第30話 RUのエージェント
咲と麗奈がランクルの納車が終わって俺を迎えに来た。
「今日も代々木で狩でいいの?」
『そうだね。アルミラージとポイズンマウスの数を稼ぎたいんだよね』
「了解」
その流れで代々木ダンジョンに向かうと、なんだか自衛隊が大量に集合していた。
『何事だろ?』
「ちょっと彩さんに連絡してみるね」
そう言って咲が彩に連絡を入れた。
「あ、彩さん。今代々木に来てるんだけど入口に自衛隊の人達が大量に居て、とても入れそうに無いんですけど何があったんですか?」
「ゴメン、連絡するの忘れてた。私を含めて既に六層まで降りた経験のあるメンバーは、既に大阪のスタンピードの対策で梅田ダンジョンに来てるんだけどね。スキル所持者を増やそうって言う話になって、全国の自衛官に一度オーク戦を体験して貰って、スキルを獲得できれば攻略班に引き抜く方針になったの。だから一般探索者は、落ち着くまで代々木には入場禁止では無いけど、実質入場できないんだよ。大阪なら大丈夫なんだけどね」
「そうだったんですか?」
「一応D.Aのホームページでは発表されてるから見てくれてるかと思って、連絡してなかったよ」
「解りました。TBと相談してどうするか決めますね」
「うん。ごめんね」
俺達は結局、この状態がしばらく続くと判断したから、お袋へ連絡して大阪が落ち着くまで戻らないと伝え、梅田ダンジョンを目指す事にした。
取り敢えず、俺が昨日の夜合成したアイテム類をD.Aの買取カウンターで販売しに行くと、どう見ても日本人には見えない欧米系の容姿をした男女の二人組に麗奈が声をかけられた。
「突然すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」
流ちょうな日本語で話しかけられた麗奈が相手の容姿が欧米系な事にびっくりして返事をした。
「え? 私英語少ししか分かりません」
「あの? 日本語で呼びかけましたよね?」
「あ。そうですね。ゴメンなさい。何でしょうか」
「少しお時間いただいてよろしいでしょうか?」
俺はリュックの中で、なんか胡散臭いよなぁ? って思いながら行く末を見守った。
咲が「今から大阪へ向かう予定ですので、あまりお時間は割けませんが少しだけなら構いません」と返事をした。
四人でD.Aの施設内に併設されたカフェコーナーへ向かう。
「私達はRUのダンジョン攻略局のエージェントで、ロマノフとタチアナと言います」
「RUのエージェントの方が、私達にどんな御用でしょうか?」
「先日、日本のD.Aで高ランクのポーションが大量に納品されたと言う情報を聞きつけまして、どうやって獲得したのかを伺いたいと思って、ここでお待ちしていました」
「え? 私達RUに拉致とかされちゃったりする感じですか?」
「いえいえ、それならこっそり後をつけて攫います。入手方法にコツとかがあるのか伺いたかっただけです」
「そうなんですね。咲が一杯魔物狩るから、一杯出たとしか言いようがないです」
「うちの国だけでなく、世界中が興味を持っている話題だと思いますので、周辺は気を付けたほうがいいと思いますよ」
「あ、ご丁寧にどうも。もしかして狩りをしてるとことか見張られたりしますか?」
「どうでしょうね? あなた達ならもしそうだったとしても、ご自分で気づかれるんじゃないですか?」
「そうなの咲?」
「見られたら視線は感じるけど、昨日も五層までは少し気になってたけど六層には誰も来なかったから言わなかったの」
「実際、昨日は私達が五層までは見学させていただきました。子猫を連れて、モンスターの写真を撮られてましたよね?」
「あ……見てたんですね?」
「あの猫は何で普通に戦えるのでしょうか? まさかテイムモンスター?」
「えーと……秘密です! これ以上はお答えできません」
まぁそのうち面倒な事にはなると思ったけど早かったな。
俺は、どうせ隠しても無駄だと思ったし、海外の情報とか聞けるなら損は無いと思ったから、麗奈にメッセージを送った。
『場所を変えて、人目の無い所でならもう少し話に付き合うと伝えて』
「咲。TBが場所変えてくれるならOKって伝えてだって」
「その猫は言葉が理解できるのですか?」
「場所を変えてからにしていただけますか?」
「了解よ」
タチアナさんの言葉で席を立つとD.Aの建物から出た。
俺が事務所がいいと伝えたので、ダンジョンシティーの側にある咲たちの住居兼事務所へと移動した。
「私達はRUのD.A機関に所属はしていますが、諜報任務をしているスパイと言うわけでもありませんので日本国から何か言われるような事は無いと考えています」
「そうなんですね」
俺は咲のリュックから出るとテーブルの上に座りスマホを操作する。
『日本語って読めますか?』
そう打ち込んで、画面を見せた。
「ゴメンなさい。話せるけど読み書きは無理です」
そう返事をもらったので、俺が打ち込んだ文書を麗奈に読んでもらう事にする。
『俺は何故か解らないけど、人の意識を持ったまま猫として行動してます。少し特殊なスキルが使えるので、ポーションは俺がランクの低い物を合成して高くしました』
「なんだか凄いわね。モンスターやダンジョンがある世界ではそう不思議な事でもないのかしら?」
「十分不思議です!」
と麗奈が突っ込んだ。
「RUではモスクワはほぼ壊滅してしまい、大勢の人が亡くなったり、大けがで苦しんだりしています。ランク1のポーションであれば、ある程度の数は確保できていますが、ランク2以上となると極端に入手が困難で、手に入れる手段があるなら何としてでも欲しい所なのです。協力して頂けませんか?」
『俺だけで出来る事は限界があります。集めれるだけのポーションレベル1を持ってくれば三個でレベル2。十二個でレベル3はほぼ手に入ります。確率的に考えるとレベル4であれば四十八個程で作れるはずです』
「凄い。レベル4は効果の確認が出来ていませんが、どの程度の事が出来るのでしょうか?」
『治験はやって無いのですが、今日一つ納品しましたからJDAが調べて発表するんじゃないかな?』
「ちなみにJDAの買取価格はいくらだったんでしょうか?」
「あ。それはですね。初めての納品物資なので検査後に査定価格を提示すると伝えられました」
「効果にもよりますが、四十八個で出来るとしたら一千万円以上の値段になりそうですね」
『手間を考えると、それ以下だと、レベル3で売った方が効率がいいですし』
「解ります。もしかしてレベル5以上も手に入れる事は可能なんでしょうか?」
『実際にチャレンジしてないですが、今は確率が低いので殆ど無理だと思います。この先スキルレベルの上昇などで、確率が上がれば取り組みたいと思います』
「解りました。最終的に可能性として赤ポーションで、欠損部位の再生も可能なんでしょうか?」
『解りませんが、レベル6か7になれば可能性はあると思っています』
「RUに来ていただく事は出来ませんか?」
『現時点では日本を離れられないです』
「昨日のサイトに発表されていた、モンスターデータもあなた達ですか?」
『そうですね、俺が鑑定を使えますから』
「それは、JDAの発表した斑鳩二尉と同じ能力ですか?」
『そうです。現状は俺達だけが使える能力だと思っていてください。因みにタチアナさんとロマノフさんはステータスカードはお持ちですか?』
「いえ」
『頑張って手に入れて下さいね。手に入れれば相談にのれる内容も増えるかもしれませんので』
「今後連絡は取れますか?」
『麗奈が俺の代理人だから、麗奈に連絡をしてくれれば伝わるはずです』
そう伝えてRUの二人を送りだした。
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