第28話 麗奈の6層デビュー

 狩りに出る事を禁止され防衛省庁舎内での勤務にされた彩は、上司である上田と直近の問題になりそうな梅田ダンジョンの対応についてミーティングを行っていた。


「問題は、代々木と同じ中ボスが現れる可能性が低いと予想出来る事です」

「その根拠はあるのか?」


「根拠はありませんが、既に一次ダンジョン百八十か所の五層突破により、スキルと言う現象が現れているので、今後はこのスキルを獲得してないと対処できない状況になるのではないかと予想しています」

「ふむ、そうなると現状日本では、斑鳩二尉と麻宮咲さんの女性二名に頼れと言う事になるが……」


「麻宮さんは民間人であり従わせるという考え方は無理があります。正義感は強い方ですので、本人のペースでやらせてあげるのが一番かと、それよりも現在の攻略班だけに限定せず、全自衛官を対象に一チーム十八名程度の討伐隊を組ませて、オーク攻略をしてもらいスキル取得者を増やす作戦はどうでしょうか?」


「ふむ。それは良い案だな。下士官クラス全員に早速通達して、代々木で挑戦して貰う様にしよう」


 その日、全国の自衛官に対して通達が出され、毎日二十班の挑戦が行われ、平均一日二名のスキル所持者が生まれて行く事になる。


 しかし、無傷で勝利できる場合ばかりでもないので、殉職者もそれなりの数を出してしまう事にはなった。


 ◇◆◇◆ 


 俺は咲ちゃんと麗奈を連れD.Aの武器ショップを訪れていた。

 クロスボウと矢を購入するためだ。


 クロスボウに関しては穂南とお袋の件もあったので全部で六張買った。

 麗奈はそこそこ身体能力も上がっていたので、張力の強い物を選び、お袋たち様には扱いやすいタイプのものを選ぶ。


 矢はどれだけあっても困らないので、取り敢えず五百本ほど買っておいた。

 近接用に刃渡り三十五㎝程度のショートソードも六本ほど買っておいた。


 勿論装備は全部俺が合成でダンジョン鋼製品に作り直すけどね。

 素材の置き換えだけだと成功率は80%を超えるので、そんなにロスも無くクロスボウが五張、ショートソード四本。矢は三百九十本ほどの作成に成功した。


『今日は代々木の六層に行ってダンジョン鋼とポーションを大量に確保したいんだよね。咲ちゃんもスキルをLV2に伸ばせるように頑張ってね』

「うん、頑張ろうね」


『それと麗奈が、ダンジョンでの移動法を使う方法があるのかって言う事なんだけど、現状ではパーティに参加できないと難しそうなんだよな』

「やっぱりそうだよね。じゃぁ一緒に一層ずつ潜っていくしか無いのかもね。頑張ってスキルオーブを出すしか無いね。TBの風魔法を取得した時の敵はユニークモンスターって言う事じゃ無かったんだよね?」


