第41話 代々木七層目

 色々あったけどようやく代々木ダンジョンへと訪れた。

 自衛隊の部隊はまだ大勢いるが俺達が目標とする七層へは攻略班は来ていないので問題は無いはずだ。


 一層からダンジョンリフトを利用して五層へと転移して、そのまま六層を通過して七層へと降りて来た。


『新種の敵と出会えたらいいけどな。麗奈またスマホで敵の撮影を頼むね』

「了解です。社長」


この階層では

レッドスライム

ホブゴブリン

レッドウルフ

キラーラビット

エレクトリックマウス

土蜘蛛


 以上の六種類の敵を確認した。

 土蜘蛛を取り敢えず倒してコアを融合させたいな。


 この階層は森林ステージで見通しが余りよくない。

 基本的にクロスボウを使う麗奈と聖夜に遠距離から攻撃して貰い、近寄って来たら咲とエミが止めを刺すという形で狩りをする様にしてもらう。


 俺は、基本自由に動かせて貰うよ。

 だって蜘蛛のコア飲み込みたいしね。


 索敵をしながら森林ステージの中を走り回って敵を一通り倒していく。

 六層と比べて若干強いのかもしれないが、それ以上に武器能力が向上しているので、狩り自体は今までの六層よりだいぶ楽に感じる。


 俺がレッドウルフと戦っていると、いきなり動きを阻害するような糸が飛んできた。

 土蜘蛛だな。

 焦らずにミスリルダガーに風を纏い、蜘蛛の糸を断ち切る。

 これは通常の武器では恐らくこの糸すら斬る事が出来ないだろうな。


 六十センチメートル程のでかい蜘蛛だったが、複眼のうちの一つが光沢がある様に見える。

 恐らくあれがコアだと思う。


 俺は大きくジャンプして、溶解液をかけた。

 効果はあった。

 そのまま動きが鈍った蜘蛛の後頭部から、ダガーを差し込み、頭を2つに割ると。露出したコアを爪で掻き出して、飲み込んだ。


『土蜘蛛LV7の核と融合を果たしました。スキル【操糸】を獲得しました』

 むむっこれは蜘蛛っぽいけど、使いこなすのは練習が必要だろうな。


 でもとりあえず今日一番の目標は達成だ。

 後は出来るだけマウスを狩ってスキルのレベルアップを狙いたいとこだ。

 予想では残り百個は必要ないと思うし。


 四時間程狩りをして午後三時になったので、一度狩りを切り上げて外に出る事にした。


『咲と麗奈はどうだった? 新しい武器の感じは?』

「私達は六層よりかなり狩り易いと思って狩ってたけど。聖夜とエミちゃんが六層より全然手ごわいと言ってたから新しい武器の力みたいですね」


『そっか。それならよかった。後で今日麗奈に撮ってもらった写真データを鑑定して、魔物のステータスを比べてみようね』

「はい社長。とりあえずダンジョンから出たら、そのままD.Aに向かいますね。JDAがいくらの値段をつけるかが、気になりますよね」


『俺はなんか嫌な予感がするんだよね。とんでも発言があれば売らないだけだけどね。回収って出来るのかな?』

「あまりにも安い金額を言われたら、現物を返せと言いましょう。こっちは治験をせずに、斑鳩二尉の鑑定に頼った事を知ってるんだし、どっちにしても反応が楽しみです。そのやり取りの様子は最初から録音しておきますね。相手の態度が失礼だった場合は、そのままVチューブに晒します」


「あの、麗奈さん。その場合は基本JDAと取引をしなくなるという事ですか?」

「聖夜さん? 売らない自由は在りますよね? 他国とすぐに直接取引をするとは言いませんが、不当な取引を見逃すわけにはいかないですから。その時は今日の各国のエージェントの協力を仰いで、JDAに対して敵対する事はあるかも知れません」


 麗奈の言葉に聖夜さんは少し不安そうだった。

 実際問題として、今日の俺の四時間の狩りでポーションは各種合わせれば、三十個ほど出たし、七層で時間当たり七個を超えるのなら結構な効率だと思う。


『四人はドロップはどうだったの』

「今日は全員分を合わせて合わせてポーション系がランク1ばかりで十五個ほどですね。金属がダンジョン鋼だけで四個です。魔石は合わせて二十個ほどですね」


『そっか、普通に四人で狩をしてその量だとあまりおいしくないかもしれないな。魔石の使い道がはっきりとしてくれば、また違ってくるのかもしれないけど』

「魔石って明らかにエネルギー源っぽいですよね。魔道具のような物が出てくると使い道多そうですね。発電とか出来たら大金持ちかも?」


『その辺りは専門で研究する機関があるんだろ?』

「WDA世界ダンジョン協会の研究開発機関では世界中から科学者が集まって、研究を始めてるらしいですよ?」


『咲ちゃんWDAとJDAって同じような機関なんだろ? それじゃあまり信用できないかもね?』

「どうでしょ? 資本提携とかあるわけでなくただ情報の共有と言う部分で窓口が同じだってだけだったはずです。JDAはあくまで日本政府系の第三セクターだったと思いますよ」


『そうなんだね。咲ちゃん詳しいね』

「大学で専攻してるゼミが、丁度その辺りの事をやってましたから」


『じゃぁJDA以外にもダンジョン物資を扱う事自体は出来るの?』

「禁止する法律は無かったはずですけど、それこそ今回の問題と同じで誰の責任でそのダンジョン産物資の品質を保証するのか? とかそう言う問題で一般企業が取り組むにはハードルが高いって事だったと思います。鑑定が一般的じゃ無かったですし、一々使って見ないと本物かどうかも解らないんじゃ、流通なんて出来ないですから」


『じゃぁさ、逆に言えば鑑定さえできれば問題無いのかな?』

「その鑑定の保障を誰がするの? っていう話になると思いますよ」


『聖夜さん達はその辺りとか詳しく無いの?』

「あ、一応今のJDA協会長は警察庁からの天下りで、検査機構も鑑識出身者で運営されてる建前ですね」


『そうなんだ。でも私企業中心だと非合法組織なんかも入り込んできそうだし、その辺りは取り扱いが難しそうだね』

「私の立場からは何とも言えません」


『あれ? 聖夜はJDAを擁護するってわけでは無いの?』

「そこは私の任務とは関係ないですね。ただし立場上国益に適うかどうかで、なんらかの指示が出る可能性は無いとは言えません。公安と言う職務からすると日本の不利益と言う一部分に対してしか権限は無いですから」


「それって見方次第ですよね? 世界共通の利益の部分で言ってこられたりすると圧力で変わりそう……」

「咲さん。その辺りは仰る通りだと思いますよ。ただし私達はそこを自分で判断できる権限は在りませんので、決められた法に対して合致しているかどうかで判断するしかないんです」


『さっきの各国のエージェントと一堂に会するのとかは、どうなの?』

「日本国に秘密であれば問題です」


『じゃぁさっきのは聖夜とエミが日本代表なんだ?』

「建前上ですね」


 さて、じゃぁ行こうか。

 麗奈と咲でJDA代々木支部の中に入って行った。

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