第20話 やばいかも

「お母さんTB帰って来たよー」

「穂南。今ちょっと手が離せないから、カンカン開けてあげて」


「解ったぁ。でもさお母さん。TBもう三か月くらいになるはずなのに全然大きくならないよね? エサは結構がっつり食べてるのに。病気なのかな?」

「そう言えばそうだね? でも、いつまでも小さい方が可愛くていいじゃない。きっとそう言う種類なんじゃないの?」


「ええー、そんなの聞いた事無いよ」


 俺のサイズの事で、お袋と穂南が会話してるが、俺もちょっと気になってたところだ。

 何故か俺の魂が宿って以降、このTBの身体が全く成長してないんだよな。

 不自然で困るぜ。


 騒がれないうちに穂南にもネタバレしちゃった方がいいのかな?


 まぁそれはさておき鑑定スマホの検証だ。

 インカメで自分を映しだすと、シャッターの横に、judgeと表示されたボタン状のスイッチが表示されてた。


 肉球で触ると

Exp 0.0283/279.0283


STR + 80 - +16

VIT + 72 - +14

AGI + 87 - +17

DEX + 45 - +4

INT + 30 -

LUK + 25 -


スキル 溶解、身体強化LV2、気配探知LV2、突進、毒爪、再生、風魔法LV2、異次元ボックスLV2、DEX強化LV1

MP 202/240

Rank 1/343


 どういう事だ?

 ステータスカードに記載されてる数字より随分詳細なデータが記載されてるし、ステータスの数字がもしかして変更できるのか?


 試しに、STRを-に触ってみると、79になって、横の恐らく身体強化の+分は15に変わった。

 そしてExpの部分が1.0283/279.0283と表示された。


 間違いない、このスマホで詳細鑑定が出来て、ステータスもいじれる。

 これは凄いけど……

 広められないな。

 溶解液を先に習得しないと異次元ボックス覚えられないし、少なくとも日本人がトイレを使えない生活って無理あるよな。


 使えたら絶対便利だけど……

 とりあえず秘密にしよう。


 他の機能は普通にスマホとして今まで通り使えるから、めちゃ便利になった。

 これで敵の弱点なんかも看破できるかもな。

 ただなぁ……俺が戦闘中に鑑定出来るかと言えば子猫なだけに難しい。

 バディが必要だな。


 咲ちゃんが一番現実的かな。

 彩ちゃんだと自衛隊で解剖されそうな予感しかしない……


 ちょっとお袋にラインして、一般人のデータを見せてもらおう。


『お袋、穂南が風呂入ったら、ちょっと協力して欲しい事があるからいいかな?』

『りょうかい♪』


 ♪とか入れてきやがった。

 アラフィフのくせに。

 まぁ楽しそうだからいいや。


「で? なにするの」

『これでインカメでお袋の写真撮って、俺に戻して』


「はい、撮ったよ」


 結果は、勿論スキルも持ってなくて、魔物も倒した事のないお袋のステータスは、全部の数字が6~10の間だった。

 一般人ではこんなもんなんだろうな。

 当然Expも0/0だ。


『ありがとう。協力感謝!』

「ねぇ進。あんた少し身体大きくならないのかい? さっきの会話聞こえてただろ?」


『ああ、聞いてたけど、俺もなんで成長できないのか解んないんだよな。適当に誤魔化してて』

「まぁいっか」


 いいんだ……

 お袋の性格が適当で助かったよ。


「あんたもたまにはお風呂入るかい? 母さんが洗ってあげるよ」

『まじか? ちょっと入りたいけどなんか恥ずかしいな』


「子猫なんだから遠慮しなくていいよ」

『意識は二十五のまんまなんだけどな』


「誰も気にしないし」

『そだな。じゃぁシャンプー頼むよ』


 二十年ぶりくらいにお袋と一緒にお風呂に入った。

 アラフィフとは思えない結構艶っぽい、ダイナマイトボディだったぜ。

 人間のまんまじゃ、お袋と一緒にお風呂とかあり得ないから、なんか得した気分はした。


 俺のシャンプーが終わると穂南が脱衣室で待ち構えていてくれて、ドライヤーで乾かしてくれながら、「TBお風呂ちゃんと入れるんだね。今度は私が入れてあげるね!」と言ってたけど、ちょっとそれは激しく嬉しいが駄目な気もする。

 まぁ今ドライヤーかけてる時も、下着姿だからあんまり関係ないのか?


 ◇◆◇◆ 


 私は麗奈と一緒に東京に戻り、麗奈は一度実家へと戻って行った。

 翌日からの攻略に向けて、私は斑鳩二尉と二人で夕食を取りながら五層攻略時の話を聞いていた。


「斑鳩二尉一人で五層の中ボスを攻略されたんですか?」

「うーん、そう言う事になってるんだけど、本当は違うんだよね」


「えっ? それはどういう事なんですか?」

「こんな事言うと信じて貰えないかもしれないけど……猫に助けられたの」


「あ……黒い子猫ですか?」

「えっ? 知ってるの?」


「はい……私の知ってる子と同じだと思います」

「どんな子猫なの? 私は最初に突入した部隊が全滅して、半分絶望した状態の時に黒猫がボス部屋に入った様な気配がしたから、反射的に追いかけちゃったら扉が閉まって、そのままボス戦に突入してしまったんだよ」


「結構、斑鳩二尉っておっちょこちょいなんですね」

「あ、彩でいいよ。咲ちゃんは自衛隊員でもないんだから上下関係は無しで行こうね」


「ありがとうございます彩さん。私も咲って呼び捨てでお願いします」

「そうだね、北原三尉の件で慎重に行動しなさいってみんなには言ってるのに、私がこれじゃポンコツ過ぎるよね」


「でもなんだかあの子猫って、これからのダンジョン攻略のかなめになると思うんです。絶対秘密に出来ますか?」

「えっ? いきなりだね……で、何を?」


「あの子、人の言葉理解してるんです。名前はTBって言います」

「マジ? ってTB……聞き覚えあるよその名前って言うか……その名前つけたの私だよ」


「本当ですか? 私は名前は聞いてたけど、どこの子とか知らないんです」

「その子ね……亡くなった北原三尉が事故の一週間前くらいに、コインパーキングの隅で拾った猫がその名前だよ」


「まさか……意識がその人なのかな? そう言えば猫なのに私の下着とかに、凄い興味示してたし」

「ヤバいね……問い詰めて白状させるべきだね。変態行為を許すわけにはいかないわ」


「子猫だから別に良いんですけどね。実際狩りでは超役に立ってたし」

「明日の朝行って見ない? 北原三尉のお宅に」


「そうですね」

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