『うん、普通のスライムだった。それも階層移動中に二層で倒したスライムだったし、数さえ狩ればチャンスはあるはずだよ』

「解った。頑張ろうね」


 麗奈は背中にクロスボウを背負い、腰にダガーを装着するスタイルだから、俺は咲ちゃんにリュックに入れて貰った。


 麗奈がクロスボウを使うのに慣れてもらうために、二層で少しゴブリンとスライムを狩ったけど、問題無く命中させていたので矢を回収して六層へと向かう事にした。


『麗奈、ちょっと頼んでいいかな』

「なんですか社長」


『俺のスマホで各階層の敵を一種類に付き一枚写真撮って行ってほしい』

「どうするんですか?」


『後で鑑定して、敵LV毎の能力の違いとかを出しておきたいんだ』

「解りました」


 写真を撮りながら五層まで降りて行った。

 神殿部分まで行くと攻略班のメンバーが神殿に待機していたので、咲が自衛官に尋ねた。


「六層へ降りたいのですが通っても構いませんか?」

「民間の方ですよね? 六層へはもう到達されているんですか?」


「はい。先日攻略班の斑鳩二尉に付き添って頂いて六層に降りました」

「あ、と言う事は貴女は麻宮さんですか? スキル所持者の?」


「はい、そうです」

「そうでしたか、羨ましいです。現在攻略班がオークと戦闘中ですので扉が開けば、降りていただくのは構いません」


「では、少し待たせて頂きます」


 五分程待っていると、扉が開き三班十八名程が扉から出てきたが、三名程は結構な怪我を負っていた。


「負傷者在り、至急搬送の必要在り」


 その場に待機していた二班が、けが人に対して応急処置を施し、タンカで搬送して行った。

 途中の警護も必要なために、他の班員達も一緒に退出して行く。

「攻略班で装備が整っていても、こういう事態に陥るんだね」

『うん。再生能力が厄介だから、頭の中の核を射抜けないとうかつに近寄れば、こういう事もあるよ。口の中に手りゅう弾とか放り込むのはかなり難易度高いしね』


「今の社長だったらどうなの?」

『俺だったら、エアブレードで頭を切り落とせるから、関係無いかな? 流石に再生で頭は生えてこないだろうし』


「社長強いんだね」

『まぁそこそこはね。結構ステータスも高いし。でも今なら咲ちゃんでも一人で倒せるんじゃないかな? スキル使用の攻撃だと恐らくオークは問題無いはずだと思う』


「へー、咲も人外になって来たねぇ。元々強さが人外だったけど」

「麗奈もTBと一緒に行動してたら、すぐに化け物とか言われるくらい強くなるよ」


『なんか咲ちゃんの言い方だと、俺が既に化け物みたいで微妙に心に刺さるな』

「あ、TBゴメンね。別に悪意がある訳じゃないからね」


 この日の狩りは夕方まで続け、咲が剣術LV2に挙げてパリィを覚えた。

 タイミングを合わせさえすれば、どんな攻撃でも受け流せる優れものスキルだ。

 AGI依存の盾役って感じで戦えるのかな。

 持続性のある攻撃や、範囲攻撃は無理だけどね……


 俺も身体強化、異次元ボックスがレベル3になり隠密はレベル2になった。


 麗奈も、そこそこクロスボウで敵を倒していたので、結構ステータスは上がった。

 現時点で俺達のステータスはこんな感じだ。

Exp 0.1496/426.1496


STR + 109 - +32

VIT + 60 - +18

AGI + 110 - +33

DEX + 95 - +19

INT + 70 - 

LUK + 42 -


スキル 溶解、身体強化LV3、気配探知LV3、突進、毒爪、再生、風魔法LV2(エアカッター、エンチャントウインド)、異次元ボックスLV3、DEX強化LV2、隠密LV2(隠蔽、気配遮断)

MP 320/444

Rank 1/2576



Exp 0.3794/266.3794


STR + 70 -  +14

VIT + 40 - 

AGI + 74 -

DEX + 82 -  +16

INT + 40 - 

LUK + 20 -


スキル 剣術LV2 (強撃、パリィ)

MP 12/109

Rank 180/2576



麗奈

Exp 0.6526/65.6526


STR + 26 -

VIT + 18 -

AGI + 21 - 

DEX + 20 -

INT + 22 - 

LUK + 18 -


スキル (none) 

MP 22/22

Rank 


 それぞれこんな感じだけど、普通の人がほぼ全ステータス十平均で、若干の誤差がある程度だから、今の俺だとダンジョン内では普通の人の十一倍の攻撃力があるって事だよね。

 十分人外かな? まぁ猫だから最初から人外だけどね!!


 結構一気に世界中でスキル取得者が増えてるな。

 国外は日本みたいに早期にスタンピードを抑えられて無いから、それだけ戦闘に関わる人も多いんだろうね。

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