第36話 梅田ダンジョン中ボス戦開始
六人でパーティを組んだ状態で五層まで辿り着いたTB一行は五層中央部分に展開する『特殊構造体攻略班』第七班班長の大川一尉に彩が挨拶に行った。
「大川一尉、緊急時のバックアップ要員として、民間ではありますがランキング世界一位の方に待機して頂く事になりましたので、私はその方と共に後方待機をしておくようにと上田二佐より命令を頂いております」
「民間のランキング一位だと? そちらの男性の方か?」
「いえ……そちらの男性は公安の警護の方です」
「公安の警護? ランキング世界一位を警護とは、どんな話なのかよく分からないが一位の方はどちらに?」
「あ、その大川一尉の足元に……」
「は? うわ! 猫? 魔物か?」
「あ……違います。その猫がランク一位の複数スキルを使える、実質世界最強の存在です。しゃべれませんが言葉は理解できますので……」
「本気で言ってるのか? 斑鳩二尉」
「はい、実際に私がオークを討伐した際も、ほぼその子が倒してくれまして、本官はそのおこぼれを頂戴したような物でした」
「そうなのか、解った。無いとは思うが突入班の作戦失敗や不測の事態があった場合は助力を願う。基本は民間に助けを願うなどあってはならぬ事だから、作戦の妨げにならぬよう待機を願う」
「了解しました。健闘を祈ります」
『彩、大川一尉ってなんか張り合ってる?』
「うん。凄いプライドが高い人で女の私が同列に居る事すら気に入らない部分がある感じなのよね」
『プライドが高いのはいいけど、そのせいで部隊に危険が及ばなければいいけどね。俺達は攻略班が居る周辺からは離れてテントを設置し、その近辺で狩を行おう。交代しながら二十四時間体制でやらないと体力が持たないからね』
「了解」
俺が開けた場所に異次元ボックスからテントや簡易トイレを出して狩を始めた。
俺と麗奈とエミの班と、彩と咲と聖夜の班で交代しながら魔物を倒し続けた。
近くにいるので片方の班が休憩中でも順調に経験値は稼げて行ってる。
五層に籠り、二日目の昼頃に俺がアルミラージのコアを吸収すると久しぶりに、スキルを覚えた。
【格闘術LV1】というスキルだった。
初期では【正拳突】という技が使えたが、このスキルではSTR、VIT、AGIの三つのパラメータが、LV1で五パーセント上昇するので、身体強化の劣化版のような効果もある。
ステータスを確認すると、ちゃんと身体強化に上乗せされていたので、かなり便利は良いが、俺の子猫の身体で正拳突はあまり効果が無さそうだな。
変身系やサイズが調整できるようなスキルを手に入れたいぜ。
後はポイズンマウスのセカンドスキルがどんなのが手に入るかだけどネズミは予想がつかないな。
公安コンビは心配する程の事も無く、むしろレンジャー出身の進から見ても十分な格闘センスを持ち、特にアーチェリー経験者だと言う聖夜さんは、クロスボウの命中率に置いて麗奈よりもすぐれていた。
エミさんも棒術に関しては彩に匹敵するセンスがあり、ステータスの差こそあれ、この五層で大きなけがをする事も無く狩りを出来るのは十分に凄いと言える。
まぁ武器が良いからね。
クロスボウの矢はドロップで増えたダンジョン鋼を俺が合成で加工し、やじりだけでなくシャフト部分までダンジョン鋼に置き換えた矢へと変更した。
回収は面倒だけど倒された魔物は光に還元されるので、魔物から抜く手間は無いから的を外しさえしなければ、そこまで大変では無い。
カーボンシャフトにダガーを取り付けるタイプの槍を使っていたエミと彩の二人の武器もカーボンシャフトをダンジョン鋼に置き換えて強度を増した。
ステータスの上昇により重さを気にしなくてよくなったから、強度を中心に考えた場合この選択で正しいと思う。
俺の使うダガーや咲の刀もグリップ部分までダンジョン鋼に置き換えたので強度の心配は少なくなった。
そして、三日目を迎えた時に俺の風魔法がLV3に上昇し範囲魔法であるトルネードを覚えた。
発動方向の敵を竜巻で巻き上げて空中から落とす魔法だが、主にダメージを与えると言うよりはバランスを崩すという使い方の方が正しいかな?
