第38話 帰りの車で合成してみた
俺達は一匹と六人で攻略班に先立ち、リフトで一層へと戻った。
既にスタンピード自体は止まっているが、一時間と少しの間に溢れ出した魔物の数は一万匹を超えており、梅田ダンジョンを取り囲む自衛隊の部隊が絶賛作戦行動中であった。
俺達が地上に姿を現すと大きな歓声が沸き、すぐにD.A梅田支部に設置された通信機器の前に俺と彩が連れて行かれて、上田二佐と共に世界中のダンジョン攻略班の指揮官と衛星回線でつながった会議が始まる事となった。
「『自営隊地下特殊構造体攻略班』斑鳩二尉です、今回二次ダンジョンに置いて現れた中ボスは霊体の敵レイスでした。残念ながら先発隊で突入した班では、これに対応できずに壊滅しましたが、それを受けて突入した私達攻略班と民間探索者の合同チームにより撃破に至りました。今回の敵に対しては物理攻撃を行うと際限なく敵が増殖してしまうので、直接の攻撃は無理です。撃破に有効なのは私達はポーションを魔法でレイスに巻き込む方法で倒しましたが、同行した民間探索者の見解では、普通の水鉄砲でポーションの水溶液を作って置き、吹き付ければ魔法は関係なく倒せるのではないか? という意見が出ております。実際には試行を重ねないと、はっきりとは言えませんが、ご参考までに。以上で報告を終わります」
斑鳩二尉の報告に対して質問が寄せられる。
「使用するポーションはランク1の物で構わないのか?」
「今回は私たちは発動一回に対して十個のランク1ポーションを使用しましたがこれは万全を期すためにかなり多めに使用としたといえます」
「初期の敵の数は?」
「初期は一体です。答えがわかっていれば増殖させることなく、比較的簡単に討伐可能と考えられます。むしろこれは世界中の探索者にスキルの習得とランキングカードの所持を促しているのではないかと思われます」
「それは何故?」
「理由は不明ですが、仮に水鉄砲での撃破が可能なら、五層まで辿り着ける探索者であれば十分に単独での討伐が可能だからです。一次ダンジョンの例に当てはめるなら、全探索者の10%がスキルホルダーとなります」
「了解した。早速スタンピードの終息を目指させて貰おう」
「健闘を祈ります」
俺は彩の横にいただけで、別に何もしゃべらなかったが、概ね彩の発言で問題無いと思ったので、後の事は自衛隊に任せて東京に戻る事にした。
『麗奈も咲もお疲れさん。二人の協力が無かったら今回はちょっと大変だったよ』
「社長がいなかったらそもそも倒せなかったと思うし、社員の務めですよ」
『ありがとう麗奈、ボーナス弾んでやるからな』
「社長、大好きです」
「TB。あんまり麗奈を甘やかさないでね」
『でも、咲のパリィ凄かったな。レイス二体相手にして、全部防いでたじゃん』
「ありがとう。それなりにステータス上がってるしね」
『戻ったら代々木でまた色々実験しなくちゃね』
「そう言えば聞きましたか? 代々木七層と三次ダンジョンの福岡警固公園ダンジョンの事?」
『まじ? 警固公園ってお袋の実家の近くだよ』
「そうなんですね、でもまだ一層だけだから私達が行くにしてももう少し後ですね」
『そうだな。俺帰りの車の中で運の数値変えてポーションの合成とかチャレンジしてみるよ』
青木さんと遠藤さん、それに彩も俺達の担当としてそのまま派遣が続く事になったので一緒に東京へと戻った。
『今回つくづく思ったのは、鑑定スマホもう一段階アップデートされたら。ダンジョン内通信可能にならないかな? って事だね』
「あー、それ単純だけど一番大事な機能かも知れませんね。実際他国の二次ダンジョンは、今から決死隊がスタンピードの中を突入して、五層まで辿り着かないといけないから、いくら慣れてても被害0では辿り着けないですからね」
『うん、スマホがアップデートできれば、これからスキルホルダーは増えるし、最初から該当階層で待機してれば、ある程度被害は減らせるからね。必要な部署にだけは、有料で鑑定スマホ作っても良いけどな』
「社長。それ超お金持ちになれる未来しか見えませんね。バラ色の人生設計できます!」
『まぁ状況次第でだね』
東京へ戻る車の中で、ステータスをいじって運極振りにしてみた結果は、合成に関してポーションでは劇的に成功率に変化があった。
ランク1からランク2では運の数値が200あれば、二個の合成でほぼ百パーセントの成功。
ランク2からランク3では300あれば二個の合成で百パーセントとなった。
同じくランク4へはランク3を三個使えば百パーセント。
ランク4からランク5へはランク4を三個使って50%と言う感じだった。
ランク5からランク6へのチャレンジをしようと思ったが、ランク5の赤ポーションの二個目がグレーアウトして選択できなかった。
現状、ランク5までしか実装されてない様だ。
果たしてこのランク5のポーションがどの程度の効果があるんだろうか?
