第39話 スパイ天国だねぇ
俺は久しぶりに家に帰ると「ニャン」って鳴いて見た。
「あ、お母さん。お兄ちゃん帰って来たよー」
「な、なんだと……」
俺は思わずつぶやいたが、その場に聞こえる音は当然「ミャミャアア」だった……
「お帰りTB。ごめんね穂南にバレちゃった」
そう言いながらゲンコツを頭に当てながらテヘペロポーズを決めたお袋に『死ねKSBBA』と思ったことは内緒だ。
「ねぇお兄ちゃん。世界一強いのって本当なの? そんなにちっちゃいのに?」
「穂南。今日のお昼のテレビにも自衛隊の斑鳩さんと一緒に映ってたの視たでしょ? あれは流石に誤魔化せないよ」
「お母さんの言う事は解るんだけど、どう見ても子猫のお兄ちゃんが強いって言われてもピンとこないんだよね」
俺はしょうが無いから、スマホを取り出して穂南にメッセージを送った。
『穂南がどう思おうと今の俺はこの姿だからしょうがないんだよ。黙っててゴメンな』
「お風呂で私の裸堪能したんだから、なんか驕ってくれないと許さない!」
『あー、何でも好きな物買ってやるよ』
「本当? じゃぁダンジョンで使える装備品買って欲しいかな?」
『それはお袋とも約束してたから、もう用意してるけど本当にダンジョン潜るのか?』
「うん。私の友達も前のスタンピードで被害にあったし、魔物なんて絶対に許せないから戦える様になりたいの」
『ある程度強くなるまでは、兄ちゃんが一緒に行くから絶対に無理はするなよ?』
「解った」
そう返事をすると俺を抱っこしてくれた。
やっぱり穂南のおっぱいはフカフカだぜ。
「良かったね進。穂南はちゃんと許してくれたみたいで」
『でもさ。一応、俺の存在が進だって言うのは、公式には秘密にしておかないと面倒がありそうだから、その辺りは穂南やお袋から漏れない様にして欲しいな』
「解ったよ。でもそれは何か理由があるのかい?」
『うん。俺の特殊な能力で色々作れたりするから、バレると海外組織とかにさらわれる危険性だってあるし、まだ俺が狙われるならいいけど、お袋や穂南が狙われたりしたら大変だからな』
「そうなんだ。解ったよ」
俺は、この時はまだちょっと海外勢力の動きを甘く考えていた事を後悔する事になる……
◇◆◇◆
翌朝、麗奈と咲がエミさんと一緒に迎えに来た。
彩さんは防衛省の庁舎に出勤してるそうだ。
海外の二次ダンジョンへの突入が始まっているので、不測の事態が起きた場合のアドバイザーとして呼ばれてるらしいけど、五層への通信手段がない以上臨機応変な対応なんてできないし何をするんだろうね?
「おはようございます社長。今日はどんな予定なんですか?」
『おはよう。今日は代々木七層に潜りたいね。早く異次元ボックスのレベルを上げたいし』
「なるほどですね」
『スタートする前に武器をアップデートするから、ちょっと貸して』
俺は麗奈と咲の武器を、それぞれミスリルと合成して、無事に成功させる事が出来た。
エミちゃんは決してパーティメンバーではないし、そこは割り切って無料でアップデートするようなサービスは行わない。
『そう言えば、ポーションの買取価格は回答あったの?』
「今日の午後以降に連絡があるそうです」
『当面さ、俺達しか手に出来る事は無いと思うんだよね、ポーションランク4以上の物は』
「私もそうだと思います」
『でも逆に言えば、買取をしてくれるところもD.Aしか無いわけだから、もしかしたら不当に安い金額を言ってくる可能性もあるんだよね』
「まさか……」
『その場合、俺は一切提供するつもりが無い事は、はっきりしておきたいから、D.Aに何を言われようと安請け合いだけはしないでね?』
「解りました」
そんな会話をしていたら彩から咲に連絡が入って来たみたいだ。
「どうしましたか? 彩さん」
「昨日、麗奈がD.Aに納品したポーションとエリクサーを鑑定して欲しいって私に連絡が入ったのよね。高額な商品になりそうなだけに、治験で使うのは勿体ないから鑑定で答えを知りたいみたいで」
「あーなる程ですね。それでどうしたんですか?」
「一応TBがそっちにも現物持ってるでしょ? 咲とTBにも鑑定して貰って、答えが同じかどうかを、すり合わせしたいかな? って思ってね」
「解りました。TBに聞いて見ますね」
俺は会話が聞こえていたから頷いた。
「OKです。鑑定終わったら結果をメールで送りますね」
「了解です」
俺達は、一度事務所に向かい咲と俺でそれぞれ同じ鑑定結果になった内容を、彩にメールした。
赤ポーションランク4……百八十日以内の傷の切断部位をつなぐことが出来る。
骨折や傷跡も百八十日以内の症状に対して有効。
赤ポーションランク5……三百六十日以内の臓器を含む裂傷や骨折を回復できる。
青ポーションランク3……呪い、毒、ウイルス及び中級状態異常の回復。
青ポーションランク4……石化、癌、エイズなどの症状及び上級状態異常を回復できる。
青ポーションランク5……裂傷以外のすべての毒、ウイルス、状態異常に対して回復効果あり。
エリクサー……欠損を含むすべての症状を治療再生する事が出来る。
「どれだけの値段を付けてくれるのかが、はっきりしないよね。JDAだけで確認を取るのは危険かもね」
『そうだな……エミさんちょっと聞いていいですか』
「なんでしょう?」
『まだ各国のエージェントって、この周りに居ますか?』
「……はい」
『呼んでもらう事ってできますか?』
「えっ? それはちょっと、私の判断では……」
「あ、社長。そう言えば青木さん言ってたじゃないですか?」
『ん? 何を』
「ここ、恐らく盗聴器だらけだって」
『ああ、そうだな』
「だったら簡単ですよ。各国のエージェントさん聞こえてますか? 今から十分以内にここに尋ねて来て貰ったら、お会いしますよ~」
「れ、麗奈さん何を……」
しかし時すでに遅しだった。
二分以内には、US、GB、DE、CN、KR、FR、RUのエージェントがそれぞれ勢ぞろいして訪れた。
エミさんが慌てて青木さんに連絡を取り「会話を始めるのを青木が到着するまではお待ちください」と頼まれた。
少し涙目だった。
「えーと、初めましての方が多いですね。RUのお二人以外は」
「JPの公安にも立ち会って頂きますから、話を始めるのはもう少しだけお待ちくださいね。お飲み物は差し上げますので、好みが解りませんので、適当にボトルドリンクお出ししますね」
そう言って冷蔵庫からジュースやお茶などを出して来た。
「取り敢えず初めての方が多いから、お互い自己紹介でもしましょう」
麗奈の思いっきりの良い行動に流石の俺もちょっと焦った。
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