第23話 ダンジョン移動法見つけたぜ
六層から階段を上り五層の神殿に出る。
「良くある展開だと中ボス倒したら一層にショートカット出来る魔法陣とか出てもよさそうだよね。何処かに無いのかな?」
と、咲ちゃんが言い出した。
俺も確かにあっても不思議じゃないと思って調べてみる気になった。
どうやって調べるのが簡単かな?
ちょっと思いついた事を実験してみるか。
スマホを使いラインで咲ちゃんに話し掛ける。
『俺のスマホでこの神殿の中を一通り動画撮影して貰えないかな?』
「動画撮影? 良いけど何するの?」
『ちょっと実験』
俺は咲ちゃんにスマホを渡した。
咲ちゃんが一周ぐるっと動画を撮って俺に戻してくれた。
『咲ちゃん動画撮ってる時にジャッジボタンとか気付いた?』
「え? そんなの無かったよ? 普通にシャッターボタンしか無かったけど?」
あれ? と思って彩にも確認して貰い、ジャッジボタンと言うか鑑定スイッチは俺にしか見えて無い事を知った。
これは本人しか使えない機能なのか? それとも俺だけ?
咲と彩のスマホで合成して実験したいけど失敗したら怒られそうだし、後で事情を話して予備のスマホを用意してからの方がいいかもしれないな。
俺は動画を再生しながらジャッジボタンを押すと、階段横の壁の部分が赤く光ってる事に気付いた。
装飾の様になってるがよく見ると文字の様にも見える。
でもこの世界に存在する言語では無いのは確かだな。
その装飾の部分の下側、高さで言えば五十㎝程の高さの位置に
俺の子猫の身体では、下から見上げるような位置だが、普通の人には上から見下ろす位置で屈みこまないと、視認は出来そうにない。
この窪み……
丁度カードサイズくらいだな……
『ねぇ彩。この窪みって気にならない?』
そうラインで送ると彩が
咲も同じように見てる。
「これ、ステータスカードとかはめ込んだら何かありそうだね。大きさ的に」
彩がそう言って「ステータスオープン」と言ってカードを出した。
カードを窪みに合わせると「凄い、咲ちゃんの言ってた通りだ。ビンゴだよ」
俺ものぞき込んで見たけど何も見えない。
咲ちゃんにも見えて無いみたいだ。
カードを置いた本人だけしか気づけない様だ。
「どうしたんですか?」
「あれ? 見えて無いの? 一層へ戻りますか? Y/N って表示が出てるんだけど」
「マジですか? 見えて無いけど凄いですね。パーティ全員なのか個人だけ有効なのか気になりますよね」
「うん。Yを選んでみるよ」
「はい」
俺も「ニャン」って言って頷いた。
結果はパーティ全員有効だった。
俺達は、一層の入口に到着した。
そして戻れるなら行く方法もあるはずだと思い、その場所を調べると同じように窪みがあった。
彩がカードを置いて見ると「五層へ移動できるみたいだね、途中の階層へは行けないみたいだよ」と教えてくれた。
ステータスカード所持者限定にはなるけど、一気に便利になったね。
「TB、今日は時間まだ大丈夫なの?」咲ちゃんに聞かれたので『ちょっとお袋に連絡入れてからならOK』って言って、ラインで『今日は遅くなる』って送っておいた。
すぐに『りょうかい♡』って戻って来た。
ハート必要か?
咲ちゃんが、どこかに電話してる間に彩が話かけてくる。
「進。今日の狩りとか踏まえた上で、ちょっとミーティングしたいから、付き合ってね」って言われた。
『いいけど、彩って攻略班で活動しなくていいの?』
「今は上田二佐から咲ちゃんと一緒に行動する事を優先するように言われてるしね。梅田ダンジョンの六層が現れる段階までは、部隊での行動は外れても大丈夫かな」
「今大阪は何層まで出てるの?」
「一般探索者と、攻略班以外の自衛官も積極的に潜っているから、四層まで出てるわね。このペースだと五層が出現すれば二週以内には六層の登場と、スタンピードが予想できるから、五層出現から一週間たてば攻略班は大阪に集合で、他の部隊をダンジョンシティ内に配置して、スタンピードの被害を防ぐつもりよ」
そんな話をしてると、咲ちゃんが電話を終えて、俺に声をかけて来た。
「TBが朝言ってたもう一人のメンバーも、これから来てくれるから、ちょっと会って見てよ。絶対に秘密は守ってくれるよ」
その言葉を聞いて、俺は「ニャン」って言って頷いた。
◇◆◇◆
咲ちゃんが宿泊しているホテルに集まるには少し手狭なので、ご飯を食べるついでに防音機能も整っている、ちょっと高級なカラオケボックスに行くことになった。
俺は咲ちゃんのリュックの中に入って連れて行ってもらった。
そして一時間後「私の親友の田中麗奈。剣道の全国大会に出場するレベルだから弱くは無いわよ」
「咲に言われてもねぇ、この三年間一度も負けた事無いでしょ?」
「そんな事無いよ。この前のインカレ合宿で先輩に負けたよ」
「それ、男子の日本一の工藤先輩の事でしょ? 逆に言えば工藤先輩以外は男子でも一本も取られてないじゃん」
そんな感じで紹介して貰った麗奈ちゃんは、日本人形のような長い黒髪をポニーテールでまとめた正統派の美人顔の女の子だった。
咲ちゃんは、ショートカットでボーイッシュな感じがするから、対照的だ。
何よりも穂南よりも豊かな胸部装甲を装着している。
俺は本能の赴くまま、麗奈ちゃんの前に歩いて行き、「ニャン」って出来るだけ可愛く鳴いてみた。
「かわいいね」って言いながら抱きかかえくれて、その弾力性は、ほぼ同じサイズのお袋の物に比べても張りがあり正に夢心地の感触だった。
何故か、彩ちゃんがそんな俺を見て、ムッとしている。
彩も頑張ればきっともう一回りはどうにかなるはずだから……知らんけど。
「で、TB。あなたがもう一人仲間が欲しいって言ってたのは、何か意味があるの?」
「ちょっと? 咲。何普通に猫に話しかけてるのよ……」
「あれ? 言って無かったっけ。この子普通に言葉解るし私より強いから」
「え……」
話が進まないから俺はラインのグループを四人で作って、チャットトークを開始した。
当然みんなその場にいるから、画面に文字打つのは俺だけなんだけどね……
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