気配探知と身体強化もLV4、DEX強化はLV3になった。
気配探知LV4では、対象の種別まで正確に認識できるようになっていて、フロア内有効だ。
そしてこの日の昼過ぎに、ついにその瞬間は訪れた。
攻略班の連中が陣取る方向へ神殿が現れるとともに一斉にこのフロアの魔物達が上層階へ向かって走り始めた。
『始まったな。彩どうする?』
「一応、大川一尉に声をかけてみるわ」
「大川一尉。突入班はどうされますか?」
「斑鳩二尉。予定通りだ。本官を含む第七班から第十班までの四班が突入をして、第十一及び十二、十九から二十四班の八班がバックアップとして残る。本官突入後は第十一班坂本一尉の指示に従うように」
「了解しました。健闘を祈ります」
『まぁ予想通りと言うか、どうしても自分で何とかしたいみたいだね。中に入らないと敵の種類は察知できないから何とも言いようがないけど、攻略班のメンバーに負傷が無かったら良いんだけどね』
「そうね。私達は今のうちに補給を済ませて何かあった時に備えましょう」
そう言って神殿内の安全地帯に移動し、食事をとる事にした。
俺は異次元ボックスの中に大量にいれてる冷たく冷えた炭酸飲料を残った攻略班の四十八人にいきわたる様に出してあげ彩に差し入れをさせた。
「斑鳩二尉。何故ダンジョン内でこんな冷えたドリンクが手に入るのですか?」
「ほら、そこのランキング一位の黒猫君の能力だね」
「身につけたいですね。その能力」
「でもこれだけ狩っていても、まだ攻略班でのスキル獲得者がここでは出ていないんでしょ?」
「そうですね。現在代々木で一日二名程度はオークから獲得できてるそうなので、これからはスキル保持者を中心とした再編成になって行くでしょう」
「そうでしょうね。攻略班自体が能力の底上げできれば今後安定するでしょうしね」
そう言う会話をしながら、扉が開くのを待つが既に三十分が経過しているのに、まだ開かない。
『彩、情況的にかなりまずいと思う。この次の突入を俺達に任せてもらえる様に話をつけてきて』
「了解よTB」
「坂本一尉、状況は厳しいと判断せざるを得ません。もし大川一尉が突破できなかった場合、私達に任せてほしいのですが、許可をお願いします」
「……了解した。頼む」
『聖夜。エミ。二人は突入は遠慮してくれ。ステータス的にもはるかに上位の攻略班の精鋭が後れを取る状態で、経験の浅い聖夜たちがいるとはっきり言って足手まといになる。ここは了解してくれ』
「解ったTB。ここで大人しく朗報を待つよ」
『彩、初期メンバーの隊員を貸して貰える様に坂本一尉に頼んでくれ。撃破した時のスキル取得要員は、攻略班から出した方が禍根を残さないから』
「解ったよTB」
「坂本一尉、松田曹長、山本一曹、鈴木一曹の三名をお預けいただけませんか?」
「了解した。よろしく頼む」
四十五分が経過した時に扉は解放されたが、内部に突入した七班から十班の隊員は存在しなかった。
オーク以外の敵であったことは間違いないが果たしてどんな敵が現れたのか……
『彩は隊員三名と共に遊撃位置について、基本ファイアボールとクロスボウでの遠距離に終始してくれ。もし物理が聞かない様な敵だった場合は回避を徹底するように指示を頼む。麗奈は俺の鑑定スマホで撮影を頼む。咲は麗奈を守る事に集中してくれ、鑑定が勝負を分けると思う』
「「「了解」」」
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