると判断できれば考えます』

「高ランクのポーションやミスリルを手に入れる方法は、どういうカラクリがあるんですか?」


 これも、もう隠してもしょうが無いから、自分のスキルで合成を行い作り出していると伝えた。

 全てを教える事は出来ないがTBは異次元ボックスと言うスキルを身につけており、その中でアイテムの保持、合成と言う事が出来る。

 

「異次元ボックス。素晴らしいスキルですね。我が国にもそのスキルの保有者が誕生する事を願うばかりです。因みにどの魔物から手に入れたとか教えていただけますか?」

『構いませんよ。代々木の一層のスライムからです』


「おー。一層のスライムからそんな神のようなスキルが現れるなど予想もしていませんでした」

『取得できたのがスライムだったと言うだけで、この先同じ魔物から同じスキルを身につける事が出来るかどうかは全く分かりませんけどね』


 その後はグリーンベレーの部隊は午後までは自分達だけで七層に潜ると言う事になり、俺達はお袋と穂南の狩りに付き合った。

 今日潜った三層ではUSの一般シーカーもある程度の人数が狩りをしていて、銃社会らしく、ショットガンのような武器を使う人たちも多いので危なっかしくてしょうがないと思ったよ。

 これなら軍関係しかいない六層以降の狩場の方が事故の確率は低いよね? マジで……


 でも、ドロップが基本出ない三層の狩りでショットガンを使って狩りするなんて、どんだけお金かかるんだろうね? と思って聞いてみた。


『ねぇデビット、ショットガンの弾丸ってUSだといくらくらいするものなの?』

「メーカーやランクによって違いはありますが、概ね1ドル前後でしょうか?」


 思ったより安い弾丸の価格にちょっとびっくりした……


 それでも何とか午前中は人気の少ない所で三層での狩りを行い、明日からは六層に行くと告げて、今日の穂南とお袋のステータスアップは終了した。

 午後からは、穂南とお袋はナタリーとメーガンの案内で、ワシントンDC近郊を観光するそうだ。

 穂南はNYに行ってみたいらしいけど、地図で見たら近いように感じるこの二都市間の距離は三百五十キロメートル程もあり、移動にはそこそこの時間がかかるから、二日くらいの余裕を見なければゆっくり見て回る事は出来ないだろうね?


 感覚的には東京と名古屋を往復するような感じだね。

 そのうち狩りを休みにして、みんなで出かけるのも良いだろう。

 でも、このUSの三次ダンジョンはNYに出現していて、現在はスタンピード前にダンジョンシティとなる範囲の壁を建築する準備に入っているそうだ。

 金融街の中心地に現れたらしく、都市機能の本格的な移転を求められて慌ただしくなっているそうだ。


 この先どこにダンジョンが現れるかの予想が難しいので、移転先の選定も難しいよね。


 午後になり、俺達が七層へと降りて行くとマイケル達のチームと合流した。

 グリーンベレーの主戦武器は、当然の様に銃がメインだがダンジョンでも使ってるのかと思ったけど、流石に装備はしているけど主に銃剣として使ってる感じだった。

 ダンジョン鋼を利用して作られた特殊なM4カービン銃にダンジョン鋼の銃剣が取り付けられており、スライムの溶解液に対応している。


 日本の攻略班では流石にM4の本体まではダンジョン鋼では無かったので、その辺りは生産国の強みかな。


『こっちではダンジョン鋼の弾丸も普通に手に入るの?』

「TB、普通には手に入らないが、第一次ダンジョンのスタンピード以降、積極的にダンジョン鋼を使用した銃弾は作られるようになっているから、当初よりは値段は安くなってきている。現在M4用のNATO弾だと一発20ドル前後だな」


『そうなんだ、それくらいの値段だと実用性もありそうですね』

「それでも単発射撃以外の使用は原則禁止とか、結構縛りは厳しいよ」


『軍は良いけど一般のシーカーが銃で狩をして、利益を出すのは難しそうですよね』

「レイスに対してはダンジョン鋼でも役に立たなかった事実もあるからこのダンジョン鋼の装備も精々十層くらいまでだと予想されてるよ」


『あー、そう言えば日本の攻略班がミスリル武器でレイスの討伐が出来るか実験した結果は届いてますか?』

「いや、まだ聞いてないな」


『斑鳩二尉からメッセージ届いてましたけど、ミスリルだとレイスは倒せるそうですよ』

「それは朗報だな。今後予想される霊体系の敵に対しての対策案になる。ポーションは決して安くないし、光魔法の所持者は少ないからな」


『USでも聖属性の魔法はまだ確認されて無いんですか?』

「回復の効果がある様な魔法かい?」


『そうです』

「残念ながらまだ報告は無いね」


 ポーション関係の値段に大きくかかわりそうだし、存在しないならその方がいいよね? っとちょっとだけ思った。

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