第44話 各国の査定

 取り敢えず事務所に戻ってきた俺達は、USの出してくれた見積金額を確認してみた。


「ええ、こんなに高いの?」

「他の国がどれだけの値段を付けて来るかは分かりませんが、ランク2やランク3のポーションであっても、日本ではとても買取金額が安いですから。骨折治療を即時で出来るランク3はプロスポーツ界などが、十万USドルでも喜んで出しますよ、例えば靭帯のトミー・ジョン手術を受けると、実践復帰には一年以上もかかります。それが即時に直るのであれば、その価値は計り知れないものになります」


「なる程ですねー」

「ここだけの話、日本ではダンジョン協会が五十万JPYで仕入れたランク2ポーションを百二十五万で売りに出します。そしてそのランク2はほぼすべて国外に買われ五万USD程で流通します。それでも数が足らないので、十万USDでも実際には売れるでしょう」


「ひどい話だね……」

『そうだな、これから先スキル取得者が増えて来るとある程度の数は出回るから、ランク3くらいまでは値段が落ち着くかもしれないけど、実際ランク4以上となると錬金術系のスキル所持者が現れないと出回らないと思うけどな』


「TB? もしかしてその錬金術系のスキルが使えるのですか?」

『どうでしょうね? 今はまだ回答は控えておきます。俺の周りの人たちに危険が無い状態になるまでは、情報の露出は良くないと今回のJDAの判断で良く解りましたから』


「そうですか……もう一つ提案しますが、TBがUSに入国する場合、SUSUMU KITAHARAの人格を認めて人として扱う事をお約束しますけど?」

『ええええええ? 俺の正体って解ってるの?』


「諜報活動を行う物であれば、誰でも容易に予測がつきますよ……ご家族の事が心配であれば、お母様と妹さんもUSが責任を持って保護をさせていただきます」


 そこまで話が進んだ状態で、漸く聖夜が電話を終えて俺達の居るテーブルの方にやって来た。


「現状、JDAの言い分に対して国として処分の取りやめを求める訳にはいかないとの返答になりました。もしTB並びに麻宮さん田中さんが国外に行かれる場合は、私達も護衛として同行する事になります。先ほどご家族の話が出ていましたが、ご家族の安全の保障は、日本国としても行えますが、TBの人格を認める決定は出来ないとの現時点での回答です」


「流石日本! 優柔不断ここに極まる!! って感じの返事ですね」

「社長ー面倒だしUS行っちゃおうよ」


『そうだなぁ。穂南の学校の事とかあるから即断はしにくいけど、一応他の国のエージェントの人達も昨日の回答持ってくるだろうから、それが出そろってから決めようか』

「了解です」


 それから昼までの時間に、昨日集まった各国のエージェントがそれぞれ見積もりの価格を記入して持って来た。


 結局日本の買取額が圧倒的に安いのが判明してびっくりだった。

 他の国は若干の誤差こそあれ、概ねUSの提示した価格と同じレベルだった。


 そもそも仕入値段と再販売の値段の掛け率が全然違って、同じ市場価格25万円のランク1ポーションで、日本ではJDAの買取価格が10万円だが他国では15万程の買取価格になる。

 日本ぼったくりだな。


 ランク2以上は実際には市場に殆ど流れていないこともあり、赤ポーションの場合で、各国の平均買取価格は、


ランク2 7500USドル

ランク3 3万5千USドル

ランク4 15万USドル

ランク5 75万USドル


エリクサー1500万USドル


 との提示を受けた。

 青ポーションに関してもランク3以上は、同じ価値になるそうだ。

 ランク2までは消耗品として、頻繁な使用が予想されるために、価格の高騰を防ぎたい目論見があるみたいだな。


 今後回復魔法と呼ばれるものが一般的になってくれば、話も変わるだろうけど、果たしてどうなんだろ?


 各国ともに、情報として俺達がダンジョンへの侵入を断られたことも当然の様に察知していて、それぞれが探索者シーカーとしての活動を誘致して来た。


 とりあえず返事は明日以降に行う事を伝えてお引き取り願った。

 午後二時頃になり、ダンジョン関連の情報を調べていると彩から連絡が入った。


「何だか大変みたいね?」

『ああ、結構大変だよ』


「日本で活動するなら北原三尉としてなら許可は出せるわよ?」

『それだとドロップ全部国に取り上げられるし意味ないじゃん』


「まぁそうだね。JDA以外に買取をしてくれる所と、ダンジョンの侵入許可の問題だよね?」

『そうだな。でも時間がかかりそうだから暫くUSに行ってこようと思う』


「それだと私いけないじゃん」

『彩はこっちで頑張ってくれ』


「あ、スマホのアプデってお願いしていい?」

『いいけど一応予備持ってきなよ?』


「了解」


 その後で彩を待っている間に相川って言う人に連絡してみようかという話になった。


『相川さんの携帯でよろしかったでしょうか? 先日お訪ねいただいた田中と申します』

『田中さん。連絡をお待ちしておりました』


『早速ですが、どのようなご用件だったのでしょうか?』

『電話では詳しい内容は控えたいので、一度お会い出来ればと思いますが、内容といたしましては今後のダンジョン産業における問題。主に探索者の皆様からの買取の件についてお話しさせて頂きたいと思っております』


『そうですか、今日は一日事務所に居ますので、本日中ならお話を伺っても構いません。明日以降ですといつになるか全く私達にも予想できませんので』

『解りました。今から三十分以内には伺わせて頂きます。一名同行者を伴って構わないでしょうか』


『了解しました。お待ちしております』


「社長。今から一人、同行者を連れてからくるって」

「わかったー」と言葉で返事したら「ニャア」と響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る