第35話 パーティ組んでみた!

「青木警視。遠藤警部補の両名はこのままマルタイ護衛対象に対して接触を図る国外勢力の把握、および我が国がダンジョン攻略及びダンジョン物資を有効活用する事に対しての優位性を損なう事が無いように、常に行動を共にするように。必要な武器や装備品などは最大限の便宜を図るよう、防衛相管轄の『特殊構造体攻略班』にも協力を要請してある。窓口は斑鳩二尉だ。防衛省とも軋轢を生む事が無いよう行動には十分配慮したまえ」

「了解しました」


 夕方D.Aのサイトを通じて全世界へ向けて生配信された麻宮、田中、斑鳩およびTBによる会見は、瞬く間に世界を席巻し地上波ニュース番組でも配信の様子が流され、国の枠にとらわれないダンジョン攻略活動を行うこのパーティーの話題で持ちきりとなった。


 当面日本国として、それほどの実力者が国内での活動を中心に動くようにさせるために、斑鳩二尉がこのパーティーに防衛省から派遣される事となり、さらに各国からの干渉が予想されるために、警察庁から公安の青木警視と遠藤警部補が派遣された。

 この両名は外国語にも堪能であり、海外勢力との接触に関しては必ず彼らが間に入る事を条件に認める事になった。


「青木さん。遠藤さん。今日の二層での狩りでどの程度能力が上がったか知りたいですか?」


 ここは咲たちが大阪滞在中に確保したホテルの会議室で、会見後に一度今後の方向性で話をしたいと言う事で彩も加わってミーティングを行っている。


「勿論非常に興味深い事です。ぜひ教えていただけますか?」

「まず、青木さんと遠藤さんはゴブリンとスライムをそれぞれ何匹倒されましたか?」


「私がゴブリン十八体スライム二十五体。遠藤がゴブリン十二体スライム十八体を倒しました」

「結構頑張ったんですね。それではステータス値がどのように変わったかを見ていただきます」


青木警視

Exp 0/0

STR + 10 -

VIT + 10 -

AGI + 10 - 

DEX + 10 -

INT + 10 - 

LUK + 10 -


狩り終了時

Exp 0.1212/2.1212


STR + 10 -

VIT + 10 -

AGI + 11 - 

DEX + 11 -

INT + 10 - 

LUK + 10 -


Skill 

MP 10/10

Rank 


遠藤警部補

Exp 0/0

STR + 9 -

VIT + 9 -

AGI + 10 - 

DEX + 11 -

INT + 11 - 

LUK + 10 -


狩り終了時

Exp 0.9853/1.9853


STR + 9 -

VIT + 9 -

AGI + 10 - 

DEX + 12 -

INT + 11 - 

LUK + 10 -


Skill 

MP 11/11

Rank 


「とこんな感じですね。青木さんが素早さと、器用さに1ずつの補正が入り、遠藤さんは器用さに対して1の補正が入っています。この器用と言う数字は、武器の取り扱いが上手になると言う側面が強いです」


「思ったより上がり幅って少ないんですね……」

「それでも、初期では恐らくボーナス的に数値が獲得できてる筈ですよ。実際私達だと既に二層辺りでは、一匹で0.0001の経験値も獲得できていませんから……」


「そうなんですか?」

「はい……」


「青木さんと遠藤さんのファーストネームを教えていただけますか?」

「ファーストネームですか?」


「はい。とっさの指示はその方が伝えやすいので」

「解りました、私が青木聖夜で、遠藤がエミと言います」


「えー青木さんそんなこわもてなのに、ホストみたいな名前なんだね」

「……よく言われます……」


「ちょっと麗奈。名前でいじったりしちゃだめだよ」

「だって咲。余りにも雰囲気と名前が違い過ぎるし」


「それはいいとして、聖夜さんたちは武器は都合ついたんですか? 明日からはスタンピードが落ち着くまで五層から戻ってきませんし、携帯食や遠藤さんはオムツも準備してないと大変ですよ? 都合よく簡易トイレは作れませんから」