東京へ帰り着くまでの間に、赤ポーション青ポーション緑ポーションの三種類をそれぞれ五個ずつ作成してみて、更にランク5の赤ポーションの二個目に青ポーションを選択すると選択できた。
これはもしかしてがあるぞ?
3個目に緑のランク5を選択すると、合成を実行した。
出来上がったのは【エリクサー】だった。
『全ての病、欠損状態を回復する。ただし加齢劣化に関しては回復できない』
すげぇ……
でも若返りは出来ないみたいだな。
それにしても、これはどうするべきだろうか?
まぁ成功率とか誰にも分らないんだから、俺の負担にならない範囲で流通させても良いかな?
『麗奈ちょっといいか? 代々木のD.Aにランク4とランク5の赤と青のポーション。それとエリクサーを一つ預けるから、買取価格を算出して貰ってね。安かったら流通はさせないけど、目安を知りたいから』
「社長エリクサーとか…… 成功しちゃったんですか? どんな効果があるんですか?」
『エリクサーは死んでなければ欠損でも病気でも治るみたいだよ。ランク4と5の赤と青のポーションは、使って見ないと解らない感じだね』
「エリクサー……価値を考えると、安く買いたたかれても十億円とかになりそうな気がします……」
その後は金属合成へと、チャレンジしてみた。
ダンジョン鋼をLUC300の状態で二個合成すると、ダンジョン銅と言う金属が出来た。
更にダンジョン銅を合成すると、二個で50%三個で100%の確率で、ミスリルの錬成に成功した。
ミスリル三個を選択して合成すると……
十回チャレンジしたが、すべて失敗に終わった。
選べる以上先はあるはずだが……
まだLUCの値か異次元ボックスのレベルが成功させるには足らない様だ。
ミスリルでも十分に優れた金属のはずだから、今はこれでいいだろう。
俺はとりあえず自分の武器をミスリルへと変質させておいた。
八時間をかけ無事に東京へ戻ると、お袋と穂南の居る自宅へと送り届けて貰った。
「TBまた明日の朝迎えに来るね」
『うんお願い。お疲れ様ぁ』
その様子を見ていた青木さんが「あのTBは一緒に居ていただけないのですか? 護衛の関係上出来れば一緒に居てほしいのですが?」と言って来たが麗奈が一蹴した。
「聖夜さん? 今この世界中で社長を捕まえたり、どうにかしたりできる人いると思いますか?」
「ま、まぁ確かにそうですけど狙撃やご家族の方の安全などを考えると、出来るだけ一緒に行動したいので」
『俺猫だし、あんまり干渉されると逃げるよ?』
「いや、それも困りますから……解りました明日また合流させて貰います」
「聖夜たちも、この三日間お風呂も入れてないでしょ? 一度家でゆっくりしておいでよ」
「あ、はい。一応交代で警戒はさせていただきます」
「エミちゃんも大変だねぇお仕事とはいえ。でもエミちゃんだけなら私達の事務所のお風呂使っても良いからね」
「あ、助かります」
「聖夜は駄目だからね? 自分の家で入って来てね」
少し寂しそうに青木聖夜は咲と麗奈を送り届けた後で現場を離れて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます