第31話 カミングアウトする事にした!

「ねぇ社長?」

『なに? 麗奈ちゃん』


「さっき思ったんだけどさ。社長が人の言葉が理解出来て超強いってことを発表しちゃったら駄目なの?」

「麗奈。それって何か考えはあるの?」


「咲もよく考えてみてよ、RUのエージェントは何も表立っては仕掛けてこなかったけど、冷静に考えたら他の国も絶対既に私達の事、怪しんだり取り込もうとしてきたりすると思うんだよね?」

「確かにね」


「でも咲は今までも、ほぼ民間トップの探索者である事隠して無かったし、その時は別段困った状況にならなかったでしょ?」

「サインくれって言う男の子が多いくらいで、それ以外は別に大丈夫だったね確かに」


「だから、社長も超強い黒猫TBは正義の味方で頑張ってるんだ! って発表しちゃったら良いんじゃない? それなら社長が鑑定した内容を私が発表したとしても、不自然じゃないし、私は社長の代理人なだけで詳しい事は解りません! って逃げ道もあるし、咲とパーティーを組んでても全然不自然じゃないでしょ?」

『なるほどなぁ。それは確かに作戦としては良いかもね。咲の剣術スキルとかも麗奈が撮影してVチューバーとしてデビューしたりとかもいいかもね』


「えぇ、私あんまり目立ちたくないな……」

「子猫と咲の組み合わせで、チャンネル作ったら月収一千万円とか簡単に稼げそうだよ?」


「麗奈? それマジなの?」

「うん。そんな気がする」


「そんなに稼げるんなら悪く無いかも」

「咲はめちゃ美人だから、戦って無くても普通に登録者一万人とか行きそうだけどね」


「そんな訳ないじゃん」

「剣道部の先輩たちに教えたら、絶対そっからあっという間に広まるよ」


『俺は取り敢えず『北原進』の名前は出さずに、言葉を理解してスキルを身に着けた猫として表舞台に出てみるよ。その方が普通にリュックに入らなくても出歩けそうだし』

「了解社長。じゃぁ私はスマホカメラより少し高機能なカメラの方がいいと思うから、カメラ買いに行きたいです」


『了解。経費だからちゃんと俺が出すからね。壊れにくい丈夫なカメラ買ってね』

「はーい」


「それも良いけど大阪も早く出発しないと、車だと八時間はかかるからね」

『あ、そうだね。カメラだけ買ったらすぐ出発しよう』


 そう言って出かける準備をしてるとインターフォンが鳴った。

 流石に都内の一等地の事務所物件だし、テレビカメラ付きのインターフォンだ。


 その画面に映っていたのは、また男女のカップルで今度は日本人だった。

 きっちりと二人共ビジネススーツに身を包んでいる。


「誰だろ?」

『普通に答えていい? 公安に百円』


「ありそうだね……」


『どちら様でしょうか?』

『私たちは警察庁の青木と遠藤と申します。ちょっとお尋ねしたい事がございまして伺いました』


『断れない感じのやつですか?』

『麻宮さんと田中さんが普通に暮らしたいなら、今お話しした方がいいと思いますよ?』


 当然のことながら任意と言いつつ断れるわけが無いのが、こういう人たちの来訪だ。

 俺も流石に公安を敵に回すのは面倒なくらいわかるので、招き入れる様に麗奈に伝えた。


『いいか麗奈? あくまでもここの代表者は麗奈だからな。咲と俺は麗奈の元に集まった優秀なスタッフって事にしててくれ』

「了解。じゃぁ入って貰うよ」


青木さんという三十歳くらいの男性警視と、遠藤さんと言う二十代半ばに見える女性警部補だった。


「私たちが来た理由は大体お判りですね?」

「RUのタチアナさん達と話すのは駄目なんですか? 別にスパイとかじゃ無くてダンジョン関係の情報交換程度でしたけど?」


「彼らが諜報部門の人間でない事は確認取れていますが、だからと言って国内の民間トップ探索者が、情報を漏らすのを指をくわえて見ているわけにも行けませんので」

「一応、私がこの中では表面上の代表者ですから、私がお話ししますね」


「本当の代表者は違うのですか?」

「この後で発表する予定ですが、うちの社長はこの子猫ですから」


「本気で言ってるんですか?」

「どう思われようと勝手ですが、それが事実です。会社法上の代表者には猫じゃなれないみたいだから替りに私が代表やってます」


「先ほどRUの二人が出入りした関係で、外にUS、GB、DE、CN、KR、FRの各機関の連中が勝手に集まってましてね。それらはダンジョン協会の人間でなく、うちが出張らないといけない機関の人達なんですよ。ですから、あなた方が反国家的活動をしていません。と、こちらが納得するまで私達が護衛として行動を共にさせていただきます」

「今から、大阪に行くんですけど?」


「国内なら別に構いません」

「それって国外は駄目って事ですか?」


「国益を損なう可能性が非常に高いと認識できますので、禁止はしませんが国外に行く場合でも私達を含め複数の護衛がつくと思って頂きたいですね」

「咲。どうしよう。VIP扱いだよ」


「喜んでる? 何処に行くのも青木さんと遠藤さんがついて来るとか、大変じゃない? 因みにいつまでとかあるんですか?」

「麻宮さんと田中さんが国家に対して不利益を与える事が無いと、確認できるまでです。少なくともこの家の周りにいた、先ほど述べた六か国の諜報関係者が居る間は継続します」


「部屋の中には入らないですよね?」

「基本車で待機させて頂きます」


「麗奈。しょうがないみたいだね」

『ねぇ二人共。俺達今から大阪ダンジョン五層に行くんだけど、守るほど暇じゃないから、自分の身は自分で守ってね?』


 いきなりスマホの画面にうつしだされた文字に「この文字は?」と、尋ねられ「勿論うちの社長の、ありがたい忠告ですよ」


「ま、まさか……本当にこの子猫が意思の疎通が出来るんですか?」

「最初からそう言ってるじゃん。うちの社長だから当然だよ」


『俺達は今日中に大阪に到着したいから、護衛するなら勝手にやってね。戻るのは大阪スタンピードが終わってから。それまでは大阪で過すからね』

「わ、解りました。同行いたします」


 なんだか勝手に人数が増えちゃったけど、まぁ別に公安と敵対する気も無いからいいんだけどね。

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