「あ、はい、武器は斑鳩二尉経由で特殊攻略班から貸与を受ける事になってます。私は学生時代にアーチェリーの経験もありますので、クロスボウをメインに槍も使います。遠藤も棒術はなかなかの腕前ですから」


「私もオムツの件などは伺ってましたので、用意は整えています」

「そっか、それなら明日の朝は午前六時半に集合でそのまま五層を目指しますので、何度も言いますけど自分の身は自分で守ってくださいね」


「了解です」


 ◇◆◇◆ 


 翌朝、梅田ダンジョン周辺には既に大阪担当の六班以外の特殊構造体攻略班と、他にも自衛隊から千人規模で人員を集められている中を、ダンジョンの中へと進入して行った。

 実際この時点でも彩がいなかったら通行は出来なかったかもしれない。


 そりゃ前回の代々木ダンジョンの時は内部で探索していた一般のシーカー達は全滅だったし、いくら自己責任といえども、死者は少ない方がいいからしょうがないのかな?

『彩、一応攻略班ではいつ頃スタンピードが起る予定になってるんだ?』

「そうね、最短で明後日中に起こるんじゃないかと思われてるわね。第一層が現れて十日目で二層、二十日目で三層、三十日目で四層、四十五日目で五層が現れてるし、五層からはドロップがあるから、民間探索者も夜間フル活動で狩をしているし恐らく二週間前後で現れるという予想ね」


『そうかぁ、でも代々木の一次ダンジョンに比べてあからさまにペースが速いよね』

「一次ダンジョンは百日起きで予想がつくけど、二次ダンジョンは今の所ほぼ討伐数だと思われてるわ」


『それにしても早い気がするけどなぁ』

「あ、きっとTBが言ってるのはリポップ速度の違いによる、ペースの差なんじゃないかな?」


『違うの?』

「一次ダンジョンでも今は同じなんだけど、六層登場以降はリポップがかなり早いわよ。初期は24時間でフロアごとに千体程度の速度でしか発生してなかったんだけど。現状は常時狩り続けていたら、24時間で一万体以上は発生するからね。ただしフロアごとの上限数は千体で変わらないみたいよ」


『そうなんだな。ジャンジャン狩って、少しでもステータスを底上げしときたいね』

「私達もだよ」


『パーティを組んでおこう。パーティ人数の上限を調べたいから、聖夜さんとエミさんも招待するね』

「えっ? TB。聖夜とエミと麗奈はステータスカード無いでしょ?」


『あれ? まだ言って無かったっけ。俺のスマホアップデートしたらカード所持してなくてもパーティ誘える様になったんだ』

「マジ? それ超凄いじゃん。私のもそのアプデは出来るの?」


『咲のは成功したけど、失敗の可能性は無いとは言えないから、また予備の本体を準備してからにした方がいいと思うよ? 彩は最初のでも五回目だったし、運が悪そうだから』

「そっかー……ん? 今運って言ったよね」


『ああ』

「合成する時にさ、TBがステータスいじってLUCに極振りしたりすると、確率って変わんないのかな?」


『もしかしたらあるかもね。戻って来たら、それも試してみよう。ポーションの合成とかで試せば、かなりはっきりと結果は見えるだろうからね』

「楽しみがいっぱいだね」


「あの、斑鳩二尉たちは随分余裕があるんですね。ダンジョンに対して恐怖感とか無いんですか?」

「エミちゃん。そんなこと考えてたら身体なんて動かないよ? この中では殺される前に殺す。それだけだから。後は楽しい事だけ考えて無いとやっていけないよ」


「解りました彩さん」


『さっさとパーティ組んで下へ行くよ。招待のメッセージが出たら、Yをクリックするようにイメージしてね』

「了解です」


『六人は組めるみたいだね。何人まで有効かな?』

「五層に付いたら攻略班のメンバーに協力させましょうか?」


『あー、それは面倒が付きまといそうだから、とりあえずいいや』

「解ったわ」


 公安の二人組もパーティに入ってたら、少なくともスタンピードが発生する頃にはある程度ステータスも上がってくれるよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る